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このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
成約率を上げる方法は、話し方を直す前に「どこで止まったか」を数えること
決まった案件は「たまたま運がよかった」で片づける。決まらなかった案件は「自分の話が下手だから」で片づける。ひとりで営業していると、この二つが交互に来ます。どちらも理由が手元に残らないので、次の商談もまた白紙から組み立てることになります。
決まった理由を残さず、次もいちから組み立てる。私はこれを「毎回いちから型」と呼んでいます。「決まったのはたまたまで、自分には決め方なんてない」と受け取っている人が多いように見えます(これは私の仮説です)。決まった理由が記録に残っていなければ、そう感じるのは自然なことです。
成約率を上げるには、まず「どの段階で止まっているか」を数えます。そのうえで、いちばん手前で止まっているところを1つだけ直します。話術の練習は、そのあとでかまいません。
決まった1件の理由が言えないと、次に同じことをやりにくい
先月決まった案件を思い出してください。金額をいつ出したか、覚えているでしょうか。会った当日か、翌日のメールか、1週間後か。返事の日は、自分から決めたのか、相手に任せたのか。
ここがすぐ出てこないなら、その案件は「決まった」という結果だけが残っていて、順番が残っていません。順番が残っていないと、次の商談で同じことを意識してやるのは難しくなります。
決まらないのは話がうまくないせいだ、と決める前に確かめること
決まらなかったとき、真っ先に疑われるのは話し方です。ただ、止まった場所が見積の前なのか後なのかで、手当ては変わります。見積の前で止まっているなら、聞く順番の問題かもしれません。見積の後で止まっているなら、出す日や返事の日の決め方の問題かもしれません。話し方を磨いても、止まっている場所が別なら数は動きにくいです。
性格を変える話ではなく、順番を残す話です
この記事は、口がうまくなる話でも、押しが強くなる話でもありません。性格はそのままでいいです。残すのは、会ってから決まるまでに何をどの順で起こしたか、その順番だけです。
ひとりで営業する人の成約率は「何を分母にするか」で見え方が変わる
成約率は、決まった件数を分母で割った数字です。分母に何を置くかで、読み取れることが変わります。

次の数字は、説明のための仮の例です。実際の数字ではありません。
10件会って、そのうち4件で見積を出し、1件が決まったとします。
| 分母 | 計算 | 見え方 |
|---|---|---|
| 会った件数 | 1÷10 | 10件に1件 |
| 見積を出した件数 | 1÷4 | 4件に1件 |
前者が低いなら、会っても見積に進めていない可能性があります。後者が低いなら、見積を出したあとで止まっている可能性があります。同じ「1件決まった」でも、手を入れる場所が違ってきます。
業界の平均や、他人の成約率との比較は、この記事では扱いません。業種も売り方も違う人の数字と並べても、直す場所は見えてこないからです。比べる相手は、先月の自分にします。
「会った件数」を分母にしたときに見えること
会った件数を分母にすると、商談全体の入り口から出口までの通り方が見えます。この数字が低いときは、見積を出す手前、つまり話を聞く段階や、見積を出すかどうかを決める段階に原因がある可能性があります。
「見積を出した件数」を分母にしたときに見えること
見積を出した件数を分母にすると、出したあとの動きだけが見えます。返事の日を決めたか、期日が過ぎたら連絡したか。ここが低いときは、見積の中身より、出したあとの動き方を見直す価値があります。
件数が少ないうちは割合より「どこで止まったか」の数を見る
5件のうち1件の差で、割合は2割も動きます。件数が少ないうちは、割合を見て一喜一憂しても判断材料になりません。割合より「どの区切りで止まったか」が何件あるかを数えるほうが役に立ちます。
数えておくのは、会ってから決まるまでの4つの区切り
数える単位は、4つの区切りです。

- ①困りごとを聞けた
- ②見積・提案を出した
- ③返事の期日を決めた
- ④決まった
商談ごとに、各区切りを「進んだ」か「止まった」かで記録します。「止まった区切り」とは、順に見て最初に進めなかった区切りのことです。④で止まるのは、③まで進んだのに決まらなかった案件です。
よくある止まり方も具体で見ておきます。
- ①で止まる:自分の説明から始めて、相手の困りごとを聞かないまま終わる
- ②で止まる:会ってから見積を出すまでに日が空く
- ③で止まる:「検討します」と言われて、返事の日を決めないまま別れる
- ④で止まる:期日が過ぎても、こちらから連絡しない
やりがちなNG例は、「決まった」「決まらなかった」の2択だけを記録することです。これでは、どこで止まったかが分かりません。次に何を直すかも決まりません。
①困りごとを聞けたか
基準は、相手の言葉で一文メモできたかどうかです。「集客に困っている」ではなく、「チラシを出しているが、どこから来た人か分からない」のように、相手が口にした言い方で書けるか。書けなければ、聞けていないと数えます。
②③見積を出したか、返事の日を決めたか
この二つは、記録を見て確かめる項目です。見積を出した日は、会った日から何日目か。返事の期日は、会っている場で決めたか。多いか少ないかを決めつけず、自分の記録で確かめてください。
④決まったか。決まらなかったら、どの区切りで止まったかを書く
決まらなかった案件でも、③まで決められていたのか、①で終わっていたのかで、意味がまるで違います。「決まらなかった」で閉じず、どこで止まったかを必ず書きます。
「その場で決まらない」ときに起きていることを分けて見る
会ったその場で決まらないことは、よくあります。このとき「決まらなかった」とひとまとめにすると、手当てが見えません。理由を3つに分けて考えます。

- (a) 相手が、家族や共同経営者に相談してから決めたい
- (b) ほかと比べたい
- (c) まだ困りごとがはっきりしていない
どの場合も、その場で聞く一言を用意しておくと、次の約束まで持っていけます。
やりがちなNG例は、決まらなかった空気が気まずくて、次の約束をせずに「ご検討ください」で帰ることです。これをやると、③の返事の期日が空欄のまま、案件が自然に消えていきます。
決める人がほかにいるとき
聞く言葉の例です。
「どなたかとご相談されますか」
相談する相手がいるなら、その人が何を気にしそうかも聞けます。「その方は、どこを一番見られそうですか」。そのうえで「いつごろ、お話しされそうですか」と日を決めます。
比べたいと言われたとき
聞く言葉の例です。
「比べるときに、何を一番見られますか」
金額なのか、実績なのか、対応の早さなのか。これが分かると、見積に何を書き足すかが決まります。そのうえで「いつごろまでにお返事をいただけそうですか」と聞きます。
困りごとがまだはっきりしていないとき
この場合は、無理に決めに行かないほうがいいです。①が済んでいない段階で見積を出しても、相手は何と比べて判断すればいいのか分かりません。「もう少し状況を伺いたいので、来週もう一度お時間をいただけますか」と、次に会う日を決めて別れます。決めるのは契約ではなく、次に会う日です。
決まった1件から、次も使える順番を取り出す
この記事でいちばん大事にしたいのはここです。決まらなかった案件の反省より先に、決まった案件の振り返りをします。
決まった理由は、時間がたつほど「たまたま」に変わって消えていく、と私は見ています。決まった日は覚えていても、翌週には何を話したか思い出せなくなる。これがNG例です。喜んで終わりにすると、せっかくの順番が手元に残りません。
決まった案件には、3つだけ質問をします。
- 最初に何を聞いたか
- 金額をいつ、どう出したか
- 返事の日をどう決めたか
決まった日のうちに3つの質問に答えておく
決まった日の夜に、3つの質問に一言ずつ答えます。長く書く必要はありません。「最初に、今の集客で一番困っていることを聞いた」「金額は会った翌日にメールで出した」「返事は来週水曜と、その場で決めた」。これだけで、順番が残ります。
2件・3件と並べると、同じところが出てくる
決まった案件が2件、3件と増えたら、答えを並べて見ます。毎回、最初に同じことを聞いているかもしれません。毎回、見積を翌日に出しているかもしれません。同じところが、その人の「決め方」の芯になります。自分には決め方なんてない、というのは、並べて見たことがないだけかもしれません。
取り出した順番は、次の商談の直前に1分だけ見返す
取り出した順番は、A4一枚か、スマホのメモ1つにまとめます。次の商談の直前に1分だけ見返します。覚えようとしなくていいです。見返すだけで、聞き忘れや期日の決め忘れを減らしやすくなります。
1案件1行で書く記録表(そのまま写して使える)
持ち帰りやすい形にしておきます。次の表をそのままメモやスプレッドシートに写してください。
| 日付 | どこで知り合ったか | 聞けた困りごと(相手の言葉で) | 見積を出した日 | 返事の期日 | 結果 | 止まった区切り(①〜④/決まったら「なし」) | 理由の一言 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 10/3 | 知人の紹介 | 「チラシの反応が読めない」 | 10/5 | 10/12 | 決まった | なし | 見積を出す日と返事の日を、会った場で決めた |
| 10/8 | 展示会で名刺交換 | 「今の業者は高い」 | 10/15 | 未定 | 止まった | ③ | 「検討します」で返事の日を聞かなかった |
※上の2行は、書き方を示すための架空の例です。
書くタイミングは、商談の当日です。1か月分をまとめて思い出して書くと、理由の一言が「忙しかった」のような、あとから作った言葉になります。
もう一つのNG例は、結果の列だけを埋めることです。これでは「決まった・決まらなかった」の2択の記録に戻ります。
列ごとの書き方
- 聞けた困りごと:相手が口にした言葉をそのまま。自分の言い換えにしない
- 見積を出した日/返事の期日:日付で書く。決めていなければ「未定」と書く。その「未定」が、③で止まった印になります
- 止まった区切り:①〜④のうち、最初に進めなかったところ。決まった案件は「なし」
- 理由の一言:「何がよかったか」「何が抜けたか」を一言で
5件たまったら見るところ
5件たまったら、「止まった区切り」の列だけを縦に見ます。①が多いのか、③が多いのか。件数が少ないので割合は見ず、数だけ見ます。
続かないときは列を減らしていい
8列は多いと感じたら、減らしてかまいません。最低限は「止まった区切り」と「理由の一言」の2列です。続かない完璧な表より、続く2列のほうが役に立ちます。
数字が出たら、いちばん手前で止まっているところを1つだけ直す
直す順番は、手前からです。前の区切りで止まっていると、後ろを直しても数は増えにくくなります。たとえば①で止まっている人が、返事の期日の決め方をいくら上手にしても、見積を出す案件そのものが増えないからです。同時に全部は直しません。
- ①で止まっている:聞く順番を決める
- ②③で止まっている:見積を早く出すことと、返事の期日を決めることに絞る
- ④で止まっている:期日が過ぎたときの連絡の仕方(いつ、何と送るか)を決めておく
営業全体の流れから見直したいときは、ひとりで営業する人の営業の流れ全体も参考になります。
見積の前で止まっているとき
話を聞く順番を決めます。最初に聞くことを1つだけ決めておきます。たとえば「今、一番困っていることは何ですか」。相手の言葉で一文メモできるところまでを、この商談の目標にします。
見積のあとで止まっているとき
見積を出す日と返事の日を、会っている場で決めます。「明日の夕方までにメールでお送りします。ご覧になって、来週水曜までにお返事をいただけますか」。出す日と返事の日が、日付で手元に残ります。
1つ直したら、次の5件でもう一度数える
直したら、次の5件で同じ列をもう一度数えます。止まる場所が動いていれば、直した場所は当たっていたことになります。動いていなければ、直し方か、直す場所を見直します。
今日やること:直近の5件を思い出して表に書く
今日は、直近で会った5件を思い出して、表の「止まった区切り」と「理由の一言」だけを埋めます。15分程度でできる量です。
思い出せる範囲でいい。空欄も記録になる
思い出せない欄は空けてかまいません。空いていること自体が、「その部分は残っていない」という発見になります。残っていないなら、次の商談からそこだけ書けばいいです。
決まった案件が1件でもあれば、先にそれの3つの質問に答える
決まった案件が1件でもあれば、先にそれの3つの質問に答えます。最初に何を聞いたか、金額をいつどう出したか、返事の日をどう決めたか。決まらなかった案件の整理は、そのあとで十分です。
次の商談の前に、表を1分だけ見返す
次の商談の当日から、1行ずつ足していきます。商談の前に、表を1分だけ見返します。数えるところから始めれば、話し方を直すかどうかも、数字を見てから決められます。
個別の状況で迷うときは、取引や契約の内容を含め、必要に応じて専門家に相談してください。
よくある質問
成約率はどうやって計算すればいいですか?
決まった件数÷分母で計算します。ひとりで営業するなら、分母を「会った件数」と「見積を出した件数」の2つで見ると、見積の前と後のどちらで止まっているかが分かります。
成約率の平均はどれくらいですか?
業種や売り方で大きく違い、この記事では根拠のある数字を確認していないため載せていません。比べる相手は、先月の自分にします。
件数が少なくても成約率を見る意味はありますか?
5件程度だと割合は大きく揺れます。少ないうちは割合より、どの区切りで止まったかの数を見るほうが役に立ちます。
その場で決まらないお客さんには、どう声をかければいいですか?
決まらない理由を、相談相手がいる・比べたい・困りごとがまだはっきりしない、の3つに分けて聞きます。どの場合も、返事の日か次に会う日をその場で決めて別れます。
話すのが苦手でも成約率は上げられますか?
止まっている場所が話し方とは限りません。見積を出すのが遅い、返事の日を決めていないなど、順番で直せるところから手を付けられます。
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