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このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか

初回の打ち合わせ資料は数枚でいい。厚くしたくなるのは、腕を疑われたくないから

打ち合わせの前の晩、資料を開いて「これで足りるだろうか」と手が止まる。薄い資料を出したら、仕事ができない人だと思われそうな気がする。そう感じて資料を足していく人もいると思います。

この記事では、初回の打ち合わせに持っていく資料を数枚にしぼる作り方を、順番と言い方まで含めて書きます。私の知るかぎり、枚数や順番に公的な基準はありません。ここに書くのは、私の実務経験にもとづく見解です。

前の晩に実績のページを足し続けてしまう

たとえば、こんな前の晩です。

資料の1枚目は自己紹介。次に経歴と資格。そのあとに過去の作品や取引の例を並べる。「このくらいの規模の仕事もやりました」の例を足し、「こういう業種の仕事もやりました」の例も足す。気づくと20枚近くになっている。

当日は1枚目から順に説明していきます。相手は「すごいですね」とうなずいてくれます。ところが、気づけば予定の時間の大半が自分の説明で終わっている。相手が何に困っているのかは、ほとんど聞けていない。帰り道に、次の話がどう進むのか自分でも見えなくなっている。

これがNG例です。資料の量は十分なのに、相手の話が1行も入っていません。

資料に「自分を分かってもらう」役を背負わせている

厚くしたくなる理由は、腕や経験が足りないことにあるとは限りません。資料に「自分がどんな人間かを分かってもらう」という役を、全部任せているところにあります。

不安から資料が厚くなる悪循環の因果図

資料が薄いと腕がないと思われる気がする。こう感じている人は多いと思います(これは仮説です)。その気持ちが、実績のページを一枚、また一枚と足していく動きになります。

分かってもらおうとして実績や情報を足し続けると、読む人が自分を重ねる場面がなくなります。相手は「すごい人だな」とは思っても、「この人なら自分の困りごとを分かってくれそうだ」とは思いにくい。私はそう見ていて、この状態を『実績並べ型』と呼んでいます。

ここから抜ける方法は、実績を減らして、そのぶん相手の状況を書くことです。次の節で、その数枚の組み方を書きます。

私の場合の目安は3〜5枚

初回の資料は何枚が正しい、という決まりはありません。私の場合の目安は3〜5枚です。厚みで勝負する場ではないので、このくらいにしておくと、話す時間が資料に食われません。

先に、次の2つを言っておきます。

  • 詰め込むほど、読む人は自分を重ねにくくなる(私の見方です)
  • 薄い資料は、手を抜いた証拠にはならない

打ち合わせの前後を含めた全体の流れは、仕事の取り方の全体像にまとめています。資料は、その中の一場面です。

初回に持っていく数枚の中身と順番

まず、全体を表にします。持ち帰って、手元の資料と見比べてください。

初回資料の3つの柱を順に並べた流れ図

何枚目載せるもの載せないものねらい
1枚目相手の今の状況・確かめたいこと自分の経歴相手に「そうそう」と言ってもらう
2〜3枚目似た相談でやったことを1件実績の一覧・取引先の名前の羅列相手に自分の状況と重ねてもらう
最後の1枚聞きたいこと3〜5問・次に決めること・次回の候補日全プランの料金表次の約束までその場で決める

1枚目は相手の状況

下調べで分かったことを3行ほどにまとめます。見るのは、相手のホームページ、SNS、紹介してくれた人から聞いた話です。

書き方の例です。

  • 最近、新しい店舗の準備を進めていると聞いています
  • ホームページでは、サービス内容より創業の経緯が先に出ています
  • 紹介してくれた方から、問い合わせの数に波があると聞きました

そして最後に「ここまでで、合っていますか?」と添えます。確かめられる形にしておくと、相手は間違いを直したり、補足したりしてくれます。それがそのまま、最初の会話になります。

自己紹介を1枚目に置かないのがポイントです。相手が「この話をしていいのか」を決める前に自己紹介を出すと、重く受け取られることがあると私は感じています。

2〜3枚目は似た相談でやったことを1件だけ

実績は一覧にせず、1件にしぼります。書く順番は決まっています。

実績1件を書く4つの順番の手順図

  1. どんな状態の人が
  2. 何に困っていて
  3. 何をして
  4. どうなったか

この順だと、相手は自分の状況と重ねやすくなります。「うちも同じだ」と思えば、続きを聞きたくなります。

ここで大事なのは、ない数字は書かないことです。「売上が何倍になりました」のように、はっきり測っていない数字を足すと、あとで聞かれたときに答えられなくなります。

実績が少ないときは、仕事の進め方を書けば足ります。たとえば「最初の1週間で何を聞き、何を決め、いつ形を見せるか」です。相手が知りたいのは、一緒に進めたらどうなるかの見通しです。

最後の1枚は聞きたいことと次の段取り

聞きたいことを3〜5問書きます。そのあとに、次に何を決めるか、次回いつ会うかの候補を書きます。

聞きたいことの例です。

  • 今、一番困っているのはどの場面ですか?
  • これまでに試したことはありますか?
  • 決まっていれば、いつまでに形にしたいですか?

次の段取りの例は「今日の話をもとに、来週のどこかでもう一度お会いして、具体的な進め方をお見せする形でどうでしょうか」です。次の約束を打ち合わせの場で決めておくと、そのあとの連絡が止まりにくくなると私は感じています。

初回の資料に載せないほうがいいもの

実績の一覧と取引先の名前の羅列

数が多いほど、相手は自分ごととして読みにくくなると私は考えています。前の節で書いた『実績並べ型』の状態です。一覧は、相手が「この人にどんな実績があるのか」と聞いてきたときに、口で答えるか、あとで送れば足ります。

また、名前を出す許可を取っていない取引先は載せません。相手から見て、自分の会社も同じように別の場所で名前を出されるのでは、と不安にさせてしまうこともあります。

すべてのプランを並べた料金表

初回に全部の値段を見せると、中身より値段の比べっこになりやすいと、私は感じています。

私のやり方は、初回には料金表を載せず、聞かれたら幅で答え、話を聞いてから見積を出す、というものです。たとえば「内容によりますが、この範囲に収まることが多いです。お話を聞いたうえで、正式にお出しします」と答えます。

これは私のやり方で、商売によって合う進め方は違います。見積の出し方を一緒に決めたい相手なら、その場で金額を見せたほうが話が早いこともあります。

自己紹介だけで2枚以上

経歴、資格、仕事への思い。これで2〜3枚使ってしまうのがNG例です。

相手が知りたいのは、自分の困りごとを分かってくれるかどうかです。経歴の長さは、その答えにはなりません。

自己紹介は、口で30秒(目安)にします。紙では1行にとどめます。たとえば「飲食店向けの写真とホームページを作っています」くらいで十分です。

資料は「説明する紙」ではなく「聞くための紙」にする

商品の説明から始めると、相手は聞くだけになる

説明する資料と聞くための資料の比較図

NG例です。1枚目からサービス内容を読み上げる。相手は一枚ずつうなずく。最後に「何かご質問はありますか?」と聞くと、「大丈夫です、検討します」と返ってくる。

この場では、相手の話が1回も出ていません。何をどの順で聞くかを決めていないと、説明で場が埋まります。説明は、聞いたあとにしても遅くありません。

聞くことを紙に書いておけば、話がうまくなくても聞ける

質問を資料に書いて、相手にも見える形にしておきます。そうすると、その場で言葉を探さなくても、書いてある順に聞けます。相手も「これから何を聞かれるのか」が分かるので、構えずに答えやすくなります。

口下手でも、沈黙が怖くても構いません。性格はそのままでいい。必要なのは、話のうまさより、聞く順番を紙に出しておくことです。

書き込める余白を残す

各ページの下3分の1は空けておきます。そこに、相手の言葉をその場で書き込みます。

相手が使った言葉をそのまま書き取ると、「ちゃんと聞いてくれている」と感じてもらいやすくなります。書き込んだ紙はそのまま、次に出す資料の下書きになります。

前の日までにやる作り方の手順

手順1 下調べは15〜30分(目安)

見るところを3つにしぼります。

  • 相手のホームページの「お知らせ」
  • SNSのここ数か月の投稿
  • 紹介してくれた人から聞いた話

分かったことと分からないことに分けて、メモします。分からないことは、そのまま「聞きたいこと」の候補になります。

手順2 見出しは相手が使っている言葉で書く

自分の業界の言葉ではなく、相手のホームページや会話に出てきた言葉を使います。

例:「ブランディング支援」と書くかわりに、「新しいお客さんに、店の良さが伝わっていない件」と書く。

相手の言葉で書いてあれば、「この人は話を聞いてくれている」という印象が伝わりやすくなります。

手順3 紙か画面かを決めて、前の日に1回通して見る

対面なので、紙なら人数分に1部足して持っていきます。画面なら、相手にも見える向きで出せるかを確かめます。

通して見たときに、読み上げないと伝わらないページがあれば削ります。読み上げが必要なページは、紙が相手に向けて働いていない証拠です。

当日の使い方:資料を読み上げない

最初の5分(目安)は資料を開かない

あいさつと、相手の近況を聞くところから入ります。資料は、1枚目の「確かめたいこと」を聞く場面で、はじめて出します。

最初から資料を広げると、「資料の説明をする会」になってしまいます。

相手の話が資料とずれたら、資料のほうを置く

NG例です。用意した順番を守ろうとして、相手の話をさえぎる。「そこは後ほど出てきますので」と言って、次のページに進む。

ずれた話には、相手の本音が出ていることが多いと私は感じています。そういうときは資料を置いて、余白にメモを取り、そのまま話を聞きます。順番は、あとで戻せば足ります。

厚い資料は打ち合わせのあとで送る

聞いた話を反映したまとめを、翌日まで(目安)に送ります。初回は数枚、2回目に相手の言葉で作った資料を出す、という順番です。

厚い資料は、聞いたあとに作るほうが効率がいいと私は考えています。何を載せればいいか、相手がもう教えてくれているからです。

前の日に見直すチェックリストと、今日やること

持ち帰り用チェックリスト

  • ☐ 1枚目が自分の紹介になっていないか
  • ☐ 1枚目に、相手の状況を3行ほど書いたか
  • ☐ 実績は1件にしぼったか
  • ☐ ない数字を書いていないか
  • ☐ 相手の言葉で見出しを書いたか
  • ☐ 聞きたいことを3〜5問書いたか
  • ☐ 書き込む余白はあるか
  • ☐ 料金表を全部載せていないか
  • ☐ 次の段取りの候補日を書いたか
  • ☐ 読み上げないと伝わらないページは消したか

今日やるのは1つだけ

手元の資料から、実績のページを1件だけ残して、ほかを消します。そのかわりに、「聞きたいこと」のページを1枚足します。

これだけで、資料は「自分を証明する紙」から「相手に話してもらう紙」に少し寄ります。どこまで減らすか、どの質問を入れるかは、相手と商売に合わせて決めてください。

打ち合わせの前後のつながりは、仕事の取り方の全体像にまとめています。資料の前後で何をするかを考えるときに、あわせて見てください。

よくある質問

打ち合わせ資料は何枚くらいがいいですか?

私の知るかぎり、公的な基準はありません。初回は数枚でよく、私の場合の目安は3〜5枚です。枚数より、1枚目が相手の状況になっているかどうかが大事だと考えています。

初回の打ち合わせに資料は必要ですか?

なくても打ち合わせはできます。ただ、聞きたいことを書いた紙が1枚あると、聞き忘れが減り、相手も話しやすくなると私は考えています。

実績が少ないとき、資料に何を書けばいいですか?

数を並べる必要はありません。似た相談が1件あればそれを書き、なければ仕事の進め方と最初にやることを書きます。ない実績や数字は書きません。

打ち合わせ資料に料金は載せるべきですか?

私のやり方では、初回は全プランを載せず、聞かれたら幅で答え、話を聞いてから見積を出します。商売によって合うやり方は違います。

打ち合わせ資料はパワポで作らないといけませんか?

決まりはありません。A4の紙1〜2枚や手書きでも、相手の状況と聞きたいことが書いてあれば役目は果たせます。

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