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このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
予算は「要望を聞き終えたあと」に「幅で」聞けば失礼になりにくい
見積もりを出す前に予算を聞きたい。けれど「予算を聞いたら、お金のことしか考えていない人だと思われる」という気がして、聞けないまま話が進む。そういう人は多いと思います。
予算は、依頼する側が「何をどこまで頼めるか」を決めるための条件です。たとえば同じ「資料づくりをお願いしたい」でも、頼める範囲が数ページなのか、構成から全部なのかは、予算で変わります。聞かずに出した提案は的を外しやすく、相手も判断しにくくなります。予算を聞くことは、相手が選びやすい提案を出すための準備です。
聞けない理由は、聞く順番を習っていないこと
独立する前の会社では、金額の話は営業や上司が担当していた、という人もいます。習っていないので、聞き方も順番も分からない。それだけのことで、性格や度胸の問題とは別の話だと考えています。
よくある動きはこうです。金額の話は自分からは出さない。相手が言ってくれるのを待つ。言われなければ、自分で見当をつけた金額で見積もりを出す。そして、返事が来ないまま黙られる。私はこれを『値段が言えない型』と呼んでいます。
「予算を聞くと、お金目当てに見られる」という考えは、実際に誰かにそう言われたからというより、自分の中で決めてしまっているケースが多いように思います(ここは私の見方です)。
予算を聞かずに見積もりを出したときに起きること
予算を聞かないまま出した見積もりで、次のようなことが起きやすくなります。
- 総額だけを出して、返事が止まる。高いのか、検討中なのか、判断できない
- 相手の頭の中にある金額と合わず、どちらも言い出せないまま話が流れる
どちらも、予算を先に聞いていれば避けられる場面です。
結論は3点。時期・理由・幅
- 時期:要望を一通り聞いたあとに聞く
- 理由:「提案を出すために」とひと言添える
- 聞き方:金額ではなく「幅・目安」で聞く

そのまま使える一文はこれです。
伺ったご要望に合わせて、できる範囲を2〜3案でお出ししたいので、ご予算の目安があれば教えていただけますか。
「おいくらですか」と聞くのではなく、「案を出すために目安をください」と頼む形にします。これなら値踏みには読まれにくくなります。
メールで予算を聞く例文(問い合わせへの返信・打ち合わせのあと)
メールは、文面を整えてから送れる分、予算を聞く練習に向いています。2つの場面の全文を載せます。
初めての問い合わせに返すメール
ポイントは、予算を単独で聞かないことです。確認したい点を番号つきで並べ、予算はその3問目に入れます。
件名:〇〇の件 確認させてください
〇〇様
このたびはお問い合わせいただき、ありがとうございます。〇〇の〇〇です。 ご要望に合う進め方をご提案したいので、次の3点を教えていただけますか。
- いま一番困っていること
- いつまでに必要か
- ご予算の目安(幅で結構です。まだ決まっていなければ空欄で大丈夫です)
いただいた内容を拝見したうえで、できる範囲を2〜3案でお出しします。 どうぞよろしくお願いいたします。
「空欄で大丈夫です」と書いておくと、答えにくい相手も気が楽になります。答えが返ってこなくても、それ自体が「まだ決まっていない」という情報になります。
打ち合わせのあとに送るメール
打ち合わせの要点を3行でまとめ、そのあとに予算を聞きます。
件名:本日の打ち合わせの件 ありがとうございました
〇〇様
本日はお時間をいただき、ありがとうございました。内容を整理します。
・困っていること:〇〇 ・必要な時期:〇月ごろ ・頼みたい範囲:〇〇から〇〇まで
この内容ですと、進め方が2通りあります。ご予算の目安によっておすすめが変わりますので、だいたいの幅を教えていただけますか。目安をいただいてから、具体的な案と金額をお送りします。
先に要点をまとめてあるので、「話を聞いたうえで聞いている」という流れが相手にも伝わります。
NG例と直し方
| NGの書き方 | 起きやすいこと | 直し方 |
|---|---|---|
| 「ご予算はおいくらでしょうか」の一行だけ | 理由がなく、値踏みに読まれる | 理由と「幅で結構です」を添える |
| 件名に「予算確認」と入れる | お金の話だけが目に入る | 件名は「〇〇の件 確認させてください」にする |
| 予算だけを単独で聞く | 質問がお金に偏って見える | 要望の確認と並べて3問目あたりに入れる |
会って聞くときの順番と、その場で言う一文
会って話すときは、予算をいきなり聞かないほうが進めやすくなります。
予算の前に聞く3つ
- いま困っていること
- いつまでに必要か
- どこまで頼みたいか

この3つを聞いてから、4番目に予算を聞きます。困りごとと範囲が分かっていれば、「その内容に合わせて聞いている」という形になるからです。
その場で言う一文
ここまで伺った内容だと、やり方がいくつかあります。ご予算の目安でどれをおすすめするか変わるので、だいたいの幅があれば教えてください。
相手が黙ったときの手順
- 少し待つ。すぐに別の話で埋めない
- 黙ったままなら、自分から幅の例を出す。「たとえば〇万円台か、〇十万円台か、くらいの感覚で大丈夫です」
- それでも答えがなければ、次の章の「答えたくなさそうなとき」の返しに進む
幅の例は、自分の料金表から作ります。業界の相場を持ち出す必要はありません。自分が普段受けている金額の前後を〇の部分に入れれば足ります。
「予算は決まっていない」「おまかせ」と言われたときの返し
予算を聞いても、はっきり答えが返ってくるとは限りません。ここでの返し方が決まっていないと、次に聞くのが怖くなります。
本当に決まっていないことも多い
依頼する側も、いくらが妥当なのか分からないまま相談していることがあります。そのときは、こう返します。

承知しました。では、こちらで3つの案と金額を出しますので、近いものを選んでください。
そのうえで、松竹梅の3案を出します。「梅」は必要最小限、「竹」は標準、「松」は全部入りというように、中身で分けます。相手は金額を自分で言わなくても、選ぶだけで答えられます。
「なるべく安く」と言われたとき
その場で「では〇割引きます」と言うのは避けます。値引きを先に言うと、下げる前提で話が進みやすくなります。
先にやるのは、削っても困らない作業を相手と一緒に決めることです。
金額を抑えたいということですね。中身を調整する形でご提案できます。たとえば、写真を〇枚から〇枚にする、修正を〇回までにする、といった形です。どこなら減らしても大丈夫そうですか。
値引きではなく、範囲の調整として話します。
答えたくなさそうなとき
深追いはしません。
承知しました。こちらで目安を出しますので、それを見て教えてください。
こう言って引いて大丈夫です。引いても失礼になりにくいと考えています。予算を言いたくない事情は、相手にもあるものです。
言われた予算が、自分の料金より低かったとき
予算を聞けても、そこで終わりではありません。言われた額が自分の料金より低かったときに、どう返すかも決めておく必要があります。
言われた額に合わせて、中身はそのまま引き受けてしまう
場面で書くと、こうです。「予算は〇万円くらいで」と言われる。自分の料金より低いと感じる。でも、せっかく聞けた金額を前にして、断りにくい。結局、その額で、中身はふだんと同じだけ引き受ける。
あとから作業量が重くなって苦しくなるのは、この形です。聞けたことに安心して、額と中身を一緒に見る手順が抜けています。
その額でできる範囲を分けて返す
返し方は、中身を3つに分けることです。

| この予算でできること | 追加でできること | 今回は外すこと |
|---|---|---|
| 基本の作業(〇〇まで) | 〇〇を足す場合は、追加で〇円 | 〇〇は今回は含めない |
返信の例文です。
ご予算を教えていただき、ありがとうございます。この金額ですと、〇〇までをお引き受けする形になります。〇〇も必要な場合は追加で承ります。〇〇は今回は含めない形でどうでしょうか。
合わないときの断り方
このご予算ですと、〇〇までのお手伝いになります。全部をご希望の場合は〇円ほどになります。
これは断りというより、条件を並べているだけです。相手は、その中から選べます。「できません」と言い切るより、「この範囲ならできます」と示すほうが、話が続きやすくなります。
NG例:値下げして、中身は減らさない
予算に合わせて金額だけ下げ、作業は同じままにすると、あとで自分が苦しくなります。下げるなら、中身も減らします。中身を変えずに下げるのは、避けたい動きです。
予算を聞く前に用意しておくもの(チェックリスト)
用意するもの
- □ 自分の料金の幅(下限と上限)
- □ これ以下なら受けない最低ライン
- □ 松竹梅それぞれの中身
- □ 削れる作業の一覧
- □ 追加料金になる作業の一覧
今日やれること
直近の仕事3件の金額と作業内容を書き出します。そのうえで、自分の幅を一行で言えるようにします。
〇万円から〇万円くらいで、だいたい〇万円が多いです。
この一行があると、相手が黙ったときの幅の例も、すぐに出せます。
用意があると、聞く怖さが減る理由
相手がどんな額を答えても、返す言葉が決まっているからです。聞くのが怖いのは、返し方が決まっていないからだと考えています。
予算の聞き方 早見表(場面・一文・避けたい言い方)
早見表
| 場面 | そのまま使える一文 | 避けたい言い方 |
|---|---|---|
| 問い合わせへの返信 | 「ご予算の目安(幅で結構です)」を確認事項の3問目に入れる | 「ご予算はおいくらでしょうか」だけ |
| 打ち合わせの最中 | 「やり方がいくつかあるので、ご予算の目安で、おすすめが変わります」 | 話の冒頭でいきなり金額を聞く |
| 打ち合わせのあと | 「内容を整理しました。ご予算の目安をいただければ、案をお出しします」 | 件名に「予算確認」と書く |
| 「決まっていない」と言われた | 「では、こちらで3つの案と金額を出しますので、近いものを選んでください」 | 「決まったら教えてください」で待つ |
| 低い額を言われた | 「この予算でできること/追加でできること/今回は外すこと」を分けて返す | 中身はそのままで、金額だけ下げる |
全体の流れの中での位置
予算を聞くことは、仕事を取る流れの中では、「話を聞く」の後半にあたります。前後のつながりは、仕事を取る流れ全体にまとめています。
最後に
予算を聞けない人は、お金に無頓着なわけでも、営業に向いていないわけでもないと思います。聞く順番と、言う一文を、まだ持っていないだけです。
性格はそのままでいい。聞く順番と一文を持っておけばいい。まずは次に来る問い合わせへの返信に、「ご予算の目安(幅で結構です)」の一行を足すところから始めてみてください。
よくある質問
仕事の依頼で予算を聞くのは失礼ですか?
理由を添えて幅で聞けば、失礼になりにくいと考えています。「ご要望に合う案を出すため」とひと言つけるのがコツです。理由のない「おいくらですか」だけだと、値踏みに読まれやすくなります。
メールで予算を聞くタイミングはいつがいいですか?
初めての返信でも聞いてかまいません。ただし要望の確認と並べて、3問目あたりに入れます。予算だけを単独で聞くのは避けます。
予算を教えてもらえないときはどうすればいいですか?
深追いせず、こちらから松竹梅の3案と金額を出して選んでもらいます。答えたくなさそうな相手には「こちらで目安を出しますので、それを見て教えてください」と伝えて引きます。
予算を先に聞くと、その額まで値切られませんか?
予算の額に合わせて中身を分けて返せば、値下げではなく範囲の調整になります。中身を変えずに金額だけ下げるのは避けます。
個人のお客さんにも予算を聞いていいですか?
聞いてかまいません。「だいたいこのくらい、という感覚で大丈夫です」と幅の例を添えると、答えやすくなります。
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