対面営業・商談

税理士の営業方法|飛び込みもテレアポもせずに顧問先を増やす

税理士の営業方法|飛び込みもテレアポもせずに顧問先を増やすのイメージイラスト

このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか

税理士の営業方法は4本。飛び込みとテレアポを外しても顧問先は増える

顧問先が増えないのは、営業が下手だからではないかもしれません。来た問い合わせを受けるだけの形になっている、来たら受ける型に近いかもしれません。問い合わせが来るのを待つのが前提になっていて、自分から相手を探す時間を取っていない型です。売り込みが嫌なのではなく、自分から声をかけた時点で「仕事のない税理士」だと思われるのが嫌なんだと思います。

顧問先獲得の4つの経路を近い順に並べた図(既存→紹介→交流→Web)

税理士の顧問先が増える経路は、実は4本しかありません。

  • いまの顧問先の中
  • 他士業・金融機関などの紹介元
  • 人が集まる場(セミナー・勉強会・交流会)
  • Web

飛び込み営業とテレアポは、この4本を動かしたあとに残る最後の手段です。最初からそこに手を付ける必要はありません。むしろ、この4本を動かさないまま飛び込みやテレアポに向かうと、面識のない相手に断られる経験ばかりが積み重なり、営業そのものが嫌になっていきます。他士業や金融機関、商工会など、税理士の周りにはもともと接点のある相手が何人もいます。そこを飛ばして知らない相手に電話をかけるのは、遠回りです。

動かす順番は「自分を知っている人が近い順」です。①→②→③→④。多くの人は、一番遠い④から手を付けて止まります。理由は単純で、Webは人と直接顔を合わせずに動かせるので、心理的なハードルが一番低く見えるからです。

顧問先が減ってきたときに、最初にやったことがホームページの作り直しとブログ開設だった、というケースはよくあります。半年かけて更新を続けても、問い合わせはゼロ。動いていないのではなく、遠いところから動いているだけです。①のいまの顧問先や②の紹介元には一度も連絡していないのに、④のWebにだけ時間を使っている状態です。

紹介が細る理由も、腕の問題ではありません。相手の記憶から消えるだけで止まります。以前は紹介してくれていた相手が、今は紹介してこない。それは仕事ぶりが悪くなったからではなく、単に「最近どうしているか」を知らないだけのことが多いです。次の章から、近い順に手を付けていきます。

紙1枚。いまの顧問先がどこから来たかを書き出す

3列で書く

手書き風の1枚の紙に3列の表を書き出すイメージ図

紙1枚、3列で書きます。「顧問先」「誰から来たか」「その紹介元と最後に連絡を取ったのはいつか」。10件・30分あれば足ります。記憶にあるものだけで十分です。契約書やメールを掘り返して正確を期す必要はありません。おおよそで構いません。

経路の偏りを見る

書き出すと、経路が偏っていることが見えてきます。前職の縁と特定の1人に偏っていないか。その人が引退したり、異動したり、担当替えになったりした時点で、入口がひとつ止まります。この偏りは、腕の問題ではなく構造の問題です。「あの人からの紹介が多い」で終わらせず、その人に何かあったら入口がゼロになる、というところまで考えます。

印を付ける相手

1年以上連絡が途切れている紹介元に印を付けます。ここが今月の営業先です。新しい人を探す前に、切れかけた線を戻すほうが早く動きます。まだつながりのある相手のほうが、初対面の相手より次の接点を作りやすいからです。

書き出してみると、「紹介元は実は何人かしかいなかった」と分かることがあります。それが分かること自体が、今月の成果です。数を増やす前に、まず何本の線で立っているかを知ることが先です。

見込み客リストを新しく作ろうとして、名前が思い浮かばず初日で止まる、というのはよくある止まり方です。作るのはリストではなく、すでにある入口の一覧です。ゼロから探すより、すでにある関係を思い出すほうがずっと早く終わります。

他士業・金融機関の紹介元へ、頼まずに近況を1通送る

頼まない1通の中身

用件は依頼ではなく、近況の共有です。最近どんな相談が増えているかを、種類だけ書きます。守秘義務があるので、顧問先名や業種が特定できる具体的な内容、件数は書きません。「事業承継の相談が増えている」で止め、「◯◯業の△△社さんから」とは書かない、という線引きです。

そのまま使える4行の型

そのまま使える文面です。

ご無沙汰しております。最近、事業承継まわりのご相談を受けることが増えてきました。◯◯さんの担当先でも、そうしたお話があれば頭の片隅に置いていただければと思います。特にお返事は不要です。

①ご無沙汰のあいさつ ②最近受けている相談の種類 ③相手の分野に関係しそうな一言 ④返事は不要ですと書き添える。この4つだけで成立します。相手が司法書士なら相続登記に触れ、銀行の担当者なら資金繰りに触れる、というように③だけ相手に合わせて差し替えます。

会う口実の作り方

年度の切り替わり、決算期、届出の時期を口実にします。「そろそろ〇〇の時期ですね」で始めると、用件がなくても連絡が出せます。

「お仕事があればぜひお願いします」だけの一斉メールは、相手が誰をいつ紹介していいか分からず、読んだ瞬間に忘れられます。何を紹介すればいいのかが具体的でないと、相手は動きようがありません。

頻度の目安は、同じ相手には3か月に1回です。毎月は多いと感じられます。年に4回届けば、思い出される側に残ります。

紹介されやすさは腕ではなく、1行で説明できるかで決まる

紹介営業は、紹介する側が「誰に何を紹介すればいいか」を一瞬で判断できるかどうかで決まります。ここでは、その判断材料をどう渡すかを具体的に見ていきます。

曖昧な自己紹介と具体的な1行紹介を左右で比較する図

1行の型

「◯◯業の△△の相談を受けています」。業種×場面で切ります。「飲食業の資金繰り相談を受けています」「建設業の決算対応をしています」のように、相手が自分の顧客の顔を思い浮かべられる粒度にします。「法人全般」「何でも対応します」は、紹介する側が誰に勧めればいいか分からず、紹介できません。

紹介者が転送できる形を渡す

紹介者は、自分の顧客に自分の言葉で説明します。その説明文をこちらで用意して渡します。3行のプロフィール、対応業種、連絡先、対応エリア。転送1回で済む形にしておくと、紹介する側の負担が減ります。紹介者が自分で文章を考える手間を求めた時点で、紹介は後回しにされます。

3行のプロフィールの例です。「◯◯税理士事務所・代表◯◯。建設業・飲食業の顧問先を中心に、記帳から資金繰りの相談まで対応しています。◯◯市周辺が対応エリアです。初回のご相談は無料で承っています。」このままメッセージアプリやメールに貼り付けて転送できる形にしておきます。

料金の伝え方

金額そのものより、「何が含まれて何が別料金か」を先に伝えます。紹介者が一番勧めにくいのは、いくらかかるか分からない相手です。「まずはご相談ください」だけでは、紹介された側も身構えてしまいます。

「親身に対応します」「丁寧に対応します」は、他の税理士と区別がつかず、思い出す手がかりになりません。誰でも言えることは、誰の記憶にも残りません。

得意分野が無いと感じる場合は、直近1年で実際に多かった相談の種類を並べて、上位2つをそのまま1行にします。得意だから受けているのではなく、受けているものが得意分野になっている、という順番でも構いません。

出る場所は「税理士が集まる場」ではなく「顧客と紹介元がいる場」

選び方

同業の研修会は勉強にはなりますが、仕事にはつながりにくい場です。顧客になりうる経営者、紹介元になりうる他士業がいる場を1つに絞ります。商工会の集まりや異業種の交流会、金融機関が主催する経営者向けの勉強会などが候補になります。あちこち手を広げず、1つに絞るのが要点です。

その場でやること

名刺交換の枚数を目標にしません。目標は「次に会う口実を1つ作る」ことです。相手の困りごとを1つ聞いて帰れば十分です。「今度、その話もう少し聞かせてください」の一言があれば、次の連絡の理由になります。

同じ場に3回続けて出る

1回目は覚えられにくく、2回目で顔、3回目で何の人かが伝わりやすくなります。月1回×3か月を1セットにします。あちこちに1回ずつ出るのが、一番残らない動き方です。1回きりの参加は、参加していないのとほとんど同じ結果になります。

会の後24時間以内に1通送ります。お礼だけで終わらせず、相手が話していた内容に1行触れます。触れられた側は覚えています。「先日お話しされていた◯◯の件、気になっています」の一言で十分です。

交流会の帰りに名刺を輪ゴムで束ねて引き出しに入れる、というのはよくある終わり方です。その日のうちに何人かだけ選んで送るほうが効きます。全員に送ろうとすると結局誰にも送らずに終わります。会場を毎回変えていると、この積み重ねがリセットされてしまいます。同じ場所に同じ顔で通うほうが、結果的に近道になります。

問い合わせが来たときの初動が、いちばん取りこぼしている

最初の30分で聞く順番

最初の30分に聞くべき順番を示す4ステップの矢印フロー図

いまの困りごと → 誰が困っているか(社長か経理担当か) → 決算月と現在の依頼先 → いつまでに決めたいか。自分の事務所の説明は、そのあとです。順番を逆にすると説明会になります。「弊所の特徴は」から話し始めると、相手はまだ何も話せていないまま聞き役にされてしまいます。

見積は総額だけで出さない

記帳、申告、月次の相談回数、スポット相談に分けて出します。総額だけだと、相手は金額でしか比べられなくなります。何にいくらかかるかが分かれば、相手は自分に必要な範囲だけを選べます。記帳を自分でやる代わりに月次相談の回数を増やしたい、というように、相手が中身を組み替えられる見積のほうが、結局は選ばれやすくなります。

決まらなかったときの1行

「次の決算期の前に、もう一度ご連絡してもよいですか」と聞いて終えます。断られた=終わりではなく、時期が合わなかっただけのことが多いです。この一言があるかないかで、半年後にもう一度連絡できるかが変わります。

料金表のPDFを送って返事を待つ、というのはよくある取りこぼし方です。返事が来ないのは金額が高いからではなく、何をどう比べればいいか分からないからです。

初回の返信は当日中に出します。翌日以降になるなら、「◯日までに詳しくご連絡します」の1行だけ先に返します。返信が遅れるほど、相手は他の税理士に問い合わせを広げていきます。

ホームページは新規開拓の道具ではなく、紹介されたあとに確認される場所

紹介された人は名前を検索してから連絡してくる

そこで止まる理由を消すのが仕事です。顔写真、経歴、対応業種、料金の考え方、連絡先と対応エリア、返信の目安。この6つが揃っていれば足ります。顔写真がないだけで、紹介された相手は連絡をためらいます。料金の考え方は、金額の一覧を出す必要はなく、「何が含まれるか」を数行で説明するだけで十分です。

記事を増やす前に既存の3ページを直す

トップ、料金、問い合わせ。この3ページです。更新が数年前で止まっていると、それだけで候補から外れやすくなります。「今も営業しているのか」を疑われた時点で、連絡は来ません。

フォームの項目を減らす

名前、連絡先、相談内容の3つにします。会社概要や売上規模の入力を、最初から求めません。項目が多いほど、途中で入力をやめる人が増えます。

ブログを週2本で始めて3か月で止まる、というのはよくある止まり方です。止まったブログは「今は忙しい」ではなく「今はやっていない」に見えます。無理な更新頻度を決めるより、月1本を続けるほうが結果的に長く残ります。

広告表現には税理士会のルールがあります。実績や比較の書き方は、所属する税理士会の規定を確認してください。個別の判断は専門家に相談してください。

週30分の営業カレンダー(繁忙期でも止めない形)

4週の型

やること
1週目入口の棚卸しを更新
2週目紹介元へ近況1通×5件
3週目人が集まる場に1回出る
4週目返事が途切れている相手に1通

この4週を毎月まわします。特別なスキルは要りません。毎週やることが決まっているだけで、月末に「今月は何もしなかった」という状態を防げます。

繁忙期の落とし方

新しい接点は作りません。既存の紹介元へ1通だけに落とします。ゼロにしないことが要点です。ゼロにすると、繁忙期が明けたとき、手元に何も残っていません。1通だけでも続けていれば、繁忙期が終わった直後にまた4週の型へ戻せます。繁忙期の時期があらかじめ分かっている場合は、その期間だけ先にカレンダーへ「1通だけ」と書き込んでおくと、忙しさに流されずに済みます。

記録は1行でいい

日付、相手、送った内容。この3つだけです。ノートでもスプレッドシートでも構いません。翌年、そのまま使い回せます。誰にいつ何を送ったかが分かれば、翌年の同じ時期にまた同じ相手へ送れます。

週30分は曜日と時間を固定します。例えば、火曜の始業前30分。空いたらやる、では必ず消えます。予定に入れてしまえば、繁忙期以外は自然と回り続けます。

よくある質問

税理士は飛び込み営業やテレアポをするべきですか?

最後の手段です。先に、いまの顧問先の中・紹介元・人が集まる場の3本を動かします。面識のない相手への電話は記憶に残りにくく、動いた実感のわりに入口が増えません。

開業したばかりで顧問先がゼロです。何から始めればいいですか?

すでに自分を知っている人(前職の縁、同業、他士業)に、依頼を頼まず近況を届けるところからです。名刺交換の枚数より、同じ場に3回出て「何の人か」を覚えてもらうほうが早く動きます。

他士業に紹介を頼むと借りができそうで、言い出せません。

頼まなくて大丈夫です。いまどんな相談を受けているかを種類だけ伝えれば、相手は自分の顧客が困ったときに思い出せます。紹介は借りではなく、相手が顧客に困らないための材料になります。

ホームページやブログは作ったほうがいいですか?

新規獲得の道具としてより、紹介された人が名前で検索して確認する場所として整えます。顔写真・対応業種・料金の考え方・連絡先の4つが先です。記事の量産はそのあとで十分です。

繁忙期は営業の時間が取れません。どうすればいいですか?

週30分を曜日ごと固定し、繁忙期は新しい接点を作らず既存の紹介元へ1通だけに落とします。ゼロにすると、繁忙期が明けたときに手元に何も残りません。

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