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このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
ポートフォリオの作り方は「誰に見せるか」を決めるところから始める
名刺交換をした翌日、お礼のメールを書きながら手が止まる。「ポートフォリオも送りたいけれど、いまの内容では見せられない」。そんな場面でポートフォリオの作り方を調べ直す人もいるのではないかと思います。
この記事は、作品の並べ方やデザインの飾り方の前に、誰に見せるかを決める順番で書いています。デザイナーに限らず、ライター、カメラマン、エンジニア、士業など、作ったものを見せて仕事をもらう人を想定しています。
作品が足りないから頼まれない、と思って手が止まる
「作品がまだ少ないし、見栄えもよくない。だから、ポートフォリオを見せても頼まれないんだと思う」。ポートフォリオの作り方を検索する人には、こう考えている人が多いのではないか、というのが私の仮説です。読者の声を集めて確かめた数字ではありません。
そう考えると、次の行動は「作品を増やす」か「見栄えを整える」になります。どちらも終わりがありません。作り直しているうちに、送る相手は決まらないまま日が過ぎます。
私は、頼まれるかどうかを作品の数や見栄えだけで決まるものとは見ていません。作品が多くても、見る人が自分の件と重ねられなければ、返事が来ないことはあります。数が少なくても、相手の件にいちばん近い1件があれば、話が進むことはあります。これは私の実務上の見解です。
ポートフォリオが出せないのは、腕が足りないからではなく、誰に見せるものかを決めないまま作り始めているからです。作品の数と見栄えは、頼まれる資格の点数ではありません。
見る側は、自分の件を頼んだらどうなるかを探している
初対面の発注者は、作品集を眺めて楽しみたいわけではないと私は見ています。探しているのは、たとえば次の2つです。
- 自分の会社の件に似た仕事を、やったことがあるか
- 頼んだら、何を聞かれて、どう形になっていくのか
飲食店の店主がチラシを頼む相手を探しているなら、ポートフォリオの中から「飲食店のチラシ」を探します。見つからなければ、腕がよさそうでも「うちの件を分かってもらえるだろうか」と迷います。ここは出典のある話ではなく、私の解釈です。
作る順番は、相手を決めて、作品を選び、最後に説明を書く
この記事の手順は、次の3行です。
- 見せる相手を1人に決める
- その人に近い作品を選ぶ
- 作品ごとに、頼まれたときの状況を書く
逆の順番になっていることがあります。作品を並べ終えてから「さて、誰に送ろう」と考える順番です。
たとえば、こういう冊子です。今まで作ったものを年代順に全部並べ、表紙には「PORTFOLIO」とだけ書いてある。作った本人には振り返りやすい並びですが、見る人には関係がありません。自分の件に近い作品を、見る人が自分で探すことになります。探す手間を相手に渡してしまっている状態です。
最後の章に、送る前に確かめるチェックリストを置いています。先に全体を見たい人は、そこから読んでも構いません。
見せる相手を1人に決める|「中小企業向け」では、見る人が自分のことだと思いにくい
業種と規模と、いま困っていることまで書き出す
「中小企業向け」「個人店向け」で止めると、見る人は自分のことだと思えません。1人の姿まで書き出します。
| 書く項目 | 書き方の例(架空) |
|---|---|
| 業種 | 工務店 |
| 規模 | 従業員10人ほど |
| いま困っていること | 採用ページが古く、応募が来ない |
| 相手 | 採用ページを作り直したい社長 |
ここまで書くと、載せる作品の候補が絞れます。「工務店の採用ページ」に近い仕事があるか。なければ、近い業種のものはどれか。選ぶ基準が自然に決まります。
最近会った人、次に会う予定の人から決める
頭の中の理想のお客さんは、自分に都合のいい人になりがちです。決めるときは、実在の人から始めます。
- 最近名刺をもらった人
- 次に会う予定のある人
- 「知り合いを紹介しましょうか」と言ってくれた人の、その知り合い
この中から1人を思い浮かべてください。会う予定がある人なら、その人の会社のホームページを開いて、困っていそうなところの当たりをつけられます。ポートフォリオを、会う予定とつなげて作るということです。
相手が変われば版を分ける
飲食店の店主に見せるものと、士業の事務所に見せるものを、同じ1冊で使い回さないほうがいいと私は考えています。全部入りの1冊を作るより、表紙と最初に載せる作品を入れ替えた版を2つ持つほうが、早く作れると私は見ています。
版を分けても、作品を新しく作る必要はありません。手元の作品の並べ方と、最初のページの1行を変えるだけです。
「どんな業種でも対応できます」は、得意な相手を消してしまう
NG例を1つ挙げます。最初のページに「どんな業種でも対応できます」と書くことです。広く受けたい気持ちは分かります。ただ、見る人からは「うちの業種が得意かどうか」が読み取れません。
書き直すなら、こうです。
- NG:どんな業種でも対応できます
- OK:工務店や設計事務所の、採用ページとパンフレットを中心に作っています
書いた業種以外の依頼を断る必要はありません。問い合わせが来たときに、受けるかどうかを決めればいいだけです。
作品は数ではなく、相手が自分を重ねられるかで選ぶ
全部載せたくなる理由
腕を分かってもらおうとして、作品を足す。受賞歴を足す。使えるソフトを並べる。足すほど、見る人は自分の件に近いものを探す手間が増えます。
分かってもらおうと実績や情報を足し続けて、読む人が自分を重ねる場面がなくなってしまう。これが、全部載せで起きやすいことだと私は見ています。
実力を証明しようとして、相手の話をしていない
実績を並べているとき、起きているのは「実力の証明」だと私は思います。相手の話はそこに入っていません。
実績を足し続けて、読む人が自分を重ねる場面がなくなる。この記事では、これを「実績並べ型」と呼びます。腕があるから見せたいものが多いだけで、足りないものがあるわけではありません。
ただ、詰め込むほど、見る人は自分を重ねられなくなります。だから、減らしてよいのです。載せなかった作品が消えるわけではなく、相手が変われば、また載せられます。
選ぶ基準は3つ
作品は、次の3つで見ます。
- 業種が近いか
- 規模が近いか
- 困っていたことが近いか
3つそれぞれに、〇(近い)、△(少し近い)、×(違う)を付けます。〇が2つ以上ある作品は、優先して載せます。〇が1つの作品は、近い作品が足りないときの候補にします。〇がない作品は、その相手の版では外します。
見せる相手が「従業員10人ほどの工務店の社長」なら、手元の作品は次のように仕分けられます。
| 作品(架空の例) | 業種 | 規模 | 困りごと | 判断と理由 |
|---|---|---|---|---|
| 工務店の採用ページ | 〇 | 〇 | 〇 | 優先して先頭に載せる(〇が3つ) |
| 設計事務所のパンフレット | △ | 〇 | △ | 候補(近い作品が足りないとき)。〇は規模の1つだけ |
| 飲食店のメニュー表 | × | △ | × | 外す。〇がなく、業種も困りごとも違う |
| 個人の写真家のサイト | × | × | × | 外す。〇がなく、3つとも違う |
外した作品は、別の相手の版で使えます。
作品が少ないときの埋め方
見せたい相手に近い作品がないときは、2つの方法があります。
- 見せたい相手の業種を想定した自主制作を作る。たとえば、工務店向けなら、架空の工務店の採用ページを1つ作る。自主制作であることは、はっきり書いておく
- 知人のお店や会社の仕事を、相手の了解を取ったうえで載せる
前職の仕事を載せたいときは、守秘義務や権利の扱いが契約によって違います。前の勤め先や依頼主に、掲載してよいか確認しておくと安心です。載せ方を含め、個別の判断は専門家に相談してください。
1作品の見せ方|完成した画像の前に、頼まれたときの状況を書く
1作品1ページに入れる4つ
完成した画像だけでは、見る人は「自分の件を頼んだらどうなるか」が分かりません。1作品につき、次の4つを書き込みます。
| 項目 | 書くこと | 書き込み欄 |
|---|---|---|
| ①困っていたこと | 頼まれる前、相手は何に困っていたか | 「〇〇が△△で困っていた」 |
| ②頼まれた内容 | 何を、いつまでに頼まれたか | 「〇〇を作ってほしいと言われた」 |
| ③やったこと・工夫 | 自分は何をして、どこを工夫したか | 「〇〇を△△に変えた」 |
| ④納めたあと | どう使われているか | 「いまは〇〇で使われている」 |
1項目につき1〜2行で足ります。長く書くより、4つとも空欄を埋めることのほうが大事です。
NG例と書き直し例
以下は、どちらも架空の例です。
NG例:完成したチラシの画像に、「使用ツール:Illustrator/制作期間:2週間」とだけ添えてある。
書き直し例:同じチラシの画像に、次の3行を足す。
- 困っていたこと:チラシの問い合わせ先が分かりにくいと言われていた
- やったこと:電話番号を一番上に移し、地図を小さくした
- 納めたあと:いまは店頭で配られている
使用ツールと制作期間は、見る人にとって優先度が低い情報だと私は考えています。書くなら最後に小さく添える程度で足ります。
結果を数字で言えないときの書き方
売上や問い合わせ数の数字を持っていない人もいるはずです。数字がなければ、なくて構いません。数字を作ったり、推測で書いたりしないことだけは守ってください。代わりに、次のようなものを書きます。
- 相手が実際に言った言葉(「説明が楽になった」など。本人に確認が取れたものだけ)
- 今も使われている場所(店頭、名刺、ホームページなど)
- 納めたあとに、追加で頼まれた内容
デザインの作り方|枠は作品より目立たせない
この節の前半はデザイナー向けです。それ以外の方は「どこで見られるかを先に決める」から読んでください。
背景・文字・飾りは作品の邪魔をしない
デザイナーは、表紙や枠に凝りたくなることがあります。腕を見せたい気持ちは自然ですが、枠が目立つと作品が埋もれます。迷わないように、守りやすい基準にしておきます。
- 背景は白か、薄い色にする
- 書体は1〜2種類にする
- 飾り線や背景の模様は入れない
- 作品の画像は、できるだけ大きく置く
これは私の基準です。凝りたくなったら、凝る場所は作品のほうだと考えておくと迷いません。
どこで見られるかを先に決める
場面によって、ページの大きさと枚数を変えます。
| 場面 | 向いている形 | 作り方のポイント |
|---|---|---|
| 名刺交換のあと、メールで送る | 添付で重くなりすぎないようにする | |
| スマホで開いてもらう | URL | 1ページに作品は1つにする |
| 打ち合わせで見せる | 紙かタブレット | 相手の話に合わせて、1件だけ開ける形にする |
スマホで開かれる前提なら、1ページに複数の作品を並べないでください。画面が小さく、どれも読めなくなります。最初は1つの形で、1人に向けた1冊を作れば足ります。
自己紹介と連絡先は最初のページに1行で入れる
最後のページは、開かれないこともあると私は見ています。最初のページで、誰が、誰のために、何をする人かを1行で言い、連絡先を添えます。例文です。
工務店や小さな会社の、採用ページを作っているデザイナーの〇〇です。 メール:〇〇@example.com 電話:000-0000-0000
長い経歴は、2ページ目以降に置けば十分です。先に1行で伝わっていれば、読み進めてもらえます。
対面で使う|送って終わりにせず、話の途中で1件だけ見せる
名刺交換のあとに送るひと言
ポートフォリオを、全部入りの冊子として添付して送らないでください。相手が開く前に、探す作業が始まってしまいます。そのまま使える文例です。
〇〇様 先日はお時間をいただき、ありがとうございました。 お話にあった、採用ページの作り直しに近い仕事を1つだけお送りします。 ご覧になって気になる点があれば、次にお会いするときにお聞かせください。
「1つだけ」と書くのがポイントです。全部を見る負担が減って、開いてもらいやすくなる、と私は考えています。
打ち合わせで開く順番
打ち合わせでは、冒頭から作品の説明を始めません。順番は次のとおりです。
- 先に、相手の話を聞く(いま困っていること、これまでのやり方)
- 聞いた状況にいちばん近い1件を開く
- 4項目のうち、「困っていたこと」から話す
- 相手の話に戻る
聞く順番そのものについては、フリーランスの営業の仕方でまとめています。ポートフォリオは、聞いたあとに出す道具です。
見せたあとに聞くひと言
見せたら、説明を重ねずに、相手の話に戻します。
このときは、問い合わせ先が分かりにくいことで困っていたんですが、近いことはありますか。
こう聞くと、作品を見せた場面が、相手が自分の件を話し出すきっかけになります。作品を評価してもらう時間から、相手の話を聞く時間に変わります。
送る前に確かめるチェックリスト
送る前の8項目
| 確認 | 項目 |
|---|---|
| ☐ | ①見せる相手を1人に決めたか |
| ☐ | ②その人に近い作品から選んだか |
| ☐ | ③1作品ごとに「困っていたこと」を書いたか |
| ☐ | ④作った年代順ではなく、相手に近い順に並べたか |
| ☐ | ⑤最初のページに、1行の自己紹介と連絡先があるか |
| ☐ | ⑥スマホで開いて読めるか |
| ☐ | ⑦掲載の許可を確認したか |
| ☐ | ⑧送るときのひと言を用意したか |
全部にチェックが付かなくても、送って構いません。付いていない項目が、次に直す場所になります。
作り直す目安
作り直す時期を、期間で決める必要はありません。次のどちらかが起きたときに入れ替えます。
- 見せる相手が変わったとき
- 近い業種の仕事を、新しく納めたとき
今日やれること
- 次に会う予定の人を、1人書き出す
- その人に近い作品を、1つ選ぶ
- 4項目の型で、1ページだけ作る
全部を作り直さなくて構いません。1ページあれば、次に会うときに「近い仕事を1つだけお見せします」と言えます。
よくある質問
ポートフォリオに載せる作品が少ないときはどうすればいいですか?
数を増やす前に、見せたい相手の業種に近いものを1〜2件選びます。足りなければ、その業種を想定した自主制作で補います。自主制作であることは書いておきます。少なくても、相手が自分の件と重ねられる作品があれば足ります。
会社員時代の仕事をポートフォリオに載せてもいいですか?
守秘義務や権利の扱いは契約によって違うので、前の勤め先や依頼主に、掲載してよいか確認しておくと安心です。載せ方も含め、個別の判断は専門家に相談してください。
ポートフォリオは何作品くらい載せればいいですか?
決まった数はありません。全部載せるより、見せる相手に近い順に少なく選ぶほうが伝わると私は考えています。相手が違うなら、版を分けます。
ポートフォリオはWebサイトとPDFのどちらで作るべきですか?
どこで見られるかで決めます。メールで送るならPDF、スマホで開いてもらうならURL、打ち合わせなら紙かタブレットです。最初は1つの形式で、1人に向けた1冊を作れば足ります。
ポートフォリオのデザインで気をつけることは?
枠や飾りを作品より目立たせないことです。背景は控えめにして、書体は1〜2種類にします。最初のページに、1行の自己紹介と連絡先を入れます。
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