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このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
企画書の書き方は「自分がいない場で、相手が説明できるか」で決まる
先に答えを書きます。企画書は、次の形で1枚にまとめます。
- 1行目は、自分の紹介ではなく、相手が打ち合わせで言った困りごとにする
- 欄は6つ(困りごと/なぜ今か/やること/やらないこと/費用と期間/決めてほしいこと)にする
- 書く前の打ち合わせで、困りごと・時期・決める人・費用の4つを聞いておく
- 費用は総額だけにせず、作業ごとに分ける
以下、その理由と、そのまま使える文例を順に書きます。
「企画書 書き方」で調べる人の中には、立派な企画書が作れない自分は、まだ会社に仕事を持ち込める立場ではない、と感じている人が多いと見ています。これは読者の声を集めて確かめたことではなく、私の仮説です。
私が見ている理由は、別のところにあります。書けないのは、文章力や企画の才能が足りないからというより、この紙が誰に、どこで読まれるのかを知らないまま書いているからではないか、というものです。
打ち合わせが終わると、担当者はその紙を持って、社長や上司の席に行きます。そして自分の言葉で説明します。そこに、紙を書いた本人はいません。
この記事では、企画書を「担当者が社内でそのまま回せる1枚」と置きます。これは公式の定義ではなく、この記事での見方です。会社や業界によって、企画書や提案書の呼び方も形もまちまちです。
「ちゃんとした企画書」が作れないと、持ち込めない気がする理由
会社員のころに、何十枚もある立派な資料を見たことがある。あるいは、自分は企画書を作る側にいなかった。そういう出来事があると、「あれと同じものは作れない。だから自分には無理だ」と決めてしまう流れが起きやすいと、私は見ています。
ただ、そうした厚い資料は、社内の会議向けに、複数の人が時間をかけて作ったものも多いはずです。個人で仕事を取りに行く場面で、同じ形を目指す必要はありません。
本業の腕があっても、企画書の書き方は別の話で、足りないのは書く順番だけ、ということがあります。順番は習えば身につきます。この記事の後半は、その順番の話です。
企画書は、自分の代わりに社内で話してくれる紙
担当者が上の人に紙を見せたとき、返ってきそうな質問を、私は次の4つと想定しています。

- 「で、何をしてくれるの?」
- 「いくらかかるの?」
- 「なんで今やるの?」
- 「うちじゃなきゃだめなの?」
この4つに紙だけで答えられれば、担当者は紙を指さすだけで済み、話は社内で進みやすくなります。答えられなければ、担当者が自分で考えて答えることになります。担当者が困ると、話はそこで止まりやすいです。仕事を持ち込む側から見ると、止まっている理由は見えません。返事が来ないという形で、あとから分かるだけです。
1枚にする理由(私の見方)
企画書の枚数に正解はありません。根拠のある目安も、私は確認できていません。そのうえで、私は1枚をすすめます。理由は3つです。
- 担当者が持ち歩ける。印刷して机に置くことも、画面で見せることもできる
- メールやチャットで転送しやすい
- 削るほど、何を言いたいのかがはっきりする
詳しい資料を渡したいときは、2枚目以降を「別紙」にしてかまいません。1枚目だけで話が通じる形にしておき、詳しい話は別紙に回す。この分け方なら、丁寧さを諦めなくて済みます。
相手が社内で回せる1枚のテンプレート(6つの欄)
1枚に入れる欄は、先ほどの4つの質問から逆算して6つにしました。これは公的な型ではなく、私のたたき台です。自分の仕事に合わせて直してください。
6つの欄と、それぞれが答える質問
| 欄 | 書くこと(分量の目安) | 上の人に聞かれる質問 | NG例 |
|---|---|---|---|
| ①いま困っていること | 打ち合わせで相手が言った言葉で書く(1〜2行) | 「そもそも何が問題なの?」 | 「業務効率化が課題です」 |
| ②なぜ今やるのか | 時期の理由。季節、期限、状況の変化(1〜2行) | 「なんで今なの?」 | 「早めの対応が重要です」 |
| ③やること | 3つまで。名詞ではなく動作で書く(各1行) | 「何をしてくれるの?」 | 「最適なご提案をいたします」 |
| ④やらないこと・範囲 | 今回は含めないものを書く(1〜2行) | 「どこまでやってくれるの?」 | 何も書かない |
| ⑤費用と期間 | 作業ごとの金額、始まりと終わり、支払い時期(2〜3行) | 「いくら? いつまで?」 | 「一式 〇〇円」だけ |
| ⑥決めてほしいこと・次の一歩 | 相手に決めてほしいことと、返事の目安日(1〜2行) | 「で、私は何を決めればいい?」 | 「ご検討ください」 |

NG例に共通しているのは、誰にでも言える一文だということです。「業務効率化を実現します」は、どの会社の紙に書いても通じる代わりに、この会社の紙としては何も言っていません。上の人が聞きたいのは、この会社の話です。
自己紹介と実績の欄は、このテンプレートに入れていません。入れない理由は、次の章で書きます。
書き例:デザイナーが、取引先の店にチラシの作り直しを持ち込む場合
以下は架空の例です。効果の数字は入れていません。
①いま困っていること 新しいメニューが伝わっていない、と店長から伺いました。いまのチラシは、定番メニューが中心の構成です。
②なぜ今やるのか 来月から新メニューが始まるため、開始前に配れる形にしたいと考えています。
③やること
- 新メニューを一番目立つ位置に置いた、A4チラシの作り直し
- メニュー写真の撮影(新メニュー分のみ)
- 印刷会社への入稿データの作成
④やらないこと・範囲 お店のロゴの変更、既存メニューの写真の撮り直し、配布作業は今回の範囲に入れていません。
⑤費用と期間 デザイン 〇〇円/撮影 〇〇円/入稿データ作成 〇〇円(いずれも架空の伏せ字です)。〇月〇日に着手し、〇月〇日までに納品します。お支払いは納品月の翌月末を想定しています。
⑥決めてほしいこと・次の一歩 進めるかどうかのお返事を、〇月〇日までにいただけますか。進める場合は、撮影日の候補を2つ、こちらから出します。
①は、店長が言った言葉をそのまま使っています。上の人が紙を見たとき、「店長が言っていたことだ」と分かります。担当者が説明する負担も軽くなります。
埋められない欄は、聞きそびれた場所
書いていて、②や⑥が埋まらないことがあります。これは書く力の問題ではなく、打ち合わせで聞いていない、という合図です。
埋められない欄を空けて出すと、担当者が上の人に答えられません。かといって、想像で埋めて断定すると、違っていたときに紙全体の信用が下がります。おすすめは、次の形で(仮)をつけて出すことです。
②(仮)来月の新メニュー開始に間に合わせたいと考えています。違っていたら教えてください。
(仮)と書いてあれば、相手は「ここだけ直せばいい」と分かります。聞きそびれを隠さずに、確認の入口にできます。
自己紹介から書き始めた1枚は、社内で止まる
最初に書く企画書は、こういう並びになりがちだと私は見ています。
- 弊社について(または、私の実績)
- サービス内容
- 料金
- 最後に、相手の困りごとが1行
担当者がこれを上の人に回すと、上の人は「で、うちの何の話?」と聞きたくなります。担当者は、4番目の1行を探して読み上げるしかありません。紙が自分の代わりに話してくれていないのです。
こうなる流れは、はっきりしています。分かってもらいたい気持ちが先に立ち、自分の説明から話や資料を始めてしまう。私はこれを「説明から入る型」と呼んでいます。何をどの順で聞き、どの順で書くかを習っていないだけで、性格や能力の話ではありません。
抜けるための最小の行動は、1つです。1行目を「〇〇さんが言っていた困りごと」に書き換えるだけで、紙の向きが変わります。
よくある並び(NG)と、回る並び(OK)の対比
| NGの並び | OKの並び | |
|---|---|---|
| 1 | 会社紹介・自己紹介 | 困りごと(相手の言葉で) |
| 2 | サービス説明 | なぜ今やるのか |
| 3 | 料金 | やること(3つまで) |
| 4 | 困りごと(最後に1行) | やらないこと・範囲 |
| 5 | 費用と期間 | |
| 6 | 決めてほしいことと次の一歩 |

中身がほとんど同じでも、並びを変えるだけで読まれ方が変わると、私は見ています。上の人は、紙の最初の数行で「自分に関係のある話か」を判断するのではないか、というのがその理由です。数字で効果を示せる話ではないので、構造の説明にとどめます。
実績は、最後に1〜2行でいい
実績を足すほど、安心してもらえるように思えます。ところが私は、実績が増えるほど、読む人が自分の会社を重ねる場所がなくなると見ています。自分の話ではなく、他社の話ばかりが並ぶからです。
入れるなら、最後に1〜2行、似た困りごとをどう片づけたかを1件だけ書きます。件数や社名の多さは並べません。
以前、新メニューの告知が伝わらないという飲食店のご相談で、写真を主役にしたチラシに作り直しました。
上の文は書き方の見本です。実際に書くときは、自分が実際に手がけた件を入れてください。実績を細かく見たい人には、別紙を用意すれば足ります。
「分かってもらいたい」が先に立つと、説明が増える
説明が増えるのは、誠実さの表れでもあります。自分の仕事を雑に扱いたくないから、丁寧に書こうとして、気づくと長くなる。その気持ちは悪いものではありません。
ただ、その誠実さを向ける先は、自分の説明を増やすことではなく、相手の言葉で書くことにしたほうが、相手に届きます。説明を減らしたからといって、誠実さが減るわけではありません。
書く前に、打ち合わせで聞いておく4つのこと
企画書の中身は、書く前の打ち合わせでほぼ決まると、私は見ています。書き方に悩んでいるときは、実は聞き方で悩んでいることが多いのではないでしょうか。
聞くのは4つです。
- いま何に困っているか
- いつまでに何とかしたいか
- それを最後に決めるのは誰か
- どのくらいの費用を考えているか
聞く順番にも意味があります。困りごと、時期、決める人、費用の順です。いきなり予算を聞くと、相手は身構えやすいです。困りごとを聞いて、相手が話しやすくなってから、費用に進みます。
「最後に決める人」を聞いておくと、相手の会社の仕組みを知らなくても、紙がどう読まれるかを想像できます。
そのまま使える聞き方の例文
- 困りごと「いちばん困っているのはどこですか。」
- 時期「いつまでに形にしたいとお考えですか。何かきっかけはありますか。」
- 決める人「この話、最後はどなたが決めますか。その方に見せやすい形でまとめます。」
- 費用「差し支えなければ、どのくらいの費用感を考えているか教えていただけますか。それに合わせて範囲を調整します。」
最後に決める人を聞くときは、「相手のために紙を作るため」と添えると、聞きやすくなります。相手を探っているのではなく、相手が上の人に説明しやすい紙を作るために聞いている、という理由が伝わります。
聞けなかったときの書き方
聞けなかった欄は、(仮)で埋めて出し、確認のひと言を添えます。聞き直すメールは、短くてかまいません。
先日はありがとうございました。お話をもとに1枚にまとめました。 一点だけ、費用の欄は私の想定で書いています(仮)。ご予算の感覚が違っていたら、教えてください。範囲を調整して作り直します。
聞き忘れを詫びる必要はありません。確認を依頼する文面にしておけば、そのまま次の会話のきっかけになります。
費用の欄は、総額だけで終わらせない
費用の欄で多いNGは、「一式 〇〇円」だけの書き方です。上の人に「高い」と言われたとき、担当者は何も返せません。どの部分が高いのかが、紙から読み取れないからです。
OKの例は、作業を2〜4つに分けて金額を書く形です。金額は、実際の見積もりに合わせて入れてください。ここでは伏せ字にしています。
| 作業 | 金額 |
|---|---|
| デザイン(A4チラシ1種) | 〇〇円 |
| 撮影(新メニュー分) | 〇〇円 |
| 入稿データ作成 | 〇〇円 |
| 合計 | 〇〇円 |
「別途お見積り」だけで逃げるのも、おすすめしません。まだ決まっていない部分があるなら、「撮影が3品以上になる場合は、1品につき〇〇円から」のように、幅を示す形で書きます。
税や契約の扱いは、会社や取引によって変わります。ここでは一般的な考え方の説明にとどめます。個別の判断は、税理士や弁護士などの専門家に相談してください。
分けて書くと、削る相談ができるようになる
作業ごとに金額が分かれていれば、担当者が上の人から「もう少し抑えられない?」と言われたとき、「この部分は今回なしにしましょうか」と相談を持ちかけられます。値下げではなく、範囲の調整になります。

総額だけだと、相談できるのは「安くしてください」の一言だけになりがちです。自分の仕事の値打ちを下げずに話を進めたいなら、分けて書いておくほうが、結果的に自分を守れると私は考えています。
期間と、支払いのタイミングも同じ欄に書く
費用と同じ欄に、いつ始めて、いつ終わり、いつ払うかを1行で書きます。
〇月〇日に着手し、〇月〇日に納品。お支払いは納品月の翌月末を想定しています。
支払いの時期を書いておくと、上の人が「お金はいつ出ていくのか」を紙の中で確認できます。聞かれてから答えるより、先に書いたほうが、担当者の手間も減ります。支払い条件の取り決めは契約にもかかわるため、不安があれば専門家に相談してください。
出す前に確かめる点検リスト
出す前に、次の項目を上から確かめます。コピーして使ってください。
- 1行目が、相手の困りごとになっている
- 相手が打ち合わせで言った言葉を、1つ以上使っている
- 「なぜ今か」が書いてある
- やることが3つ以内に収まっている
- やらないこと・範囲を書いた
- 費用が作業ごとに分かれている
- 期間と支払いのタイミングが書いてある
- 次の一歩(返事の目安日、次の打ち合わせの候補日)がある
- 自分の会社や自分の説明が、本文の半分を超えていない
- 専門用語に説明がついている
この点検は、「自分がその場にいない」前提で読み直す作業だと言い換えられます。書いた本人は、頭の中で補いながら読んでしまうので、抜けに気づきにくいです。
担当者になったつもりで、声に出して説明してみる
紙を見ながら、上の人に説明する場面を想像して、声に出してみます。「えっと、これは……」と詰まった欄が、直す場所です。
詰まりやすいのは、②なぜ今と、⑥次の一歩だと私は見ています。どちらも、書き手が分かったつもりで、紙に書いていないことが多い欄です。声に出すと、「なぜ今か」が一言で言えるかどうかがすぐに分かります。
いちばん確実な点検は、担当者に聞くこと
自分で点検するより確実なのは、担当者に聞くことです。出す前か、出すときに、こう聞いてみます。
上の方に見せるなら、どこを直すと通しやすいですか。
これは頭を下げることではありません。相手と一緒に、紙を仕上げる作業です。担当者は、自分の会社の上の人の好みを知っています。その知識を借りるのは、紙を通すための普通の手順だと私は考えています。
出すときのひと言と、今日やること
紙ができても、送るときのひと言で、相手の動きが変わります。「ご検討ください」だけで終えると、相手は何をすればいいか分かりません。次の一歩まで、メールに書きます。
送るときの文面例
〇〇様 先日はありがとうございました。社内で回しやすいように、お話の内容を1枚にまとめました。 直したい箇所があれば、すぐに作り直します。 〇月〇日ごろまでに、進めるかどうかのお考えを教えていただけると助かります。
返事が来ないときは、紙が社内で止まっているだけのこともあります。担当者が忙しい、上の人が不在、といった事情です。こちらの紙の出来が理由とは限りません。断定はできないので、「届いていますか」と責めるのではなく、「直したい箇所はありませんか」と、確認の形で連絡します。
フリーランスの営業の全体の流れは、フリーランスの営業の仕方にまとめています。企画書は、その中の一場面です。
次の1枚から使える、自分用のひな形を残す
6つの欄のテンプレートを、手元に保存しておきます。毎回いちから作ると、時間もかかり、抜けも出ます。
うまく回った1枚が出たら、どの欄が効いたのかを一言メモして残します。「②の時期の理由に、担当者が反応した」といった程度で十分です。何が効いたのかを残すと、次の1枚が楽になります。
今日やること
今日やることは1つです。最近出した企画書か見積書を開いて、1行目を読み返します。相手の困りごとから始まっているか、自分の説明から始まっているかを、確かめてください。自分の説明から始まっていたら、1行目だけ、相手の言葉に書き換えてみます。それだけで、紙の向きは変わります。
よくある質問
企画書と提案書の違いは何ですか?
呼び方は会社や業界でまちまちで、決まった定義は確認できていません。この記事では区別にこだわらず、相手が社内で回せる1枚という使い方で考えています。これは私の見方です。
企画書は1枚で足りますか?
枚数に正解はありません。ただ、1枚にすると担当者が持ち歩きやすく、転送しやすく、要点もはっきりします。詳しい資料が必要なら、2枚目以降を別紙にすればよいと私は考えています。
頼まれていないのに企画書を持ち込んでもいいですか?
いきなり完成品を送るより、打ち合わせで困りごとを聞いたうえで、「社内で見せやすいように1枚にまとめましょうか」と申し出る形のほうが出しやすいと、私は見ています。
企画書はパワーポイントとワードのどちらで作ればいいですか?
道具より、相手が開けて転送しやすい形かどうかで選びます。迷ったらPDFにして送ります。6つの欄が入っていれば、どちらでもかまいません。
企画書に実績はどこまで書けばいいですか?
最後に1〜2行で足ります。数を並べるより、相手と似た困りごとをどう片づけたかを1件だけ書くほうが、読む人が自分の会社を重ねやすいと私は見ています。
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