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このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか

オウム返しがわざとらしくなるのは、相手の話を全部返しているから

答え:一語だけ返して、黙る

全部返す場合と一語だけ返す場合の比較図

先に答えを書きます。

  • 返すのは、相手が気持ちや数字を込めた「一語」だけ
  • 返したら少し黙って、相手が続きを話すのを待つ

オウム返しの使い方は、この2つに尽きます。そのあとに短い質問を足す方法は、後半で書きます。

具体例で見ます。お客様がこう言ったとします。

「最近、問い合わせが減ってきてて、ちょっと焦ってるんです」

返し方中身
✗「問い合わせが減ってきて、焦っていらっしゃるんですね」
⭕「焦ってる……」と一語だけ返して、止める

✗の返しは、相手の言ったことを全部なぞっています。正確ですが、「さっき自分が言ったことを聞き直された」と感じる人が多いと私は見ています。⭕は、いちばん力が入っていた言葉だけを拾い、その先を相手に渡しています。

なお、オウム返しで相手の信頼が上がる、とはここでは書きません。確かめていないからです。私の評価として言えるのは、一語だけ返すほうが、自分が話す量を増やさずに済み、相手が話しやすそうに見える、というところまでです。

原因は、どこを返すかを決めていないこと

わざとらしく聞こえる原因は、話す力の差にはなさそうです。どこを返すかを決めないまま、相手の言葉を語尾まで丸ごと返している。私はこれが一番多いと見ています。腕や性格の話ではなく、やり方を知る機会がなかっただけです。

気の利いた返しができないと、自分は口下手だと思ってしまう

打ち合わせで、お客様の話に「〜なんですね」「〜ということですね」と3回続けて返した。4回目のあたりで、相手の顔が少し曇った気がした。帰り道に「やっぱり自分は話すのが下手だ。気の利いた返しができない」と思う。こう受け取る人は多いのではないか、と私は見ています。

オウム返しについて「共感を示しましょう」「相づちを打ちましょう」と書かれた説明をよく見かけます。やってみるとぎこちない。そのぎこちなさを自分の口下手のせいにして、聞く場面そのものが苦手になっていく。これは仮説ですが、独立して仕事を取る人ほど、この止まり方をしやすいと思います。会社では作る側にいて、お客様の話をどう聞くかを習う機会がなかったからではないか、と見ています。

返す一語の選び方|気持ち・数字・相手が二度言った言葉

どの言葉を返すか。迷ったときは、次の3つの中から選びます。

返す一語を選ぶ3つの基準の図

気持ちの言葉を返す

「困ってる」「焦ってる」「もったいない」「正直しんどい」のように、気持ちが入った言葉です。

「正直、今の業者さんにはもう頼みたくなくて」

ここで返すのは「頼みたくない」です。「今の業者さんに不満があるんですね」と言い換えると、不満かどうかを決めたのはこちらになります。相手が選んだ言葉のまま返すと、そのあとに出てくる理由も相手の言葉で出てきます。

数字・期限・回数を返す

「来月までに」「3回目」「半年前から」のような言葉です。

「リニューアルは3回目なんですよ」

ここは「3回目」だけ返します。過去に2回うまくいかなかった事情があるかもしれません。数字は、相手が話したいことの入口になっていることが多いと感じています。ここで出した数字は、ただの具体例です。

相手が言い直した言葉、二度言った言葉を返す

「安く、というか、ちゃんと元が取れるようにしたい」

返すのは「元が取れるように」です。「安く」と言ってから言い直したので、言い直したあとの言葉のほうに本音があると見ています。ここで「安くしたいんですね」と返すと、言い直す前の言葉を拾ってしまい、話がずれます。

持ち帰り表|返す一語の選び方

フリーのデザイナー、カメラマン、士業、施術者などが、お客様の話を聞く場面を想定した表です。

相手の発言返す一語やりがちなNG返し
「最近、問い合わせが減ってきてて、ちょっと焦ってるんです」(デザイナーへ)焦ってる「問い合わせが減って、焦っていらっしゃるんですね」
「今の業者さんには、正直もう頼みたくなくて」(デザイナーへ)頼みたくない「今の業者さんに不満があるんですね」
「プロフィール写真は、堅い感じは嫌なんです」(カメラマンへ)堅い感じは嫌「カジュアルな雰囲気がご希望なんですね」
「相続のことは、まだ早いかなとも思っていて」(士業へ)まだ早い「ご両親もお元気ですし、急がれていないということですね」
「肩が、半年前からずっと重くて」(施術者へ)半年前から「慢性的な肩こりでお悩みなんですね」

NG返しは、どれも相手の言葉を自分の言い方に直しています。直した言葉は丁寧に聞こえますが、相手が選んだ言葉ではなくなっています。

返さない言葉もある

次の3つは返さなくて大丈夫です。返すと、話が横道にそれます。

  • 前置き(「お忙しいところすみません」「実はなんですけど」など)
  • 世間話(天気、移動のこと、最近の出来事など)
  • 相手が言いよどんだだけの言葉(「えっと」「あの、なんていうか」の続き)

言いよどんだ言葉は、本人もまだ言葉にできていない部分です。そこを拾うと、急かされたように感じる人もいると思います。言葉が固まるまで待つほうが、私はいいと思っています。

言い換えは「まとめ」のときだけ|お客様の言葉を自分の言葉に置き換えない

「オウム返し 言い換え ビジネス」と調べる人もいると思います。私は、言い換えを使う場面を決めています。話の途中ではなく、ひと区切りついたあとだけです。

話の途中は返し、区切りで言い換える流れの図

話の途中で言い換えると、相手の言葉を取ることになる

お客様が「問い合わせが減って」と言ったのに、こちらが「集客の流れが弱いということですね」と返したとします。この瞬間、話がこちらの言葉に置き換わります。お客様は「集客の流れ」という言葉で考えていたわけではないので、そのまま頷くか、少し違和感を持ったまま黙るか、どちらかになりがちだと見ています。

業界の言葉に置き換えると、専門家らしく聞こえます。でも、聞く場面で必要なのは、お客様が自分の言葉で話し続けられることだと思います。

言い換えてよいのは、ひと区切りついたときのまとめだけ

相手が話し終えて、少し間が空いたときがまとめのタイミングです。言い方の型は次の通りです。

「つまり、〜で困っていて、いちばん気になっているのは〜、で合っていますか」

最後は確認で終えます。まとめを断定で終えると、聞いたつもりで話が進んでしまうからです。

まとめで外れても問題ない

まとめたあとに「いや、そうじゃなくて」と返ってくることがあります。外れた、と焦る必要はありません。むしろ、本当の困りごとが出てくる合図だと私は見ています。外れたら、こう聞きます。

「どのあたりが違いましたか」

言い換えの例を3つ

どれも、相手の言葉を一つは残しています。

例1:デザイナーとお客様

  • お客様:「問い合わせが減って焦ってる。前の制作会社には頼みたくない。でも予算は限られてて」
  • まとめ:「つまり、問い合わせが減って焦っていて、いちばん気になっているのは、前の会社に頼まずに、限られた予算の中で進めること、で合っていますか」

例2:士業と相談者

  • 相談者:「相続のことは、どこから手をつけたらいいか分からなくて。親も元気だし、まだ早いかなとも」
  • まとめ:「つまり、どこから手をつけたらいいか分からなくて、いちばん気になっているのは、まだ早いのか、今から動いたほうがいいのか、で合っていますか」

例3:カメラマンとお客様

  • お客様:「プロフィール写真を撮りたいんですけど、堅い感じは嫌で、でも頼りなく見えるのも困る」
  • まとめ:「つまり、堅くはしたくなくて、頼りなくも見えたくない。そのちょうどいいところを探したい、で合っていますか」

まとめは、相手が言ったことを並べ直すだけです。新しい解釈は足しません。

返したあとに黙れない|沈黙を自分の説明で埋めてしまう場面

2〜3秒の間が怖くなる

「焦ってる……」と返したあと、2〜3秒の間ができます。この間が怖くなって、「実は私、前に似た案件で〜」と自分の実績の話を始めてしまう。そうすると、相手は話すのをやめてしまうことが多いと感じています。さっきまで自分の悩みを話していたのに、いつの間にか相手の話を聞く側に回ってしまうからです。

沈黙が怖くて自分の説明で埋め、相手の話を取ってしまう。うまくいった事例を話したくなる気持ちは、お客様の役に立ちたいから出てきます。悪気はありません。私はこの状態を「しゃべりすぎ型」と呼んでいます。

口下手かどうかは関係ない

気の利いた返しができないのは、自分が口下手だからだ、と考える人が多いと思います。ただ、この場面で起きているのは、何を聞けばいいか、返したあとにどうすればいいかを習っていない、ということです。それだけです。

話がうまくなくていい。聞く順番があれば足ります。一語を返す、黙る、短く聞く、最後にまとめる。この順番を知っていれば、口数が少ない人でも聞く場面は成り立ちます。

黙っている間にやることを1つだけ決める

黙るだけだと、間が長く感じます。そこで、やることを1つだけ渡します。

相手の言った一語を、メモに書く。書き終わるまでは口を開かない。

間を作るための手の動きです。メモを取っている姿は、相手には「ちゃんと聞いている」と見えやすいとも思います。書いている間に、相手のほうから続きを話し始めることがよくあります。

オウム返しで終わらせない|返したあとにつなぐ短い質問

返して受けるだけだと、言われたことをそのまま引き受けてしまう

返す・黙る・聞く・まとめの4ステップ図

気をつけたいのは、オウム返しで終わらせてしまうことです。たとえばこういう場面です。

お客様:「予算は抑えたくて」 こちら:「抑えたい、ですよね」

ここで終わると、相手は「分かってもらえた」と感じて、先の話に進みます。こちらは何も聞けていません。そのうえ、聞かれてもいないのに「では、機能を絞ってこのくらいで」と見積を下げてしまう。こうなると、言われたことをそのまま引き受けるだけの聞き方になります。

返したあとに、もう一歩聞く。ここが大事です。

つなぎの質問は3つで足りる

  • 「というと?」
  • 「たとえば?」
  • 「それはいつ頃からですか?」

どれも短いので、話がうまいかどうかは関係ありません。「というと?」は、相手の言葉の中身を広げてもらう質問です。「たとえば?」は、具体的な場面を出してもらう質問です。「いつ頃から?」は、困りごとの始まりを聞く質問です。

会話の例(デザイナーとお客様)

  1. お客様:「最近、問い合わせが減ってきてて、ちょっと焦ってるんです」  私:「焦ってる……」(メモに書いて、黙る)  お客様:「そうなんですよ。ホームページは3年前に作ったきりで」
  2. 私:「というと?」  お客様:「更新のたびに、前の会社から費用を言われて。それで頼みづらくなって、放置してて」
  3. 私:「頼みづらい……」(メモに書いて、黙る)  お客様:「正直、また高いと言われるのが怖くて」
  4. 私:「それはいつ頃からですか?」  お客様:「1年ぐらい前からですね。そこから問い合わせが減った気がします」

最後に、まとめの言い換えで確認します。

「つまり、更新を頼みづらくて放置していて、問い合わせが減って焦っている。いちばん気になっているのは、また高いと言われないこと、で合っていますか」

最初は「問い合わせが減って焦っている」という話でした。ここまで聞くと、本当の困りごとは「更新を頼みづらい関係になっていること」にあるかもしれない、と見えてきます。提案の中身が変わってくる部分です。

仕事の取り方の全体の流れは、フリーランスの営業のしかたにまとめています。

やりがちなNG例と、その場での直し方

毎回「〜なんですね」を付けてしまう

語尾を取って、一語だけにします。同じ語尾が3回続いたら、次は返さずに「というと?」だけにします。同じ形が続くと、機械的な返事に聞こえやすいと感じるからです。

返しながら直してしまう

「減ってきた、じゃなくて止まってる、ですかね」のように、返しながら言葉を直すのは避けます。相手の言葉に手を加えない。直したくなったら、まとめのときに確認として出します。

声の調子を考えていない

私は、続きを聞きたいときは語尾を上げて返し、受け止めたことを伝えたいときは語尾を下げて返しています。これは私の使い分けの説明で、効果を保証するものではありません。

NG→なぜ引っかかるか→直し方

NGなぜ引っかかるか直し方
毎回「〜なんですね」と付ける同じ形が続き、機械的に聞こえる語尾を取って一語だけ。3回続いたら「というと?」に切り替える
相手の言葉を業界の言葉に置き換える話がこちらのものになり、相手が自分の言葉で話しにくくなる途中は相手の言葉のまま返す。置き換えるのはまとめのときだけ
返した直後に自分の実績を話す相手が話すのをやめてしまうことが多いメモに一語を書き、書き終わるまで黙る
返して終わり。次の質問がない言われたことを引き受けるだけになり、見積を下げるなどにつながる「というと?」「たとえば?」の1つを足す
返しながら言葉を直す相手の言い方を訂正されたように感じる人もいる直さず返す。直したいことはまとめで確認する

次の打ち合わせで試すチェックリスト

打ち合わせの前

聞きたいことを3つだけ、メモに書きます。自分の説明は準備しすぎないほうがいいです。準備した説明が多いほど、黙っている間に話し始めたくなります。

打ち合わせが終わったら、5つ確かめる

  • □ 返したのは一語だったか
  • □ 返したあと黙れたか
  • □ 「というと?」を1回は言えたか
  • □ 自分が話した時間が、相手より長くなっていないか
  • □ 最後にまとめて「合っていますか」と確認したか

全部できなくて構いません。できなかった項目が、次に練習するところです。

提案を書くとき

相手が二度言った言葉を、メモに書き出します。次の提案の最初の一文に、その言葉をそのまま使います。相手が自分の言葉で書かれた提案を読むと、「聞いてもらえた」と感じやすいと私は見ています。

今日やることは1つだけ

次の打ち合わせで、「一語だけ返して黙る」を1回やってみてください。1回で十分です。うまくいかなくても、それは口下手だからではありません。やり方を試す機会がまだ少ないだけです。

よくある質問

オウム返しはしつこい・バカにしていると思われませんか?

語尾まで丸ごと返すと引っかかりやすい。返すのは気持ちや数字の一語だけにして、同じ語尾が3回続いたら返すのをやめて『というと?』に切り替える。

オウム返しの言い換え例をビジネス向けに知りたい

話の途中では言い換えない。ひと区切りついたら『つまり〜で、いちばん気になっているのは〜、で合っていますか』とまとめ、相手の言葉を一つ残して確認で終える。

お客様や目上の人にオウム返しをするのは失礼ですか?

一語を返すこと自体が失礼になるとは言い切れない。気になるなら『〜というのは、たとえば?』と質問の形にすると丁寧に聞こえる。相手の言葉を勝手に直さないことのほうが大事。

メールやチャットでもオウム返しは使えますか?

文字では一語だけ返すとそっけなく見えるので、返信の最初に相手の言葉を引いて『〜とのこと、承知しました。たとえば〜ですか』と質問につなげる形にする。

口下手でもヒアリングはできますか?

できる。必要なのは話のうまさではなく聞く順番。一語を返す、黙る、『というと?』と聞く、最後にまとめて確認する、の4つで足りる。

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