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このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
嫌な客の断り方は3段階。角が立ちにくい順に使う
断る場面は、角が立ちにくい順に3段階に分けられます。
| 段階 | やること | 使う場面 |
|---|---|---|
| 1. 条件を伝える | 予約ページや確認メッセージに、ルールを先に書く | 断る前。トラブルの前 |
| 2. 次の予約を受けない | 相手と言い合わずに、今後の予約だけ終わらせる | 同じことが繰り返されたとき |
| 3. その場で止める | 値引き・延長・失礼な言動を、その場で区切る | 目の前で起きているとき |
この記事は、いちばん角が立ちにくい「次の予約を受けない」と「条件を先に書く」を中心に書きます。その場で止める言い方も、例文つきで出します。
断る基準を持つことは、仕事の取り方とつながっています。仕事を取る側の全体像は仕事の取り方の全体像にまとめています。
断れないのは、気が弱いからとは限らない
予約表にその名前を見つけた瞬間、気が重くなる。それでも断らずに受けて、当日まで憂うつな気持ちを引きずる。サロンや飲食店、ひとりで回している店では、こういう状態は珍しくありません。
「お客を選べる立場じゃない」と自分に言っていないか
予約が入るたびに気が重いのに断らない。その理由として、「断ったら次が来ない気がする」と答える人がいます。「お客を選べるほど、うちはまだ偉くない」と自分に言い聞かせる人もいるのではないか、と私は見ています。
これは気の弱さの話というより、空いた枠が埋まる当てがない、という話だと私は見ています。当てがなければ、合わない1人でも手放しにくくなります。当てがあれば、人は断りやすくなります。
だから、性格を変える必要はありません。決めるのは、誰をどんな行動で断るかという線引きだけです。そして、空いた枠を埋める動きを持っておくことです。この記事では、線引きと、枠を埋める動きを順に書きます。
合わない仕事を受け続けると起きること
毎回値引きを求めてくるお客様がいる。予約時間を過ぎても帰らないお客様がいる。その対応で、ほかの予約の準備や仕込みの時間が削られていきます。疲れも残ります。気づくと、いつも来てくれるお客様から連絡が来たときに、枠が空いていない。
この状態を『断れない型』と呼びます。断ったら次が来ない気がして合わない仕事も受け続け、いい話が来たとき手が空いていない、という状態のことです。
「断れない人」という意味ではありません。いま、その動きにハマっているというだけです。
なお、「嫌な客は切って構わない」と言いたいわけではありません。切るかどうかは、感情ではなく、決めた線を超えたかどうかで判断します。次の章で、その線を作ります。
誰を断るかを先に決める:合わないお客様の線引き表
断る前に、「誰を断るか」を決めておきます。場面ごとに悩むと、毎回、気分で決めることになり、気分で決めた断りは相手にも自分にも後味が残ります。
断る理由にしていい『行動』
人を断るのではなく、行動で線を引きます。例えば、次のようなものです。
- 無断キャンセルが2回ある
- 毎回、値引きを求めてくる
- 予約時間を大幅に過ぎても帰らない
- 営業時間外に、何度も連絡が来る
- スタッフや他のお客様への暴言・からかいがある
回数や条件は、店ごとに自分で決めるものです。「2回」は例で、1回で十分と考える店もあれば、3回まで待つ店もあります。大事なのは、数字を決めて、先に書いておくことです。
断る理由にしない『好み』
次のようなものは、断る理由にしません。
- 口数が少ない
- 表情が硬い
- 注文が細かい(ただしルールは守っている)
- 話が合わない
合わないと感じることと、断る理由があることは別です。好みで断り始めると、基準が毎回変わり、自分でも説明できなくなります。人格ではなく、行動を見ます。
迷惑なお客様と、カスハラとして対応を考える線は別
厚生労働省は、カスタマーハラスメントを次のように説明しています。「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」。
私はこの定義を、要求の中身よりも、伝え方や手段が社会通念上おかしいかどうかを見るもの、と読んでいます。たとえば、値引きを頼むこと自体より、大声で迫る、脅すといった手段のほうが問題になりやすい、という読み方です。また、この定義は「労働者の就業環境」が害されるかどうかを軸にしたものです。
ここで押さえたいのは、迷惑なお客様すべてがカスハラにあたるわけではない、という点です。この記事の線引き表は、店が自分で決める「お受けしない条件」です。カスハラかどうかの判断とは別の話です。
暴言や脅しがあるときは、ひとりで抱えず、専門家や公的な相談窓口に相談してください。法的にどこまで断れるかは、業種や事情で変わるため、この記事では断定しません。
持ち帰り用:線引き表
回数は例です。自分の店に合わせて書き換えてください。
| 行動 | 何回で | どの段階で断るか |
|---|---|---|
| 無断キャンセル | 2回 | 1回目は条件を伝える、2回目で次の予約を受けない |
| 毎回の値引きの要求 | 2回 | 1回目はその場で止める、続くなら次の予約を受けない |
| 予約時間を大幅に過ぎて帰らない | 2回 | その場で止める、続くなら次の予約を受けない |
| 営業時間外の連絡 | 3回 | 条件を伝える、続くなら次の予約を受けない |
| スタッフ・他のお客様への暴言・からかい | 1回 | その場で止める、対応を終える |
次の予約を受けない断り方:店頭・LINE・電話の例文
断り方のうち、角が立ちにくいと私が見ているのが「次の予約を受けない」です。今日の対応は普通に終え、今後の予約だけを受けません。言い合いになりにくく、相手も受け止めやすい断り方です。
帰りぎわに「次回は?」と聞かれたとき
例文です。
申し訳ありません、今後のご予約はお受けするのが難しくなりました。これまでありがとうございました。
理由は一言で止めます。「お店の判断です」で足ります。長い説明は、言い合いのきっかけになります。理由を聞かれたら、次のように返します。
お店の判断です。詳しいご説明は控えさせてください。
LINE・予約サイト・電話で予約が来たときの返信例
順番は、お礼→受けられないこと→ほかのお店を探してもらうひと言、です。
LINE
ご連絡ありがとうございます。申し訳ありませんが、今後のご予約はお受けするのが難しくなりました。これまでご利用いただき、ありがとうございました。ご希望に合うお店が見つかることを願っています。
予約サイト
ご予約ありがとうございます。今回のご予約はお受けできません。今後も同様にお受けできないため、ほかのお店をご検討ください。
予約サイトによって、予約の断り方や操作は違います。手順はサイトの案内で確認してください。
電話
お電話ありがとうございます。申し訳ありません、今後のご予約はお受けしていません。ほかのお店をお探しください。ありがとうございました。
電話は、相手のペースで話が長くなりやすいです。2文で切って、お礼で終えます。
嘘の「満席です」を使わない理由
断り方として「満席です」と言う方法もあります。その場は楽です。ただ、次に困ります。
| 「満席です」と言う | 事実で短く断る | |
|---|---|---|
| その場 | 楽 | 少し緊張する |
| 次に同じ人が連絡してきたとき | 「いつなら空いていますか」と聞かれて詰まりやすい | 同じ一文で返せる |
| 嘘の数 | 日付を変えて言うたびに増えやすい | 増えない |
| 結果 | 断るたびに言い訳を考える | 同じ一文を繰り返せる |
「今後のご予約はお受けするのが難しくなりました」は、嘘ではなく、事実です。同じ一文で返せるので、やりとりを重ねても言い訳を考え直さずに済みます。
避けたい言い方(NG例)
- 謝りすぎる。 「本当に申し訳なくて…本当にすみません…」と3回重ねると、相手は「もう少し押せば変わる」と受け取りやすくなります。謝るのは1回です。
- 理由を全部言う。 「前回の○○が…それに△△も…」と並べると、一つずつ反論されることがあります。理由は一言で止めます。
- 含みを残す。 「また落ち着いたら」「機会があれば」と言うと、相手が「いつ落ち着くのか」と連絡してくることがあります。受けないなら、受けないと言い切ります。
その場で止める言い方:値引き・時間延長・無理な追加を頼まれたとき
目の前で起きているときは、次の予約を待たず、その場で区切ります。
値引きを求められたとき
料金はこちらで決めていますので、お値引きはしていません。
言い方は穏やかで構いません。ただ、金額の話は短く言い切ります。迷う顔を見せたり、「うーん」と間を空けたりすると、押される余地になります。
黙って値引きに応じると、何が困るか。次も同じ額を言われやすくなります。1回の値引きが、毎回の基準になっていきます。
時間を過ぎても帰らない・追加を頼まれるとき
時間と料金で区切ります。
次のご予約があるので、今日はここまでにさせてください。
それは別メニューになり、○円です。よろしければご用意します。
「次のご予約がある」は、予約が実際に入っているときだけ使います。入っていないときは、「閉店の時間なので、今日はここまでです」のように、事実で区切ります。
暴言・からかい・スタッフへの失礼な言動があったとき
この場面は、その場で対応を終えてよい場面として扱います。
その言い方をされると、お受けできません。今日はここまでにさせてください。
スタッフがいる店は、誰が前に出るかを先に決めておきます。「店主が前に出る」と決めておけば、スタッフは自分で対応を抱えずに済みます。
身の危険を感じたときは、迷わず警察など外の助けを呼んでください。そのうえで、法的な手続きをどうするかは、専門家に相談して決めてください。
共通の言い方
3つの場面に共通するのは、2文で止めることです。
- 受けられないこと
- 代わりにできること(あれば)
「お値引きはしていません。そのかわり、次回使えるお品をご用意します」のように、代わりに出せるものがあれば2文目に入れます。なければ、1文で終えて構いません。
条件を先に書いておけば、断る場面そのものが減る
断る場面のいちばん手前にあるのが、条件を先に書くことです。条件を知っていて来るお客様と、知らずに来るお客様では、あとの対応が変わります。
予約ページ・メニュー表に書く一文
文例です。店に合わせて変えてください。
キャンセルは前日までにご連絡ください。ご連絡のない当日欠席が続いた場合、次回のご予約をお受けできないことがあります。
営業時間外のご連絡は、翌営業日にお返事します。
料金は店で決めており、お値引きはしておりません。
3行あれば、足ります。長く書くほど、読まれにくくなります。
初回のお客様に最初に伝えること
予約確認のメッセージに、条件を1〜2行入れます。
ご予約ありがとうございます。ご予約の時間を過ぎる場合は、延長分を別料金でいただいています。ご了承ください。当日のご連絡は、お電話でお願いします。
初回に伝えていたことなら、あとで断るときも「最初にお伝えしたとおり」と言えます。言い訳ではなく、確認になります。
条件があると、断るときに自分を責めにくくなる
条件が書いてあれば、断るのは「ルールに沿った対応」になります。毎回、「自分が冷たいのでは」と考えずに済みます。
これは気持ちの持ち方の話ではなく、仕組みの話です。気分で決めると、毎回迷います。決めてあれば、読み上げるだけです。
断ったあとにやること:口コミ・空いた枠・記録
断ることより、断ったあとが怖い、という人もいます。ここで3つの動きを決めておきます。
悪い口コミが怖いとき
書かれるかどうかは、誰にも言い切れません。書かれないかもしれませんし、書かれるかもしれません。
もし書かれたら、返信は事実だけを短く書きます。感情的に言い返さず、個人が特定される内容は書きません。例文です。
ご投稿ありがとうございます。今回のご予約の件は、当店の予約条件に沿って対応いたしました。ご期待に添えず、申し訳ありません。
削除依頼などの法的な対応には、この記事では踏み込みません。必要なときは専門家に相談してください。
空いた枠の使い方
断れなかった理由は、「次が来ない不安」でした。ここは、自分から埋めに行きます。いつも来てくれるお客様に、一言送ります。
いつもありがとうございます。○日の午後に1枠空きました。よろしければお使いください。
営業というと大げさに聞こえますが、やることはこの1通です。空いた枠を、断った分だけ、大事にしたいお客様に回します。これを1回やっておくと、「断っても枠は埋められる」という経験が残ります。
断ったら記録を残す
断ったら、メモを残します。3項目で足ります。
| 項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 日時 | 10月13日 夕方 |
| 何があったか | 予約時間を30分過ぎても帰らなかった。2回目 |
| どう伝えたか | 「次のご予約があるので」と区切り、帰りぎわに今後の予約は受けないと伝えた |
次に似た人が来たとき、迷いにくくなります。スタッフがいる店では、このメモを共有します。
今日やること:「お受けしない条件」を3行だけ書く
ここまで読んで、全部やる必要はありません。今日やることは、3行書くことだけです。
書き方の例
- 無断キャンセル2回で、次のご予約はお受けしない
- 値引きのご相談は、お受けしない
- スタッフへの失礼な言動があった時点で、対応を終える
数字や中身は、自分の店に合わせて変えてください。前の章の線引き表を見ながら、3つ選べば足ります。
次の予約が来たときの一文を先に用意しておく
「次の予約を受けない断り方」の例文から1つ選び、スマホのメモに貼ります。その場で言葉を探さなくていい状態にしておくだけで、断る場面の重さは軽くなります。
断れるかは、条件を決めてあるかで変わる
断れるかどうかは、選べる立場かどうかよりも、条件を決めてあるかどうかで変わると私は見ています。性格はそのままでいいです。気が弱いと感じている人でも、条件を3行書いておけば、断りやすくなります。
まずは、今日の3行から書いてみてください。
よくある質問
お店がお客さんの予約を断るのは問題ないですか?
業種や事情によって考え方が変わるため、この記事では断定しません。法的な判断が必要なときは、専門家に相談してください。実務の進め方としては、お客様の行動を理由に、事実だけを短く伝え、記録を残す形が整理しやすいです。
常連になってしまった面倒な客はどう断ればいいですか?
いきなり縁を切るより、まず条件を伝えます。値引き不可・時間厳守など、守ってほしいことを先に言います。それでも守られなければ、次の予約を受けない、と段階を踏みます。例文は「次の予約を受けない断り方」の章にあります。
「予約がいっぱいです」と嘘をついて断ってもいいですか?
その場は楽ですが、同じ人からまた連絡が来たときに「いつなら空いていますか」と聞かれて詰まりやすく、嘘も増えやすくなります。「今後のご予約はお受けするのが難しくなりました」と、事実を短く伝えるほうが、同じ一文で繰り返し返せます。
断った客に悪い口コミを書かれたらどうすればいいですか?
書かれるかどうかは言い切れません。書かれたら、事実だけを短く返信し、言い返さないようにします。削除依頼などの法的な対応が必要なときは、専門家に相談してください。
スタッフに失礼なことを言う客にはどう対応すればいいですか?
店主が前に出て、その場で対応を終えて構いません。カスタマーハラスメントにあたるかどうかは、厚生労働省の定義を参考にしつつ、ひとりで抱えずに専門家や公的な窓口に相談してください。何があったかを記録し、スタッフと共有しておくと、次の対応がしやすくなります。
参照した情報源
- カスタマーハラスメント対策(あかるい職場応援団)(厚生労働省 あかるい職場応援団)・確認日 2026-10-13
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