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このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか

「どうしますか」は、順番を踏めば押し売りに見えにくくなる

結論から言うと、押し売りに見えるかどうかは、言い回しの上手さより聞く順番で変わると私は見ています。順番は、まとめる→気になる点→決め方→選び方→次の日付の5つです。次の節で、それぞれのセリフを紹介します。

引かれそうで聞けず、話が止まる流れの図

その前に、なぜ最後のひと言が出なくなるのかを整理します。

提案も金額も伝え終わりました。相手は資料を見たまま、黙っています。「どうしますか」が喉まで出かかっているのに、口から出たのは「では、ご検討ください」でした。そのまま席を立ち、帰り道で「また聞けなかった」と思う。

腕にも商品にも自信がある。話もきちんと聞いた。それでも最後のひと言だけが出ない。営業を習わないまま仕事を始めた人には、こういう場面が少なくないと私は見ています。

「どうしますか」が言えない瞬間に起きていること

聞いた瞬間に、それまで感じのいい人だった自分が、売り込む人に変わってしまう気がする。そう感じて口を閉じる人は多い、というのが私の見立てです。ここまで丁寧に話を聞いて、空気もよかった。その空気を最後のひと言で壊したくない。だから自分からは聞かず、相手が言い出してくれるのを待ちます。

名前を付けるなら「引かれそうで決める場面を作れない止まり方」です。自分だけの癖ではなく、よくある止まり方のひとつとして見ると、少し楽になります。

押しが弱いせいでも、性格のせいでもない

「自分は押しが弱いから」と性格のせいにしている人もいます。私は、足りなかったのは度胸より、聞く順番を習う機会だったと見ています。

性格はそのままで構いません。口数が少なくても、押しが弱くても、順番さえ分かれば最後のひと言は言えます。

聞かずに帰ると、相手はひとりで決めることになる

相手の側から見てみます。提案を聞き終えて、資料を見ています。「悪くないと思う。でも、この先どう進めればいいのだろう」と考えているかもしれません。誰に相談するか。いつまでに決めるか。何と何を比べるか。どれも整理されないまま「ご検討ください」と言われると、相手は資料を持ち帰り、ひとりで考えることになります。決める材料がそろわないので、話はそこで止まりやすいと思います。

聞くことは、押すことと同じではありません。相手が決めやすいように、決める場面を一緒に作ることです。

押し売りに見えない「どうしますか」までの5つの順番

5つの順番と、そのまま言える一文です。

まとめる・不安・決め方・選ぶ・日付の5ステップ

  1. 今日の話をまとめる:「今日伺ったのは、〇〇を△月までに整えたい、という話で合っていますか」
  2. 気になる点を先に聞く:「ここまでで、気になっているところはありますか」
  3. 決め方を聞く:「決めるときに、ほかに相談される方はいますか」「いつごろまでに決めたいですか」
  4. 選ぶ形で聞く:「進めるとしたら、Aの形とBの形のどちらが近いですか」
  5. 次の日付を決める:「では〇日に、もう一度10分だけお話しできますか」

「どうしますか」という言葉そのものは、この中に出てきません。4番の「どちらが近いですか」が、その役目を果たしています。

①今日の話をまとめる ②気になる点を先に聞く

最初の2つは、結論を迫る前の下ごしらえです。

まず「今日伺ったのは、〇〇を△月までに整えたい、という話で合っていますか」と、相手の言葉でまとめ直します。ここで「そうです」と返ってくると、相手は自分の話を受け取ってもらえたと感じるはずです。ずれていたら、その場で直せます。

次に「ここまでで、気になっているところはありますか」と聞きます。不安や疑問を先に出してもらうことが目的です。不安が残ったまま最後の質問をすると、問い詰められている感じになりかねません。先に出してもらっておけば、最後の質問は確認のひと言で済みます。

③決め方を聞く

3つ目は、決める・決めないではなく、決め方を聞く質問です。

「決めるときに、ほかに相談される方はいますか」「いつごろまでに決めたいですか」。どちらも、答えを迫る質問ではありません。だから相手も答えやすいと思います。

ひとり社長や家族経営の相手なら、「奥さまやご家族に話されることはありますか」「今期の予算の中で考えていますか」といった聞き方も合います。会社の手続きを前提にした言い方より、相手の暮らしと仕事の実際に近い言葉のほうが、すっと答えてもらえます。

この答えは、あとで効いてきます。「来月の頭に始めたい」と聞けていれば、期限を自分の都合で言わずに済みます。「家族に相談する」と聞けていれば、次の連絡の理由ができます。

④選ぶ形で聞く ⑤次の日付を決める

4つ目では、「やりますか、やめますか」の二択にしないことがポイントです。二択にすると、相手の答えは「やる」か「やらない」しかなく、「やらない」が選びやすくなります。

「進めるとしたら、Aの形とBの形のどちらが近いですか」と聞けば、進めることを前提に、どの形が合うかの話になります。相手が「Aかな」と答えたら、それがほぼ答えです。「まだ決めきれない」と返ってきても、どこで迷っているかが分かります。

5つ目は、その場で決まったかどうかにかかわらず、次の日付を決めることです。「では〇日に、もう一度10分だけお話しできますか」。短い時間を添えると、相手が受け入れやすくなると私は考えています。

NG例:金額の直後に、いきなり「どうしますか」

手順を飛ばした例です。

  • NG:金額を伝えた直後に「で、どうしますか?」
  • 起きやすいこと:相手は値段のことしか考えられない状態です。そこで答えを迫られると、「高いな」という気持ちだけが返事になりがちです。

まとめる、気になる点を聞く、決め方を聞く。この3つを挟んでから聞けば、同じ質問でも受け取られ方が変わります。

場面別:そのまま使える言い方と言い換え表

場面つい言ってしまう言い方言い換え
打ち合わせの最後の5分「いかがでしょうか……」「最後に、進め方の相談だけさせてください」
金額を伝えたあと、相手が黙ったとき「高いですよね、もう少し下げられます」「金額を見て、気になったところはどこですか」
資料を見たまま黙っているとき「えっと、補足しますと……」と説明を足す「どこか引っかかるところはありますか」
「少し考えます」と言われたとき「わかりました、ご連絡お待ちしています」「ありがとうございます。考えるときに、どこが決め手になりそうですか」
「少し考えます」の答えをもらったあと「ありがとうございました、失礼します」「では〇日にこちらからご連絡してもいいですか」
話がまとまりかけたとき「じゃあ、そういう方向で……」「Aの形とBの形、どちらが近いですか」
決まらないまま終わりそうなとき「またご連絡します」「〇日の午前に、10分だけお電話してもいいですか」

打ち合わせの最後の5分

「いかがでしょうか」は、何を聞かれているのか分かりません。感想を言えばいいのか、返事をすればいいのか。相手が迷うので、「ありがとうございます、また考えます」と返されやすい言葉だと私は見ています。

「最後に、進め方の相談だけさせてください」と言えば、これから何が始まるのかが伝わります。相談という言葉は、押される感じがしません。

金額を伝えたあと、相手が黙ったとき

沈黙が怖くて、つい「高いですよね」と自分から言ってしまう人がいます。そして、聞かれる前に値引きを出します。

ここは自分の説明で沈黙を埋めないことが大事です。「金額を見て、気になったところはどこですか」と聞いて、あとは待ちます。相手が考えている時間は、決める前に必要な時間です。

「少し考えます」と言われたとき

「わかりました、ご連絡お待ちしています」は丁寧ですが、そこで話が終わります。

「ありがとうございます。考えるときに、どこが決め手になりそうですか」と一度だけ聞きます。返ってきた答えが、次の連絡で話すことになります。そのあと「では〇日にこちらからご連絡してもいいですか」と日付を決めます。

表の言い換えは、どれも相手に決めさせる質問ではありません。決める材料を一緒にそろえる質問になっています。

押し売りに見えてしまうのは、こんな聞き方をしたとき

怖いのは、聞くこと自体ではありません。押し売りに見えるのは、次の3つをしたときだと私は整理しています。逆に言えば、この3つを避ければ、聞いても押し売りにはなりにくいはずです。

押し売りに見える3つの聞き方

自分の都合で急がせる

NG例は「今月中に決めてもらえると助かるんですが」です。助かるのは相手ではなく自分です。そう聞こえた時点で、相手は身構えます。

期限を出すなら、相手の予定から逆算して伝えます。「〇月から始めたいとのことでしたので、その場合は△日までにご判断いただくと間に合います」。期限が相手の都合から出ているので、急かされた感じになりません。③で決め方を聞いておくと、この言い方ができます。

同じ質問を何度も繰り返す

一度「考えます」と言われたのに、言い方を変えて3回聞く。これも押し売りに見える聞き方です。

聞くのは1回です。答えをそのまま受け取り、次の日付だけを決めます。「考えます」と言われたあとに説得を足すと、相手は考える余地を奪われたと感じます。

値下げで決めてもらおうとする

聞かれる前に「もう少しお安くできます」と出すと、話が値段だけになります。値段の扱いはここでは詳しく書きませんが、先に下げないことだけは守ってください。

相手が迷っている理由が値段とは限りません。まず「気になるところはありますか」と聞いて、本当の理由を出してもらうほうが先です。

その場で決まらなかったら、「次に話す日」だけは決めて帰る

その場で決まらないのは、失敗ではありません。決まらなくても、次の一歩を決めて帰れば話は止まりません。

次の日付を決める場合と決めない場合の比較

「検討します」は断りとは限らない

「検討します」には、いろいろな中身があります。断りの場合もあれば、相談する人がまだ決まっていないだけの場合もあります。決める材料が足りないだけのこともあります。

③で聞いた「決め方」の答えが、ここで生きてきます。「ご家族に相談する」と聞いていれば、「ご家族に説明しやすいように、要点を一枚にまとめて送りましょうか」と返せます。

次に話す日を、その場で決める

「〇日の午前に、10分だけお電話してもいいですか」と、日付を決めて帰ります。

日付のない「またご連絡します」で帰ると、連絡する理由が自分の中で薄れていきます。日が空くほど出しづらくなり、いつの間にか連絡できなくなる。私はこの流れを、聞く順番を習っていない人が陥りやすいところだと見ています。

翌日に送る一通の文面

コピーして使える短い文例です。

〇〇様 昨日はお時間をいただき、ありがとうございました。 昨日決まったのは、〇〇をAの形で進める方向で考える、というところまでです。 金額面でご心配とのことでしたので、内訳をまとめた資料を添付します。 〇日の午前に10分ほど、お電話でお話しできればと思います。ご都合はいかがでしょうか。

構成は、お礼1行、今日決まったこと、相手が気にしていた点への答え、次に話す日の確認、の4つです。長くする必要はありません。

最後に聞きやすくなる、打ち合わせ前の準備

クロージングは、最後の5分で決まるのではありません。始まる前の準備で、聞きやすさが変わります。

打ち合わせの最初に「終わり方」を伝えておく

最初に「今日は最後に、進めるかどうかの相談を5分ほどさせてください」と言っておきます。最初に伝えてあれば、最後に聞いても唐突になりません。

相手も、最後に何かを聞かれると分かっているので、話を聞きながら考えておけます。聞く側の気まずさも、聞かれる側の戸惑いも小さくなります。

提案を2〜3の形にしておく

案がひとつだけだと、相手の答えは「やる」か「やらない」しかありません。範囲や期間が違う形を2〜3用意しておくと、④の「どちらが近いですか」が聞けます。

大きく作り込む必要はありません。たとえば「まず一部だけ始める形」と「全体を通して進める形」のように、規模の違う形を並べるだけで十分です。

「今日決めたいこと」を1行メモしておく

打ち合わせの前に、手帳かスマホに1行だけ書いておきます。

例:「今日は進めるかどうかまで。無理なら次の日付まで」

ゴールを決めておくと、最後に聞くかどうか迷う時間が減ります。決まらなくても次の日付までは決める、と決めておけば、帰り道の後悔も小さくなります。

次の打ち合わせで試すのは「決め方を聞く」1問だけ

5つ全部を、いきなりやる必要はありません。次の打ち合わせでは、③の「決めるとき、ほかに相談される方はいますか」「いつごろまでに決めたいですか」だけを聞いてみてください。

なぜ「決め方」の1問から始めるのか

答えを迫らない質問なので、引かれる心配が少なくて済みます。それでいて、相手がどう決めるのか、いつ動けるのかが分かり、その後の進め方がはっきり見えます。

聞いてみて、相手が普通に答えてくれた。その経験が、次の「どちらが近いですか」を聞く力になります。

終わったあとに振り返る3項目

打ち合わせのあと、手帳かスマホに3行で残してください。

  1. 聞けたか
  2. 相手は何と答えたか
  3. 次に話す日は決まったか

聞けなかった日があっても構いません。何が邪魔をしたのかを書いておけば、次の打ち合わせの準備になります。

言えなかった自分を責めなくていい

最後のひと言が言えないのは、相手を大事にしているからだと私は思います。その気持ちはそのままで、順番だけ足せば大丈夫です。

営業全体の流れの中で、クロージングがどこにあたるのかを知りたい人は、仕事の取り方を最初から整理した記事もあわせて読んでみてください。

よくある質問

クロージングで「どうしますか」と聞くタイミングはいつですか?

金額を伝えた直後ではなく、今日の話をまとめて気になる点を聞いたあとです。打ち合わせの最初に「最後に進め方の相談をさせてください」と伝えておくと、最後に聞いても唐突になりません。

「検討します」と言われたら、どう返せばいいですか?

断りとは限りません。「どこが決め手になりそうですか」と一度だけ聞き、答えを受け取ったら、次に話す日をその場で決めます。何度も聞き直さないことが大切です。

押し売りだと思われない聞き方はありますか?

「やりますか」の二択ではなく、決め方(相談する人・決めたい時期)や「AとBのどちらが近いですか」と選ぶ形で聞きます。自分の都合で急がせる、同じ質問を繰り返す、先に値下げする、の3つを避けてください。

口下手でもクロージングはできますか?

話のうまさより順番です。5つの手順ごとに決まった一文を用意しておけば、その場で言葉を考えなくて済みます。まずは「決め方を聞く」1問だけから始めてください。

その場で決めてもらわないといけませんか?

その場で決まらなくても構いません。大事なのは、次に話す日を決めて帰ることです。日付のない「またご連絡します」で終えると、話が止まりやすくなります。

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