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このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
打ち合わせのメモは全部を書き写さない|その場で書くのは4つだけ
メモが追いつかない原因は、書こうとしている量かもしれない
打ち合わせの最中、メモが追いつかない。帰ってから読み返しても、どんな話だったのか思い出せない。そういう経験から「自分は飲み込みが遅いのかもしれない」と受け取ってしまう人もいるのではないでしょうか。
私は、頭の回転よりも、相手の話を全部書き写そうとしていることのほうが大きいと見ています(私の見立てです)。手が書くことで埋まると、次に何を聞くかを考える余裕がなくなります。相手が話し終えるまで、ペンを走らせるだけで精一杯になる。聞いているつもりで、実際は写しているだけ、という状態です。
言われたことを順番に写すのが「聞くこと」になっている
相手の話を上から順に書き写し、写せたら聞けたことにしている。思い当たる人は少なくないと思います。私はこれを「言われたまま型」と呼んでいます。言われたことをそのまま受けるのが「聞くこと」だと思っている状態のことです。
これは人柄の話ではなく、いまのやり方の話です。何を聞いて、何を書き、何を書かないか。その順番を習う機会がなかっただけで、やり方を変えれば同じ人でもメモの中身は変わると考えています。
聞きながら書くことと、あとで書くことの早見表
先に結論を出します。その場で書くのは4つ。それ以外は、あとで書きます。

| 聞きながら書く(4つ) | あとで書く(3つ) |
|---|---|
| ①数字と日付 | ①自分の考え・提案の方向 |
| ②人の名前・会社名・商品名 | ②話の整理と要約 |
| ③困りごとを話したときの、相手の言葉そのまま | ③次にやることの1行まとめ(期限の日付は、聞きながら書いた数字から) |
| ④聞ききれなかったところの「?」 |
左の4つは、あとから思い出そうとしても思い出しにくいものです。右の3つは、その場で書く必要がありません。むしろ、その場で書くと相手の話を聞く時間が減ります。この記事では、この2列を順に説明します。
打ち合わせの前に、メモの枠を作っておく
白紙のまま行くと、上から順に全部書くことになる
ノートやパソコンが白紙のまま始めると、話の順に書いていくしかありません。雑談、会社の歴史、業界の話、そして肝心の困りごと。すべてが同じ濃さで並びます。
あとで読み返すと、大事な数字が雑談のあいだに埋もれて見つかりません。探すだけで時間がかかり、結局は記憶に頼ることになります。
見出しを5つ先に書いておく
対策は、打ち合わせの前に見出しを書いておくことです。私は次の5つを使っています。

- いま困っていること
- いつまでに
- 予算の目安
- 誰と相談して決めるか
- 前に試したこと
紙のノートなら、左端に縦に並べて、右側を空けておきます。パソコンなら、この5つの見出しだけを入れたひな形を作っておき、打ち合わせごとに複製します。
相手が話した内容は、この5つのどれかに入れます。入らない話(雑談など)は、書かなくて構いません。「どこに書くか」を決める作業が、そのまま「何を聞いたか」の整理になります。
埋まっていない欄が、その場で聞くこと
打ち合わせの終わりが近づいたら、枠を見ます。空いている欄が、まだ聞けていないことです。
たとえば「いつまでに」が空なら、こう聞きます。
「最後に1点だけ。いつ頃までに形にしたいというご希望はありますか」
「予算の目安」が空なら、こうです。
「差し支えなければ、ご予算の感覚だけ教えていただけますか。範囲が分かれば、それに合わせて内容を考えます」
さらに、会う前に「これだけは聞く」を3つまで書いておきます。たとえば相手のホームページを開いて、事業内容、最近の更新、気になった点を見ておく。そこから「サービスの新しいページを拝見しました。これは、どういうお客様向けのものですか」といった質問を作っておきます。3つ以上は書かない。多いと、質問を消化することが目的になってしまいます。
聞きながら書くこと|数字・名前・相手の言葉・「?」
数字と日付は、聞き返してでも正確に書く
数字と日付は、あとから推測で埋めるとずれやすいものです。曖昧に聞こえたら、その場で確かめます。
- 「月末くらいで」→「月末というのは、何日にしておけばよいですか」
- 「だいたい◯万円くらい」→ その言い方のまま書き、横に「要確認」の印を付ける
- 「来週あたり」→「来週のどの日だと都合がよいですか」
聞き返すのは、失礼というより、間違えないための確認だと考えています。相手も、あとで食い違うよりその場で合わせたほうが楽なのではないでしょうか。
名前も同じです。会社名、担当者名、商品名は、字を確かめます。「どの字を書きますか」と聞くのも、きちんと聞いている印象になると思います。
困りごとは自分の言葉に書き換えず、相手の言葉のまま書く
相手が困りごとを話したときの言葉は、そのまま書きます。
NG例を出します。相手が「問い合わせは来るんですけど、なかなか決まらなくて」と言ったのを、「集客の課題」と書き換えてしまう。
書き換えた時点で、相手の言葉が消えます。しかも、問い合わせは来ているのだから、集客は課題ではないのかもしれません。自分の言葉に直すと、相手が言っていないことが混ざります。
提案のときに、相手の言葉のまま使えるとどうなるか。「問い合わせは来るのに決まらない、というお話でしたので、決まらない理由のほうから考えました」と始められます。相手に「ちゃんと聞いてくれた」と感じてもらいやすくなります。これは話術ではなく、メモに残した言葉を返しているだけです。
分からなかったところに「?」を付けておく
言われたまま型から抜ける一番小さな行動は、ここです。全部を写すのをやめて、分からなかったところに「?」を付けます。

専門用語、社内の言い方、前提の分からない話、数字の根拠。聞いた瞬間に引っかかったところに「?」だけ書いて、話は止めずに先へ進みます。「?」を見つけることを、聞くことにするのです。
そして打ち合わせの最後に、「?」の付いたところだけ聞きます。
「先ほどの◯◯の件、もう少し詳しく伺ってもいいですか」
「最初に出た△△という言葉は、御社ではどういう意味で使われていますか」
途中で何度も止めるより、最後にまとめて聞くほうが、相手の話のリズムを崩しにくいと考えています。その場で聞くべき数字や日付は、先ほどのとおり聞き返します。
パソコンでメモを取るときの順番と気をつけること
最初に一言ことわってから開く
パソコンでメモを取るなら、最初に一言ことわります。
「お話を忘れないように、パソコンでメモを取りながら伺ってもいいですか」
対面でいきなりパソコンを開くと、画面が相手とのあいだの壁になります。キーを打つ音も、気になる人は気になります。一言あれば、気にする相手は少ないと考えています(断定はしません)。断られたら、紙に切り替えます。
打つのは数字と短い言葉だけにする
NG例は、議事録のように文章で打ち込むことです。相手が大事な話をしているのに、自分は画面を見ている。顔が見えないまま話すのは、相手にとって話しにくいものです。
打つのは、数字と短い言葉だけにします。相手が困りごとを話し始めたら、手を止めて顔を見る。話が一段落したところで、要点を1行だけ打つ。これを守ると、タイピングの量が減り、顔を見る時間が増えます。
最後に画面を見せて、合っているか確かめる
パソコンの強みは、最後に画面を見せられることです。打ち合わせの終わりに画面を相手に向けて、読み上げます。
「今日のお話を、こう受け取りましたが、合っていますか」
食い違いがあれば、その場で直せます。手書きのノートでは、これが少しやりにくい。
手書きとパソコンのどちらが優れているか、私は断定しません。違いは、書く量と、相手との距離の取り方です。手書きは書ける量が限られるので、自然に絞れます。パソコンは書けてしまうので、絞る意識が必要です。その代わり、画面を見せて確認に使えます。自分がやりやすいほうでよいと思います。
打ち合わせのあとで書くこと|その日のうちに3つ
記憶があるうちに、帰り道で書き足す
私は、その日のうちに書き足すようにしています(私のやり方であって、研究に基づく数字ではありません)。帰りの電車や、駐車場に戻った車の中で十分です。
メモの「?」と、空いた欄を見ながら、覚えていることを足します。会話の雰囲気、相手が笑った話題、言いよどんだところ。その場では書かなかったことが、まだ頭に残っているうちに書きます。日が空くほど、思い出しにくくなると感じています。
相手が言ったことと、自分が思ったことを分けて書く
メモを2つの欄に分けます。左が「相手が言ったこと」、右が「自分が思ったこと」です。紙なら線を引く、パソコンなら色を変える、でも構いません。

混ぜるとどうなるか。こんな場面を想定してみます。相手は「もう少し安く」とは一言も言っていません。ただ、見積の話になったときに少し黙った。自分の中の不安が、「安くしないと決まらないかも」という考えに変わり、メモには「予算が厳しい」と書いてしまう。次に作る提案は、値段を下げた案になります。
相手が言ったのは「検討します」だけだった、というのが実際のところかもしれません。分けて書いていれば、「相手の言葉」の欄に予算の話がないことに気づけます。気づけば、お礼の連絡で聞けます。
次にやることと期限を1行にまとめ、お礼の連絡に入れる
最後に、次にやることと期限を1行にまとめ、お礼の連絡に入れます。文例です。
「本日はありがとうございました。伺った内容を3点にまとめました。 ①今は問い合わせが来ても、決まる前に連絡が途切れること ②◯月末までに、新しい案内を整えたいこと ③まずは小さく試して、様子を見たいこと 認識が違うところがあれば、お知らせください。◯日までにお見積をお送りします」
メモをまとめる作業が、そのまま次の連絡になります。しかも、相手の言葉を使って書けば、それだけで「ちゃんと聞いていた」と伝わりやすくなります。
メモは取ったのに提案がずれるときの3つの原因
メモを取っても、提案がずれることがあります。ありがちな3つを、起きることと、その場でできたことに分けて並べます。
| 失敗 | 起きること | その場でできたこと |
|---|---|---|
| 相手の言葉を自分の言葉に書き換えた | 提案を見た相手が、自分の話だと感じにくい | 相手の言葉のまま書く |
| 「?」を残したまま帰った | 分からないところを想像で埋めて、提案がずれる | 最後に「?」の件だけ聞く |
| メモを見返さずに見積や提案を作った | 記憶に頼るので、相手が言っていないことが入る | 作る前に相手の言葉に線を引く |
相手の言葉を、自分の言葉に書き換えていた
例です。相手は「ホームページを見た人が、結局どこに連絡すればいいか分からないみたいで」と言った。これを「導線の課題」と書いた。提案の冒頭に「導線を改善します」と書くと、相手には自分の話に聞こえにくくなります。
直し方は、相手の言葉のまま書くことです。提案の1行目は「連絡先が分かりにくいというお話でしたので」から始められます。
「?」を残したまま帰ってきた
その場で聞けなかったら、お礼の連絡で聞いてよいと思います。
「1点だけ確認させてください。◯◯は△△という理解で合っていますか」
聞き直すのは、手間をかけさせることではなく、ずれた提案を出さないためです。ずれた提案を出して作り直しになるほうが、相手にとっても手間です。
メモを見返さずに見積や提案を作った
手順はこうです。提案を作る前に、メモを開く。相手の言葉に線を引く。その言葉を、提案の最初の1行に使う。
これだけで、提案が相手の話から始まります。自分の商品の説明から入る提案との違いは、ここで決まると考えています。
持ち帰り用|打ち合わせメモのチェックリスト
打ち合わせの前(3項目)
- □ 見出し5つを書いた
- □ 聞きたいことを3つまで書いた
- □ パソコンなら、最初の一言を決めた
打ち合わせ中(4項目)
- □ 数字と日付を聞き返して書いた
- □ 困りごとを、相手の言葉のまま書いた
- □ 分からないところに「?」を付けた
- □ 最後に「?」と空いた欄を聞いた
打ち合わせのあと(3項目)
- □ その日のうちに書き足した
- □ 相手の話と自分の考えを分けた
- □ 次にやることと期限を、お礼の連絡に入れた
メモの取り方は、聞く技術の一部です。聞く技術は、仕事の取り方全体のなかの一部でもあります。打ち合わせの前後の動きを含めて全体を見たいときは、フリーランスの営業の進め方もあわせて読んでみてください。
なお、録音や個人情報の扱いなど、法律が関わる点で迷う場合は、個別に専門家へ相談してください。
よくある質問
打ち合わせ中にメモを取るのは失礼ですか?
最初に「忘れないようにメモを取りながら伺ってもいいですか」と一言ことわれば、気にする相手は少ないと考えています(断定はしません)。相手が大事な話をしているときは、手を止めて顔を見るようにします。
打ち合わせのメモはパソコンと手書き、どちらがいいですか?
どちらでもよいと思います。どちらが優れているかは断定しません。パソコンは文章で打ち込みすぎて画面ばかり見がちなので、打つのは数字と短い言葉に絞り、最後に画面を見せて確認に使うと活かせます。
話が速くてメモが追いつかないときはどうすればいいですか?
全部を書こうとしないことです。数字と日付・名前・相手の言葉・「?」の4つだけに絞ります。数字は「いまの金額をもう一度いいですか」と聞き返して構いません。
打ち合わせを録音してもいいですか?
相手に断ってからにします。断られたらメモだけにします。録音する場合でも、相手の言葉と「?」はその場で書いておくと、あとで聞き直す時間が省けます。録音の扱いで迷う場合は、個別に専門家へ相談してください。
打ち合わせメモはいつまでにまとめればいいですか?
目安はその日のうちです(私の実務での提案です)。相手の話と自分の考えを分けて書き、次にやることと期限をお礼の連絡に入れて送ります。
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