シリーズガイド|対面営業・商談
対面営業のコツ完全ガイド — 会って、信頼で売る技術の全体像
対面営業が苦手なのは、性格のせいなのか
性格ではありません。営業は7つの工程でできていて、詰まっているのはそのうち1か所です。どこで止まっているかに名前を付ければ、直す場所は1つに絞れます。
「話がうまくないから向いていない」という判決を先に外す
話すのが苦手だから営業に向いていない、と思っているなら、しゃべりすぎ型に近いかもしれません。沈黙が怖くて自分の説明で場を埋め、相手の話を取ってしまう型です。

でも、向いていないのではありません。何をどの順で聞けばいいかを、習っていないだけです。腕はあるのに、仕事の取り方だけ教わらずに独立した人ほど、ここで止まります。
やたの体験
新人時代、住宅営業で必死に飛び込みを重ねても、契約はなかなか決まりませんでした。足りないのは話す量だと思い、トークを増やして沈黙を埋めようとした時期があります。変わったのは、話し方を練習してからではありません。会う前と会った後にやることの順番を決めてからです。順番を決めてから契約が決まるようになり、新人賞と全社MVPをいただきました。
この記事の使い方
全部を読む必要はありません。下の一覧表から、自分がいま止まっている場面を1つ選んでください。その節だけ読んで、詳しい記事へ進む道案内として、このガイドを使ってください。
| 詰まる場面 | 型名 | 今日そのまま言える一言 |
|---|---|---|
| 初対面で実績や自己紹介を並べてしまう | 実績並べ型 | 「今日は提案の前に、いまの困りごとだけ先に聞かせてください」 |
| 沈黙が怖くて説明で埋めてしまう | しゃべりすぎ型 | 「先に4つだけ確認させてください。今の状況、時期、決め方、予算感です」 |
| 見積を出すタイミングを逃す | あとで送る型 | 「総額は◯◯です。内訳は3つで、削れるのはここです」 |
| 「検討します」で止まってしまう | 相手の番型 | 「では◯日の午前に、決まっていなくても一度ご連絡します」 |
| 値引きをそのまま飲んでしまう | 安くしとく型 | 「金額は動かせませんが、中身は動かせます」 |
| 断られた相手をそのままにする | 一回きり型 | 「また状況が変わった頃に、一度だけご連絡します」 |
| 納品したあと、それきりになる | 紹介待ち型 | 「半年後に◯◯が出てくると思います。その頃に一度、様子を伺ってもいいですか」 |
初対面の最初の3分で何を話すか
商品の話はしません。最初の3分は「なぜ今日この時間をもらえたか」を相手の言葉で確認するだけです。自己紹介は30秒で切り上げます。
なぜ会うことが信頼になるのか
訪問営業が好ましいと答えた営業組織が理由として挙げた「訪問することで商談の相手から信頼を得られると思うから」は61%で最多でした。訪問を望む買い手が理由として挙げた「営業担当者の顔を見ると安心感がある」も44.1%あります。実績を並べなくても、会いに来たという事実そのものが、すでに信頼の材料になっています。
やたの体験
会社案内を開いた瞬間、相手の姿勢が変わることがあります。実績を並べるほど「売られる時間」になり、相手が自分の話を重ねる場面がなくなっていきました。これは実績並べ型の典型的な失敗です。分かってもらおうとして情報を足すほど、相手は自分ごととして聞けなくなります。
そのとき言う一言
「今日は提案の前に、いまの困りごとだけ先に聞かせてください。合わなければその場でお断りいただいて大丈夫です」
NG例は「弊社は創業◯年で、実績は…」と自分から話し始めることです。
詳しくはこの記事
初対面の場づくりとアイスブレイクの進め方は、雑談力の鍛え方|商談前のアイスブレイクネタ集でセリフ付きで解説しています。
商談で何を、どの順番で聞くか
順番は「今どうなっているか→いつまでに→誰が決めるか→いくらまで」です。この4つを聞き終わるまで、こちらの提案は出しません。
聞く順番には型がある
営業ヒアリングには、Budget(予算)、Authority(決裁権の所在)、Needs(顧客ニーズ)、Timeframe(導入時期)という、確認すべき4項目を示すBANTという型があります。BANTが定めているのは項目であって、聞く順番までは決めていません。状況・時期・決め方・予算感の順で聞くのは、聞きやすかった順を私自身が並べたものです。

やたの体験
沈黙が怖くて自分の説明で埋めていた頃は、帰り道に「相手が何に困っていたか」を言えませんでした。聞く順番をメモに書いて持ち込むだけで変わりました。しゃべりすぎ型から抜けるのに、話し方の練習はいりませんでした。
そのとき言う一言
「先に4つだけ確認させてください。今の状況、時期、決め方、予算感です」
このままメモに書いて持っていける4行です。
詳しくはこの記事
聞く順番とヒアリングの進め方は、対面商談での聞き方の基本|話しすぎない営業のコツで詳しく説明しています。
金額はいつ、どう伝えるか
その場で、口で言います。総額だけでなく「何にいくらか」を3つに分けて伝えます。持ち帰って後から送るほど、相手の熱は冷めます。
やたの体験
納得いく資料ができるまで出せず、送った頃には他社で決まっていた案件があります。あとで送る型のまま、総額だけを出して内訳を説明しなかったことも重なっていました。
そのとき言う一言
「総額は◯◯です。内訳は3つで、削れるのはここ、削らない方がいいのはここです」
金額を言うのは、自分の値打ちを言うことではなく、仕事の条件を言うことです。
詳しくはこの記事
値段をその場で言い切るための準備と、関係を壊さない伝え方は、お金の話の伝え方|値段・値上げ・値引きを、関係を壊さずに伝えるに書いています。
「検討します」と言われたらどうするか
その場で次の日付を置きます。私の経験では、「検討します」は断りではなく、決められないという合図であることが多いです。持ち帰らせたまま終えると、こちらから連絡しづらくなります。
やたの体験
出したあとに何をすればいいか習っていなかったので、「あとは相手の番」で止めていました。返事が来ないのがつらいのではなく、金額を見て黙られたことがつらいのだと、あとで気づきました。相手の番型に近い状態だったと思います。
そのとき言う一言
「では◯日の午前に、決まっていなくても一度ご連絡します。それまでに気になる点が出たら、そこだけ潰します」
詳しくはこの記事
「検討します」への返信でそのまま使える文面は、「検討します」への返信例文|次の一手を決めてから返すにまとめています。
値引きを求められたら何と返すか
値段を下げるのではなく、中身を減らします。「いくらまで下がるか」ではなく「どこを外すか」に話を移すのが、対面でできる強みです。
やたの体験
住宅は金額が大きい分、値引きの要求も大きく見えます。ですが私が扱っていた住宅では、手元に残る利益はもともとわずかで、下げる余地はほとんどありませんでした。それでも安くしとく型のまま黙って飲んでいた時期があり、利益の出ない受注が重なりました。
そのとき言う一言
「金額は動かせませんが、中身は動かせます。今回外していいものを一緒に決めさせてください」
「勉強します」と答えないのは、下げられる余地があるように聞こえてしまうからです。
詳しくはこの記事
値引きを求められたときの返し方は、値引きの断り方|「安くして」と言われたときの返し方と例文で場面別に説明しています。
断られた相手に、もう一度連絡していいのか
していいです。ただし用件を持たずに出します。断られた翌日ではなく、相手の状況が変わる頃に「近況だけ」を送るのが再開の入口です。
やたの体験
飛び込みで契約が決まるのはごく一部で、大半は断られた相手として残ります。振り返ると、一回きり型のまま、断られたらその相手は終わりだと思っていました。切っていたのは相手ではなく、こちら側でした。

そのとき言う一言
「先日はありがとうございました。◯◯の件、いま急ぎではないと思うので、また状況が変わった頃に一度だけご連絡します」
詳しくはこの記事
失注後のフォローのタイミングと文面は、失注メールの例文|取引先に送る、次の機会を残す一通に書いています。
一度受注した相手から、次の仕事をもらうには
納品で終わらせず、終わった直後に「次に困りそうなこと」を1つ置いておきます。紹介はいい仕事をしただけでは出ません。思い出してもらう働きかけが要ります。
やたの体験
経営者の会で多くの人と名刺交換をしても、それだけの相手からは何も起きませんでした。動いたのは、一度仕事をした相手に何度も顔を出したときです。紹介待ち型のまま、いい仕事さえすればいつか声がかかると思っていた時期は、何も起きませんでした。
そのとき言う一言
「今回はここまでですが、半年後に◯◯が出てくると思います。その頃に一度、様子を伺ってもいいですか」
詳しくはこの記事
納品後のフォローと紹介につなげる書き方は、納品後のお礼メール例文|次の仕事と紹介につながる一通にまとめています。
対面という選び方はいまも多数派
「訪問営業の方がリモート営業より好ましい」と答えた営業組織は53.3%です。2020年以来はじめて、前回の58.3%から減った数字ですが、それでも半数を超えています。7つの型を直しても、会う機会そのものがなければ始まりません。まず会う。そのうえで、詰まっている工程を1つずつ外していく。それがこのガイドの前提です。
会う前後の細かい所作――名刺交換の順番、交流会での立ち回り、会食のマナーは、対面営業の作法・人脈術 完全ガイドに体系的にまとめています。

自分がどこで止まっているか、もう一度一覧で確認してください。
| 詰まる場面 | 型名 | 今日そのまま言える一言 |
|---|---|---|
| 初対面で実績や自己紹介を並べてしまう | 実績並べ型 | 「今日は提案の前に、いまの困りごとだけ先に聞かせてください」 |
| 沈黙が怖くて説明で埋めてしまう | しゃべりすぎ型 | 「先に4つだけ確認させてください。今の状況、時期、決め方、予算感です」 |
| 見積を出すタイミングを逃す | あとで送る型 | 「総額は◯◯です。内訳は3つで、削れるのはここです」 |
| 「検討します」で止まってしまう | 相手の番型 | 「では◯日の午前に、決まっていなくても一度ご連絡します」 |
| 値引きをそのまま飲んでしまう | 安くしとく型 | 「金額は動かせませんが、中身は動かせます」 |
| 断られた相手をそのままにする | 一回きり型 | 「また状況が変わった頃に、一度だけご連絡します」 |
| 納品したあと、それきりになる | 紹介待ち型 | 「半年後に◯◯が出てくると思います。その頃に一度、様子を伺ってもいいですか」 |
あわせて引きたい用語
辞典をすべて見る →- 懇親会 参加した人々が互いに知り合い、親しみを深めるための会。飲食を伴うことが多く、既に知っている人同士がカジュアルに交流する場を指すことが多い。
- 倫理法人会 一般社団法人倫理研究所が展開する経営者向け組織で、「純粋倫理」に根ざした倫理経営を学び実践する場。全国の会場で毎週早朝にモーニングセミナーを開催し、非会員でも無料で参加できる。
- セールスパートナー セールスパートナーとは、サービス提供元から提供を受けたサービスを、自社の名義・ブランドでエンドユーザーに再提供する企業のこと。営業活動そのものではなく、販売する側の企業という対象を指す言葉。
- アライアンス営業 アライアンス営業とは、複数の企業が技術・製品・ブランド・顧客基盤などの経営資源を持ち寄り、新たな価値を共同で生み出し市場を開拓する営業手法。パートナーセールス・代理店営業と同義に使われることもあるが、業界内で定義の揺れがある。
- パートナー監査 パートナー監査とは、自社と取引関係にある提携先(パートナー企業)に対して行う監査のこと。業界統一の公的定義はなく、実務では第二者監査とほぼ同じ意味で使われることが多い。購買先・委託先の監査や、自社が顧客から受ける監査の両方を含む。
- パートナープログラム 企業が自社の商品やサービスを、内製の営業チームではなく代理店・アフィリエイト・リセラーなど社外のパートナーと協力して広げるための仕組み。契約形態やインセンティブ、支援体制などを整備し、収益の最大化を目指す取り組みを指す。
参照した情報源
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- 生命保険に関する全国実態調査(公益財団法人 生命保険文化センター)・確認日 2026-09-04
- 営業ヒアリングのコツとは?流れや実践テクニック、フレームワークを解説(株式会社セールスフォース・ジャパン)・確認日 2026-09-04