この記事は『会う前の準備』の棚です 棚の記事一覧 →
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
営業の持ち物は3つに分けて、「見せるもの」より「聞くためのもの」を先に入れる
先に結論:カバンの中身は3つに分けて考える

私は、ひとりで営業に行くときの持ち物を、次の3つに分けて考えています。あくまで一例です。
- ないと困るもの:名刺、筆記具、スマホの充電
- 相手のために持つもの:相手メモ1枚、実例3つ、料金の目安を書いた紙
- 自分を落ち着かせるもの:予備の名刺、ハンカチ、時間の余裕
「見せるもの」は2番の中の「実例3つ」だけです。残りは、相手の話を聞くためのもの、自分が慌てないためのものです。次の章で、中身を一覧にします。
カバンを詰めながら、自分に言っていること
営業に出る前の晩、カバンに入れるものが増えていく。会社案内、過去の作品を刷ったファイル、タブレット、念のための見積書のひな形。ひとつ入れるたびに、カバンは重くなります。
会社に勤める営業なら、資料を会社が用意してくれることが多いはずです。ひとりでやっている人は、全部自分でそろえるしかありません。そのせいか、「ひとりでやっている自分は、資料をそろえて見せないと信用してもらえない」と考えて、前の晩に荷物を足していく人が少なくないように、私は見ています。
荷物が重くなるのは、真面目さの表れだと私は見ています。手に職があるからこそ、「ちゃんとしたものを見せたい」という気持ちが出てくるのだと思います。ただ、カバンに入れるものの順番を少し変えるだけで、営業は進めやすくなると私は考えています。
相手があとで覚えているのは、資料の厚さより「聞いてもらえたか」
私は、会ったあとに相手の記憶に残るのは、資料の厚さより「自分の話をちゃんと聞いてもらえたか」のほうだと見ています。これは統計の裏付けがあるわけではなく、私の見方です。
分厚い資料を渡されても、相手は持ち帰ってから読むかどうか分かりません。一方で、「いま困っているのはこの点ですよね」と自分の状況に合わせた話をされると、相手はその場で「分かってもらえた」と感じやすい、と私は考えています。
そう考えると、話のうまさや性格の明るさより、カバンに何をどの順番で入れるかのほうが、自分で変えやすい部分だと思います。
営業の持ち物チェックリスト(ひとりで動く人向け)
ないと困るもの

- 名刺と名刺入れ:初めて会う相手には、まず名刺を渡す場面があります。名刺入れは、受け取った名刺を置く場所としても使います。
- ペンとノート:聞いたことは紙に書きます。スマホでメモを取ると、画面を見ている時間が長くなり、相手からは別のことをしているように見えることがあります。事前に「メモを取らせてください」と言えば問題ない場面も多いです。ただ、初対面では紙のほうが無難、と私は見ています。
- スマホと、充電器かモバイルバッテリー:地図、連絡、時間の確認に使います。電池が切れると、遅刻の連絡も出せません。
- 相手の住所と電話番号の控え:スマホの電池が切れたときのために、紙でも持ちます。ノートの最初のページに書いておけば足ります。
相手のために持つもの
- 相手メモ1枚:相手について分かったことと、今日聞きたいこと、今日のゴールを書いた紙です。A4の紙1枚か、ノートの1ページで足ります。持ち物の中でいちばん効くのは、これだと私は見ています。見せるためではなく、聞く順番と今日のゴールを見失わないために持ちます。
- 相手に近い実例3つ:全部ではなく、相手の業種・大きさ・悩みに近いものを3つに絞ります。多く見せるほど、相手が自分を重ねる余地が減る、と私は考えています。
- 料金の目安を書いた紙1枚:その場で「だいたいいくらですか」と聞かれたとき、言葉に詰まらないために持ちます。金額を書いた紙があれば、口に出すより先に紙を見せられます。確定の見積を出す必要はなく、「内容によって幅があります」という但し書きを入れた目安で足ります。値段は、自分の価値に付ける点数ではなく、仕事を進めるための条件です。そう考えると、紙に書いて出すことへの抵抗は下がります。
自分を落ち着かせるもの
- 予備の名刺10枚ほど:名刺入れとは別のポケットに入れます。名刺入れの分を切らしても、慌てずに済みます。
- ハンカチ:夏の汗や雨のあとに使います。資料の受け渡しの前に手を拭けると、気持ちも落ち着きます。
- 15分早く着く時間の余裕:時間も持ち物の1つだと私は考えています。早く着いて、近くで相手メモをもう一度読む。それだけで、始まる前の緊張が違うと感じています。
持ち帰れる一覧表
| 持ち物 | 何のために持つか | 忘れたときの代わり |
|---|---|---|
| 名刺 | 最初のあいさつで渡す | その日のうちに、連絡先をメールで送る |
| 名刺入れ | 受け取った名刺を置く場所にもなる | 手帳のあいだなど、折れにくい場所に挟む |
| 予備の名刺10枚ほど | 名刺入れの分を切らしたとき | 別のポケットに入れておく(これ自体が代わり) |
| ペンとノート | 聞いたことをその場で書く | 手帳の余白と予備のペン1本 |
| スマホ | 連絡、地図、時間の確認 | 紙に書いた相手の連絡先の控え |
| 充電器かモバイルバッテリー | 電池切れを防ぐ | 前の晩に満充電にして出る |
| 相手の住所・電話番号の控え(紙) | スマホが使えないとき | 紹介者の連絡先も一緒に控える |
| 相手メモ1枚 | 聞く順番と今日のゴールを見失わない | ノートの1ページに、その場で書き直す |
| 実例3つ(紙かタブレット) | 相手が自分に重ねて見られる材料 | 「あとで送ります」と伝える |
| 料金の目安の紙1枚 | 値段を聞かれたとき、言葉に詰まらない | 「整理して今日中にお送りします」と伝える |
| ハンカチ | 汗や雨のあと、手を拭く | ティッシュ |
私の場合の一例です。業種や相手によって足し引きしてください。たとえば、施術や現場の仕事なら、工具や道具の確認が加わると思います。
仕事の中身と会う場所で、足し引きするもの
上の一覧は、どの業種でも使える最低限のつもりで書いています。実際には、仕事の中身や会う場所によって、足すものが変わります。
- 形のある仕事(制作・施工・施術など):サンプルや現物があれば、実例の紙の代わりに1点だけ持っていく手もあります。ただ、重いものを増やす前に、写真3枚で足りないかを先に考えます。
- 形のない仕事(相談・研修・指導など):見せるものが少ないぶん、相手メモと、進め方を書いた紙1枚の価値が上がると私は見ています。
- 相手の会社に行く場合:待ち時間にメモを読み返せるよう、ノートをすぐ取り出せる位置に入れておきます。
- カフェなどで会う場合:机が狭いので、広げる紙は減らします。相手メモはノートに挟んだまま、膝の上で見られる形にしておくと動きやすいです。
足すかどうか迷ったときの目安は、「それは相手の話を聞くために使うか、自分が慌てないために使うか」です。どちらでもないなら、その日は家に置いていきます。
荷物を足したくなったら:「実績並べ」になっていないか
たくさん持っていくと起きること

タブレットに入れた過去の作品を、何十枚もスクロールして見せる。最初は相手も「すごいですね」と見てくれます。でも途中から、相づちだけになっていく。そういう場面は、ひとりで仕事を取っている人なら、一度は経験があるかもしれません。
私はこれを「実績並べ」と呼んでいます。分かってもらおうと実績や情報を足し続けて、相手が自分を重ねる場面がなくなった状態です。作品を見せている間、相手の話は聞けていません。
実力が足りないのではなく、絞り方の問題だと私は見ています。
見せる前の、ひと言
実例を出す前に、こう言います。
「◯◯さんのお店に近いものを3つだけ持ってきました。ほかにもありますので、気になればあとでお送りします」
このひと言があると、相手は「自分のために選んでくれたんだ」と受け取りやすいと思います。見せたあとは、「このなかで、イメージに近いのはどれですか」と聞きます。説明を続けるのではなく、相手に話してもらうためです。
初回には重すぎるもの
- 分厚い会社案内:渡されても、相手は持ち帰りに困ります。読んでもらえるかも分かりません。
- 作品をすべて印刷したファイル:開いたら一緒にめくることになり、話が説明ばかりになります。
- 初回で出す契約書:まだ相手の困りごとを聞いている段階で契約書が出てくると、相手が構えるかもしれません。
必要になったら、「あとで送ります」で足ります。なお、契約書の中身や取り決めの細かい点は、必要に応じて弁護士や行政書士などの専門家に相談してください。
忘れ物をしたときの、ひと言
忘れ物は、ひと言で挽回できることが多いと私は見ています。
名刺を切らしたとき
「申し訳ありません、名刺を切らしてしまいました。今日中に連絡先をメールでお送りします」
資料を忘れたとき
「今日はお持ちするのを忘れてしまいました。のちほどデータでお送りしますので、どれがよいかだけ教えてください」
相手の名前の読み方に自信がないとき
「お名前の読み方を、念のため教えていただけますか」
ごまかさずに正直に言って、その日のうちに送る。忘れたことより、そのあとの動きのほうが、相手に残る印象は大きいと私は思っています。
前の晩は、荷物を足す代わりに、スマホの充電と名刺の残りの確認だけをします。目安として、私は相手メモを書く時間を合わせて30分ほどで済ませています。
当日の朝は、玄関を出る前にカバンの中を、最初の3つの分け方の順に見ます。ないと困るもの、相手のために持つもの、自分を落ち着かせるもの。声に出さなくても、この順に目で追うだけで、確認の抜けが減ると私は感じています。
帰り道に、カバンから相手メモを出す
帰り道で、もう一度相手メモを出します。聞けたこと、聞けなかったことを書き足します。これが、その日のうちに送るお礼の連絡の材料になります。

「今日お聞きした、現場の段取りが月末に重なって困るというお悩みについて、考えたことを来週までにまとめてお送りします」。そういう一通は、メモがあれば短い時間で書けることが多いです。
会いに行く日は、部屋を出たときに終わりではなく、帰り道の書き足しまでで終わる、と私は考えています。持ち物のいちばんの役目は、この書き足しの材料を、相手の言葉のまま持ち帰ることだと思います。
お礼の連絡を含めた、ひとりでやる営業の全体の流れは、ひとりでやる営業の進め方にまとめています。持ち物は、その流れの中の「会う日」の準備にあたります。
よくある質問
営業の持ち物で、名刺以外に要るものは?
筆記具とノート、スマホの充電、相手の連絡先の控えは、私はないと困るものだと見ています。そのうえで、相手について分かったことと聞きたいことを書いた紙が1枚あると、話が進みやすいです。
営業に、ポートフォリオ(実例)はどれくらい持っていけばいい?
一例として、相手の業種・大きさ・悩みに近いものを3つに絞るやり方をおすすめします。全部見せると、相手が自分を重ねにくくなると私は見ています。足りなければ、あとで送ると伝えれば大丈夫です。
営業先にノートパソコンやタブレットは持っていくべき?
実例を見せるのに使うなら便利ですが、なくても進みます。私は、机の広さや場所(カフェなど)を考えて決めればいいと見ています。メモは紙のほうが、話を聞いている姿勢が相手に伝わりやすいと思います。
営業先で名刺を忘れたときはどうすればいい?
正直に切らしていると伝え、その日のうちに連絡先をメールで送ります。予備の名刺を名刺入れとは別の場所に入れておくと防げます。
初めて会う営業先に手土産は必要?
決まりがあるわけではなく、相手との関係や紹介の経緯で変わります。私は初回で必須とは見ていません。迷ったら、紹介してくれた人に相手の雰囲気を聞いてから決めるのも一つのやり方です。
本記事は、当編集部の制作基準——出典との照合・表現・重複の多段検証——を通過したものだけを公開しています(下書きにはAIを活用)。 仕組みの詳細は編集プロセスの開示をご覧ください。
