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このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか

相槌の種類は5つ。打ち合わせで「はい」だけになるのは、口下手のせいではない

打ち合わせで使う相槌は、役割で分けると同意・共感・驚き・促し・まとめの5つです(この分け方は、私が実務の言い方を整理したものです)。

相槌の5種類(同意・共感・驚き・促し・まとめ)を並べた図

種類言い方の例打ち合わせでの役割
①同意「はい」「そうですね」聞いていることを伝える。いちばん軽い合図
②共感「それは困りますね」「大変でしたね」気持ちを受け取ったと伝える。相手が安心して続きを話せる
③驚き「そうなんですか」「そこまでとは」初めて聞く話に関心があると伝える
④促し「というと?」「それで、どうなったんですか」続きを話してもらう。困りごとの中身に近づくための相槌
⑤まとめ「つまり〜ということですね」理解がずれていないか確かめる。話の区切りで使う

表を見ると、①〜③は相手の話を「受ける」相槌、④は「続きを出してもらう」相槌、⑤は「確かめる」相槌だと分かります。「はい」だけで終わる打ち合わせは、①だけで一回の会話を回そうとしている状態です。④と⑤が入ると、会話の向きが変わります。

場面を一つ置きます。店のチラシを頼みたい、という相談を受けたとします。店主が十分ほど、お店のことや最近の客足のことを話してくれました。話し終えて、こちらの番になります。ここで口から出たのは「はい」だけで、そのあとに間が空く。頭の中では「何か気の利いたことを言わなきゃ」と回っているのに、言葉が出てきません。

こういう経験をした人は、自分は口下手だから気の利いた返しができない、と考えていることが多いようです。黙られると、何か話さなきゃと焦ってしまう人も同じです。これは私の見立てで、調べて確かめた話ではありません。

ただ、打ち合わせで「はい」だけになることと、話のうまさは関係ないと私は見ています。相槌のあとに何を返すか、その順番を教わっていない。それだけのことです。

ここで、相槌の位置づけを変えておきます。相槌は、自分がうまく話すためのものではありません。相手に「続きを話してもらう」ための合図です。

そう考えると、口数が少ない人のほうが向いている面があります。自分が話さなくていい分、相手の言葉に耳を使えるからです。話のうまさも、明るい性格も要りません。性格はそのままで大丈夫です。

「はい」「なるほど」だけが続くと、相手の側で何が起きているか

依頼する側の目線で見てみます。

「はい」だけの相槌から、お任せで終わるまでの因果の流れ図

「はい」だけが続くと、相手には、話が伝わっているのかどうかが分かりません。分からないと、同じ説明を言葉を変えてもう一度したくなります。私の見方では、言い直しが増えるほど、話は表面をなぞる方向に進みやすく、本当に言いたかった困りごとまで届きにくくなります。

具体的な会話で見てみます。店のチラシを頼みたい店主と、「はい」「なるほど」で返す人の場面です。

店主「最近、若いお客さんが来なくて」

自分「はい」

店主「それで、チラシを新しくしたくて」

自分「なるほど」

店主「……デザインはお任せで」

話は進んでいるように見えますが、困りごとの中身が一度も出ていません。若いお客さんがいつから減ったのか。前のチラシでは何が起きたのか。誰に来てほしいのか。何も聞けないまま「お任せ」で終わっています。

お任せと言われた仕事は、判断の材料がないまま作ることになります。出来上がってから「思っていたのと違う」が出る余地が、最初から残ってしまいます。

「なるほど」の連発も同じです。これは私の見解ですが、毎回同じ「なるほど」だけが続くと、依頼する側には流し聞きに見えやすい場面があります。言葉そのものが悪いわけではありません。毎回同じで、そのあとに次の一言がないことが原因だと整理しています。同じ「なるほど」でも、あとに「というと、どのあたりが?」と続けば、ちゃんと聞いてくれていると受け取られやすい。

相槌のつもりで話を取ってしまう3つのNG

相槌を意識し始めると、今度は別の失敗が出てきます。聞いているつもりで、いつのまにか話を取ってしまう動きです。よくある3つを挙げます。

相槌のつもりで話を取ってしまう3つのNGパターンのイラスト

NG1:「わかります、私も前に〜」と自分の経験に入る

共感のつもりで出した一言が、話の主役を自分に移してしまいます。

店主「最近、若いお客さんが来なくて」

自分「わかります、私も前に似たことがあって。そのときはSNSを始めて……」

店主「ああ、そうなんですね……」

店主は、自分の話の続きを話すタイミングを失いました。言い換えるなら、こうです。

自分「それは大変でしたね。そのとき、どうされたんですか」

自分の経験を話すのが悪いわけではありません。話すなら、相手の話を聞き切って、まとめの一言で確かめたあとです。

NG2:相手が少し黙った瞬間に、提案や説明を始める

店主が「うーん、なんて言えばいいのかな」と黙ったとします。ここですぐ「それなら、まずチラシのサイズを決めましょうか」と入ると、店主が探していた言葉は出てこないまま流れてしまいます。

沈黙は、相手が考えている時間であることが多いです。お茶を一口飲むくらいの間は、待ってみてください。待っているあいだは、相手の顔を見て、うなずいているだけで足ります。

NG3:相槌のすぐあとに「でも」「ただ」を続けて、自分の意見に切り替える

店主「若い人向けに、写真を大きく使いたくて」

自分「そうですね、ただ、写真を大きくすると文字が読みにくくなります」

「そうですね」と受けたのに、すぐ「ただ」でひっくり返すと、受け取ったという合図が取り消されます。意見があるのは自然なことです。出すなら、あとの「まとめる」の段階で、相手の話をいったん確かめてからにします。

この3つに共通するのは、沈黙が怖くて、相手が言葉を探しているあいだに自分の説明で埋めてしまう動きです。私はこれを「しゃべりすぎ型」と呼んでいます。

この動きが出るのは、口下手だからではありません。何を聞けばいいかを習っていないだけだと、私は見ています。話がうまい必要はなく、聞く順番が分かればいいのです。人柄の問題ではなく、いま出ている動きの話です。順番は次の節で渡します。

話を引き出す返し方は「受ける→促す→まとめる」の順番

順番は3つです。相槌のあとに、自分の説明を足さないのがコツです。

受ける・促す・まとめるの3ステップを示した手順図

手順1:受ける

同意か共感で、相手の言葉をいったん受け取ります。このとき、相手の言葉の大事な一語をそのまま少し繰り返すと、聞いていることが伝わります。

店主「最近、若いお客さんが来なくて」

自分「若いお客さんが、ですか」

全部を繰り返すと不自然になります。繰り返すのは、一語か二語で十分です。

手順2:促す

続きを、相手に話してもらいます。ここで自分の説明はまだ入れません。使う言葉は、次のようなものです。

  • 「というと?」
  • 「具体的には、どんなときですか」
  • 「それはいつ頃からですか」

手順3:まとめる

聞いた内容を短く言い直して、ずれていないか相手に確かめます。「つまり、新しいチラシで若い人に来てほしい、ということですね」のような形です。ここで初めて、自分の話に移ってかまいません。

3つを通した会話を載せます。先ほどのNG例と同じ店主の場面です。

店主「最近、若いお客さんが来なくて」

自分「若いお客さんが、ですか」(受ける)

店主「そうなんです。前は学生さんが多かったんですけど」

自分「というと、いつ頃から減ったんですか」(促す)

店主「去年の春くらいかな。近くの店が閉まってから」

自分「具体的には、どんなときに『来ないな』と感じますか」(促す)

店主「放課後の時間帯が、ほとんど空いてて」

自分「つまり、放課後に来ていた学生さんに戻ってきてほしくて、そのためのチラシ、ということですね」(まとめる)

店主「そう、それです」

最初の「はい」「なるほど」の会話では、店主の口から「デザインはお任せで」しか出てきませんでした。今回は、いつから、どの時間帯に、誰に来てほしいのかが、店主自身の言葉で出てきています。自分が話したのは、ほとんど質問だけです。

この順番は、ヒアリング全体の流れの一部です。話を聞いたあとに何を出すか、どう次につなげるかまで含めた営業の流れ全体はこちらにまとめています。

場面別:そのまま使える相槌と次の一言

順番が分かっても、場面が変わると言葉に詰まります。よく出会う場面ごとに、そのまま使える言い方をまとめます。

場面相槌次の一言避けたい返し
困りごとを聞いたとき「それは困りますね」「一番困っているのは、どの部分ですか」「大変ですよね。うちならこうします」
お金や予算の話が出たとき「そうなんですね」「その金額の中で、一番大事にしたいところはどこですか」「え、それだと厳しいですね」
前に頼んでうまくいかなかった話が出たとき「そうでしたか」「そのとき、どこが合わなかったんですか」「その業者さん、ひどいですね」
相手が言いよどんだとき(うなずいて待つ)「ゆっくりで大丈夫です」言葉を代わりに言ってしまう
専門用語や業界の言い方が出たとき「なるほど、そう呼ぶんですね」「それは、どういう意味ですか」分かったふりをして流す

表の行について、補足を書きます。

お金の話が出たとき。 金額を聞いて驚いた顔や声を出すと、相手は金額の話を引っ込めやすくなります。「厳しいですね」と言った時点で、会話は値下げの話に寄りやすくなります。まず受けて、その金額で何を一番守りたいのかを聞くほうが、話が前に進むと私は見ています。

前の業者の話が出たとき。 悪く言うと、相手が選んだ判断まで否定する形になります。前の業者の話は、批評せずに、どこが合わなかったかだけを聞きます。そこに、今回の仕事で外してはいけない条件が入っていることが多いです。

言いよどんだとき。 代わりに言葉を足すと、少し違っていても相手は「まあ、そんな感じです」と流してしまうことがあります。違うまま進んだ話は、あとでずれになります。待つ時間は、相手が本当の言葉を探している時間であることが多いです。

専門用語が出たとき。 聞くことを遠慮して流すと、あとで打ち合わせ全体の前提がずれます。「どういう意味ですか」は、聞く側だからこそ使える一言です。

次の打ち合わせから使える、相槌のチェックリスト

最後に、打ち合わせの前・最中・あとで使えるチェックリストです。手元のメモに写して使ってください。

打ち合わせの前

  • 「促す一言」を3つ、メモに書いた(例:「というと?」「具体的には?」「それはいつ頃からですか」)
  • 相手のことで、事前に調べられる範囲は見ておいた(お店の場合は、ホームページや今のチラシなど)

その場で考えなくていい状態を作っておくのが目的です。言葉を探す余裕ができ、相手の話に耳を使えます。

打ち合わせの最中

  • 相手が話し終えるまで、自分の説明を入れなかった
  • 沈黙のとき、ひと呼吸待った
  • 自分の話が長くなったと気づいたら、「すみません、話を戻すと」と言って相手に返した

戻り方を一つ決めておくと、長くなったときに慌てません。「すみません、話を戻すと」は、そのまま使える一言です。

打ち合わせのあと

  • 相手の困りごとを、一言で言える
  • 自分が話した時間と相手が話した時間、どちらが長かったか思い出せる(体感でかまいません)
  • 「つまり〜ということですね」で、相手に確かめた

三つ目が抜けていたら、次は終わりの五分前に、まとめの一言を入れる時間を残しておきます。

今日やれる、最小の一歩

全部を一度にやる必要はありません。次の打ち合わせでは、相手が話し終えたら、一度だけ「というと?」を使ってみてください。相手の話の続きが出てきやすくなります。出てきた続きに「そうなんですね」と受けられたら、もう「はい」だけの打ち合わせではなくなっています。

相槌は、うまく話すための技術ではなく、相手に続きを話してもらうための合図です。口数が少ないことは、むしろ強みとして使えます。

※契約や法律に関わる話が打ち合わせに出た場合は、この記事の範囲を超えます。個別の判断は専門家に相談してください。

よくある質問

相槌のバリエーションを増やすにはどうすればいいですか?

言い方の数を増やすより、相槌のあとに続ける「促す一言」を3つ決めておくほうが早いと私は見ています。「というと?」「具体的には?」「それはいつ頃からですか」をメモに書いて、打ち合わせの前に見直しておくと、その場で言葉を探さずに済みます。

相槌が多すぎると、うるさく聞こえますか?

回数より、毎回同じ言葉を相手の話の途中で重ねることが、気になられやすいと私は見ています。相手が話し終えたところで受けて、次の一言で返すほうが伝わります。

口下手でも、打ち合わせで話を引き出せますか?

引き出せると私は考えています。話を引き出すのに必要なのは、話のうまさではなく、聞く順番です。受ける→促す→まとめるの順なら、自分が話す量はむしろ少なくて済みます。

相手が黙ってしまったら、こちらから話したほうがいいですか?

すぐ埋めなくて大丈夫です。相手は考えていることが多いので、ひと呼吸待ちます。待てないときは「ゆっくりで大丈夫です」と言って、相手に返してください。

オウム返しは不自然になりませんか?

全部を繰り返すと不自然になります。相手の言葉の大事な一語だけを繰り返し(「若いお客さんが、ですか」)、すぐ「というと?」でつなぐと自然に聞こえます。

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