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このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
契約の決め手は、頼んでくれたお客様本人に聞くのがいちばん確か
契約の決め手は、自分で推測するより、頼んでくれた相手に一言で聞くほうが確かです。聞いた言葉を次の打ち合わせの順番に組み込めば、決まり方を再現しやすくなります。
この記事では、そのまま送れる聞き方、返ってきた答えの分け方、次の打ち合わせへの置き方、記録の残し方を順に書きます。調査や統計は使いません。使うのは、自分のお客様が口にした言葉だけです。
「たまたま決まった」で片づけると、次も手探りになる
仕事が決まった直後は、請求書の準備や日程の調整が待っています。別の見積の依頼も動いています。決まった理由を振り返る時間は、いつも後ろに回ります。
そのとき、内心で「運がよかっただけで、自分の営業がうまかったわけじゃない」と言い渡している人が多いと、私は見ています。決まった理由が分からないのは、理由を聞く手順を教わる機会が少ないからだと、私は見ています。腕の良し悪しとは別の話です。
手順があれば、運に見えた1件が、次に使える材料に変わります。
自分が思う決め手と、相手が言う決め手はずれやすい
場面を想定して考えます。デザイナーが、自分は「作品の質」が決め手だったと思っているとします。だから次の打ち合わせでも、実績の見せ方に時間をかけます。
ところが依頼主に聞いてみると、こう返ってきます。
見積の中身が分かれていて、何にいくらかかるのかが分かったからです。
これは実例ではなく、分かりやすくするための想定です。ただ、自分が力を入れたところと、相手が判断に使ったところは、ずれることが多いと私は見ています。ずれたままだと、頑張る場所を外して次の打ち合わせに入ることになります。作品の見せ方を磨く前に、見積の出し方を整えたほうが決まりやすい、という場合もあります。
毎回いちから組み立てていないか
うまくいった打ち合わせのあとも、何がよかったかを残さないまま、次の打ち合わせでもまたいちから準備する。資料も、話す順番も、そのたびに作り直す。私はこれを『毎回いちから型』と呼んでいます。
この型から抜ける最小の行動は、決まった1件に、理由を1問だけ聞くことです。聞く時期、言い方、答えの使い方は、このあと順に説明します。
聞くタイミングは3つ:お礼の連絡・納品のあと・数か月後の近況
いちばん聞きやすいのは、決まった直後のお礼の連絡
お礼のメールやLINEの最後に、1問だけ足します。決まった直後は相手の記憶が新しく、比べた相手や迷った点をまだ覚えています。日が空くほど、相手は「どうだったかな」と思い出す作業をすることになります。
お礼の連絡は、もともと送るつもりだった連絡です。新しい連絡を増やす必要はありません。
納品のあとの振り返りで、もう一度聞く
「最初に決めた理由」と「やってみてよかった点」は、別の情報です。決める前に見ていたことと、やったあとに感じたことは、一致しないことがあります。両方そろうと、次の説明に使いやすくなります。
納品のあとなら、こう添えます。
やってみて、よかった点があれば、ひとつだけ教えてください。
数か月後の近況連絡にも、1問だけ添える
数か月たってからの近況連絡でも聞けます。頼みごとをしない連絡なので、相手の返事の負担が軽いのが利点です。「あのときお願いして、いま振り返ってどう感じますか」と一言添える形です。私は、時間がたってから出てくる言葉には、直後には出ない見方が混ざると見ています。
聞いてはいけない場面(NG例)
- 契約前の検討中に「何が決め手になりそうですか」と聞く。急かされていると受け取られやすい
- 請求書を送るメールと同じメールに入れる。お金の連絡に紛れて、答える気持ちになりにくい
- 相手が忙しい月末に、まとめて送る
どれも、聞く理由が相手のためではなく、自分のためだけに見えやすい場面です。迷ったら、「相手が今これに答える余裕があるか」を基準に決めます。
そのまま使える聞き方:1問だけ、選びやすく
メール・LINEの文例
メールの場合は、お礼の本文の最後にこう入れます。
このたびはご依頼ありがとうございました。 今後の参考にしたく、ひとつだけ教えてください。 最後に決めていただいた理由は何でしたか。一言で大丈夫です。 引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
LINEの場合は、短くします。
ご依頼ありがとうございました。今後の参考にしたくて、ひとつだけ教えてください。最後に決め手になったのは何でしたか。一言で大丈夫です。
「一言で大丈夫です」が入ると、答える側の負担が下がります。「今後の参考にしたく」と理由を添えるのは、聞く目的を先に伝えて、探られている感じを和らげるためです。
対面・電話での言い方
打ち合わせの終わりに、こう聞きます。
差し支えなければ、何が決め手になったか、一つだけ伺ってもいいですか。
聞いたあとは、黙って待ちます。沈黙が気まずくて、つい自分の説明で埋めたくなりますが、そこはこらえます。相手は考えている最中です。答えが出たら、評価せずに「そこだったんですね」と受けて、その場でメモを取ります。
NG例と言い換え
- 「どうして私に頼んでくれたんですか?」→ ほめ言葉を待っているように聞こえやすい。「最後に決めた理由」という、相手の判断について聞く形にする
- 「ほかと比べてどうでしたか」→ 他社の悪口を言わせる形になりやすい。使わない
- 質問を3つも4つも並べる → アンケートになって、返事が遅れやすい。1問に絞る
返ってきた答えの読み方:4つに分けて、相手の言葉のまま残す
決め手の4分類(表)
返ってきた言葉は、次の4つのどれかに入ることが多いと私は見ています。それぞれに、次の打ち合わせで変える場所を対応させておくと、聞いた答えを使いやすくなります。
| 分類 | 返ってきやすい言葉 | 次の打ち合わせで変える場所 |
|---|---|---|
| 人 | 話しやすかった/返信が早かった/最初に質問してくれた | 初回の問い合わせには当日中に一言返す。最初の時間を質問に使う |
| 中身 | 提案が合っていた/過去の仕事を見た/進め方の説明が分かった | 提案の前に、進め方を短い手順にして先に見せる |
| 条件 | 金額/納期/支払い方法 | 見積の最初に、納期と支払い方法も並べて書く |
| きっかけ | 紹介/タイミング/たまたま見た投稿 | 紹介してくれた人に結果を報告する。出会いの入口を残す |
表は目安です。1つの答えが2つにまたがることもあります。ノートに残すときは、分類を書き足すだけにして、相手の言葉は書き換えません。
「安かったから」と言われたときの掘り下げ方
この答えを、すぐに値下げの成功体験にしないでください。「金額のどのあたりが決め手でしたか」と、1問だけ足します。
すると、「総額が予算内だった」「追加料金がないと分かった」「内訳が見えた」のように、中身が分かれることが多いと私は見ています。値段そのものより、値段の出し方が決め手だった可能性が残ります。値下げを重ねる前に、出し方で変えられる場所がないかを先に見ます。
「なんとなく」と返ってきたら
無理に聞き出さないでください。「最初の打ち合わせと見積、どちらで決めようと思いましたか」と、2択にすると答えやすくなります。
それでも出てこなければ、その1件はそれでいいと考えます。ノートには「なんとなく」と、そのまま書いておきます。
次の打ち合わせで使う:聞いた決め手を、話す順番に置く
決め手ごとに、変える場所を1つ決める
聞いた言葉を、次の打ち合わせで変える場所に1つだけ対応させます。
- 「最初に困りごとを聞いてくれた」→ 次も、最初の15分は質問だけにする
- 「見積の内訳が分かりやすかった」→ 見積を項目ごとに分けて出す
- 「返信が早かった」→ 初回の問い合わせには、当日中に一言返す
1件の決め手で変える場所は、1つだけにします。一度に複数を変えると、どれが効いたのか分からなくなります。
お客様の言葉は、自慢ではなく説明に使う
聞いた言葉は、次の相手への説明に使えます。
前のお客様は、内訳が見えたのが決め手だったと言ってくださいました。なので今回も、項目ごとに分けてお出しします。
この言い方なら、実績を並べて自慢するのではなく、相手が判断するときの材料として置けます。
NG例:決め手を大きく言い換えない
「分かりやすかった」と言われたのを、「業界一分かりやすい」のように盛らないでください。盛ると、次のお客様の期待を上げすぎて、かえって苦しくなりやすいです。
お客様の名前や社名を出すのは、本人の了承を取ってからです。ホームページへの掲載など、扱いに迷う場合は、個別の判断として専門家に相談してください。
決め手ノートの作り方:3件たまると、自分の決まり方が見えてくる
5列だけのテンプレート
スプレッドシートでも紙でも構いません。列は5つだけです。
| 日付 | お客様 | 出会ったきっかけ | 決め手(相手の言葉そのまま) | 次に使う場面 |
|---|---|---|---|---|
| 10/21 | T様(イニシャルでよい) | 知人の紹介 | 最初にこちらの事情を聞いてくれた | 初回の最初の15分は質問だけにする |
上の行は書き方の例です。お客様の欄はイニシャルで十分です。決め手の欄は、要約せず、相手が言った言葉のまま書きます。
3件そろったら、重なりを探す
3件そろったら、決め手の欄を並べて読みます。3件のうち2件で同じ言葉が出たら、偶然ではなく、自分の決まり方として扱ってよいと私は考えています。これは経験則で、数字の根拠があるわけではありません。外れていたら、次の1件で見直せば足ります。
重なりが見つかると、次の打ち合わせでも毎回いちから考える必要がなくなります。「ここは外さない」という場所が、手元に1つ残ります。
営業全体の流れの中での位置
決め手を聞くのは、仕事が決まったあとの1工程にすぎません。出会い方、話の聞き方、金額の出し方を含めた順番は、仕事の取り方全体の順番はこちらにまとめています。決め手ノートは、その順番のどこを強めるかを選ぶための材料になります。
聞くのが気まずいときの考え方
ほめてほしいと思われないか
気まずさの正体は、相手に評価を求めているように感じることだと、私は見ています。ただ、聞いているのは自分への評価ではありません。相手がどう判断したか、という相手の側の話です。そう考えると、聞きやすくなります。
文面に「今後の参考にしたく」と入れておけば、聞く目的も相手に伝わります。
話がうまくなる必要はない
性格を変える必要はありません。口下手のままで構いません。やることは、1問聞いて、返ってきた言葉を次の打ち合わせの1か所に置く、それだけです。
今日やること
直近で決まった1件を思い出してください。そのお礼の文例に、「最後に決めていただいた理由は何でしたか。一言で大丈夫です」の1問を足して送ります。返事が来たら、決め手ノートの1行目に、相手の言葉のまま書きます。
まだ3件はありません。1行目が書ければ、それで十分です。
よくある質問
契約の決め手はどうやってお客様に聞けばいいですか?
お礼の連絡の最後に「最後に決めていただいた理由を一つだけ教えてください。一言で大丈夫です」と1問だけ足します。「どうして私に?」は、ほめ言葉を待っているように聞こえやすいので避けます。
契約の決め手を聞くのはいつがいいですか?
決まった直後のお礼の連絡がいちばん聞きやすいです。納品のあとや数か月後の近況連絡で、やってみてよかった点を聞くのも、別の情報になります。契約前や、請求書と同じタイミングは避けます。
決め手が「安かったから」だった場合、値下げしたほうがいいですか?
すぐに値下げの成功体験にしないでください。「金額のどのあたりが決め手でしたか」と1問足すと、予算内だった、内訳が見えた、追加料金がないと分かった、など中身が分かれることが多いと私は見ています。出し方を変えれば足りる場合もあります。
「なんとなく」としか返ってこないときはどうすればいいですか?
「最初の打ち合わせと見積、どちらで決めようと思いましたか」のように2択にすると答えやすくなります。それでも出なければ、無理に聞き出さず、その1件はそれでいいと考えます。
聞いた決め手を、ほかのお客様への説明やホームページに使ってもいいですか?
説明の中で「前のお客様は内訳が見えたのが決め手だったそうです」と場面として出すのはよいです。名前や社名を出したり掲載したりする場合は、本人の了承を取ります。言葉を大きく言い換えないでください。個別の判断に迷ったら、専門家に相談を。
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