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このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
お客様の要望を聞き出すには、質問を増やすより「選べる形」を先に出す
言われたとおりに作って納品したら、「なんか違うんですよね」と言われた。最初に「おまかせで」と言われていた案件ほど、こうなりやすいと私は見ています。
デザイン、文章、写真、施術、制作全般で、同じ場面があります。この記事では、その場面で何と返し、何を見せ、どの順で聞けばいいかを、そのまま使える言い方でまとめます。
「言われたとおりに作ったのに違う」は、察する力の問題ではない
「なんか違う」と言われると、自分には相手の気持ちをくみ取る力がないからだ、と受け取る人が多いです。センスが足りなかったのかもしれない、と振り返る人もいます。

起きたことを順に並べてみます。相手は、頭の中のイメージをまだ言葉にしていませんでした。こちらは、それを確かめないまま作り始めました。この流れのどこにも、腕やセンスは出てきません。出てくるのは「何をどの順で聞くか」だけです。
言われたことをそのまま受けて、そのまま作るのが「聞くこと」だと思っている。私はこれを『言われたまま型』と呼んでいます。丁寧に聞いているつもりなのに、結果がずれる。真面目な人ほどこの型に入りやすい、というのが私の見立てです。
「おまかせで」は、要望がないのではなく言葉になっていないだけ
「おまかせで」と言われると、信頼してもらえたのか、丸投げされたのか、どちらかに聞こえます。私は、その中身は要望がない状態というより、イメージはあるのにまだ言葉になっていない状態であることが多いと見ています。
そういう相手に「どんな感じがいいですか」と聞いても答えにくいものです。答えられないから、もう一度「おまかせで」と返ってきやすくなります。相手にとっても、いちばん手短に会話を終えられる言い方です。
聞き出すとは、相手が指させる形を先に用意すること
結論を先に言います。要望を聞き出すとは、相手の口から言葉を引っぱり出すことではありません。相手が「こっち」と指させる形を、こちらが先に用意することです。

言葉にできない人でも、見本を3つ並べれば「これは違う、これは近い」と指せます。指した理由を聞けば、そこから要望が言葉になって出てきます。質問を増やすより、選べる形を先に出す。以降はこの考え方で、返し方、聞く順番、言い換え、確認メモ、立て直し方の順に進めます。
営業の全体の流れでいうと、ここはフリーランスの営業の進め方の中の「話を聞く」の工程にあたります。知り合ったあと、金額を出す前の部分です。
「おまかせで」と言われたときの返し方3つ(そのまま使える言い方つき)
「おまかせで」と言われた瞬間に、頭の中でいろいろ考え始める人は多いです。ここで大事なのは、その場で正解を出そうとしないことです。次の3つの返し方を、順にまたは組み合わせて使います。
まず受け取り、確認するのは「2つだけ」と先に言う
いきなり質問攻めにすると、相手は身構えます。まず受け取って、確認する数を先に言います。
ありがとうございます。せっかくなので外したくないので、2つだけ確認させてください。
「2つだけ」と数を言うのがポイントです。終わりが見えると、相手は答える気持ちになります。数を言ったら、その数を守ります。3つ聞きたくなったら、次の機会に回します。
見本を2〜3個見せて「近いのはどれですか」と聞く
見本は、過去の自分の仕事でも、世の中にある身近な例でも構いません。大事なのは、方向がはっきり違うものを2〜3個並べることです。似たものを並べると、選べません。
たとえばこの3つだと、いちばん近いのはどれですか。
答えが「どれも違う」でも十分です。その場で次のように聞きます。
どのあたりが違いそうですか。
「違う」と言えること自体が、要望の入口です。「派手すぎる」「硬い」「もう少し人が出ているほうがいい」。そういう言葉が出てきたら、それがそのまま要望になります。
好みより先に「これだけは避けたい」を聞く
好みを言葉にできない人でも、嫌なものはすぐ言えることが多いです。ここは私の実感に近い見方ですが、使ってみて損はありません。
これだけはやめてほしい、というものはありますか。
「前に頼んだところが暗い感じで失敗した」「ありがちな写真は使いたくない」。こうした一言が、作る側にとっては、いちばん外せない線になります。
やりがちなNG例
次の返しは、一見、相手に気を使っているようで、あとで困ります。
特にご要望がなければ、こちらで進めますね。
相手の「おまかせで」をそのまま引き取った形です。相手は、要望がないのではなく言えていないことが多いので、完成したものを見て初めて「思っていたのと違う」が出てきます。気づくのが遅いほど、やり直しは大きくなります。
要望を聞き出す順番は「何のために → どこで使う → 避けたいこと → 好み」
返し方が分かっても、何から聞くかで迷います。ここでは順番を決めてしまいます。

好みを最初に聞くと、相手は答えにくい
「何色がいいですか」「どんな雰囲気がいいですか」。これらは、答えにくい質問になりがちです。好みは頭の中にあっても、言葉の引き出しに入っていないことが多いからです。
だから好みは最後に回します。先に目的や使う場面を聞いておくと、好みの質問は「見本の中から選んでもらう」だけで済みます。
目的・使う場面・避けたいことを先に聞く
順番はこうです。
1. 目的。 「これができたら、何がうまくいくといいですか」。何のために頼んだのかが分かれば、こちらで選んでいい範囲が決まります。
2. 使う場面と、見る人。 「どこで、誰が見ますか(使いますか)」。職種ごとに置き換えるとこうなります。
- デザイン:名刺なのか、看板なのか、ウェブなのか。見るのは誰か
- 文章:社内向けか、お客様向けか。読む人は専門家か、初めて知る人か
- 写真:どの媒体に載せるか。人物は入るか
- 施術:当日どんな予定があるか。人に会うか、写真に残るか
3. 避けたいこと。 前の節で書いた「これだけはやめてほしい」を聞きます。
4. 好み。 ここで初めて見本を見せて、近いものを選んでもらいます。
「決めるのは誰か」を最後に確かめる
5. 決める人と期限。 「最終的に決めるのはどなたですか」「いつまでに要りますか」。
落とし穴は、「おまかせで」と言った本人が、決める人とは限らないことです。担当者が「おまかせで」と言い、上の人が完成品を見て「ちょっと違う」と言う。こうなると、ここまで聞いた要望が一度崩れます。これは最後に、さらっと聞いておきます。
5つの順番を表にまとめます。
| 順番 | 聞くこと | 言い方の例 | 分かること |
|---|---|---|---|
| 1 | 目的 | 「これができたら、何がうまくいくといいですか」 | こちらで選んでいい範囲 |
| 2 | 使う場面と見る人 | 「どこで、誰が見ますか」 | 雰囲気、大きさ、言葉づかい |
| 3 | 避けたいこと | 「これだけはやめてほしい、というものはありますか」 | 外せない線 |
| 4 | 好み | 見本を見せて「近いのはどれですか」 | 目指す方向 |
| 5 | 決める人と期限 | 「最終的に決めるのはどなたですか」「いつまでに要りますか」 | 誰のOKが要るか、いつまでか |
言われたまま型になりやすい聞き方と、言い換え表
ここまでの話を、ふだんの口癖のレベルまで落とします。ついやってしまう聞き方を3つ挙げます。
広い質問を、選べる質問に言い換える
1つ目は「どんな感じがいいですか?」です。広すぎて、相手は答えに困ります。
この2つだと、どちらが近いですか?
こう聞くと、答えるのに言葉がいりません。「左です」で足ります。
2つ目は「ご要望は以上ですか?」です。聞いたほうは確認のつもりですが、相手は「以上です」としか答えられません。
あとで「やっぱりこうしたかった」になりそうなところはありますか?
こう聞くと、相手はまだ言っていないことを探し始めます。
「かっこよく」「明るく」は、中身を一度だけ聞き返す
3つ目は、相手の言葉をそのまま作業メモにすることです。「かっこよく」「明るく」。メモに書いた時点では分かった気になりますが、言葉の中身は人によってまったく違います。
「明るく」というと、たとえばどんなものが思い浮かびますか。
聞き返すのは一度だけです。何度も聞くと、相手は問い詰められている気持ちになります。一度で出てこなければ、見本を出して選んでもらいます。
この3つを表にまとめます。
| ついやってしまう聞き方 | 起きやすいこと | 言い換え |
|---|---|---|
| 「どんな感じがいいですか?」 | 答えに困って「おまかせで」に戻る | 「この2つだと、どちらが近いですか?」 |
| 「ご要望は以上ですか?」 | 「以上です」で終わり、あとで追加が出る | 「あとで『やっぱりこうしたかった』になりそうなところはありますか?」 |
| 「かっこよく」をそのままメモする | 人によって中身が違い、出来上がりがずれる | 「『かっこよく』というと、たとえばどんなものが思い浮かびますか」 |
聞き返すのは失礼ではなく、外さないための確認
聞き返すのは失礼だ、と感じる人もいます。私は、中身を確かめることは相手の時間とお金を無駄にしないためのことだと考えています。完成してから「違う」と言われるほうが、お互いに大きな負担になります。
性格を変える必要はありません。口数が少なくても、控えめでも構いません。変えるのは、聞く順番と言い方だけです。
聞いた要望は「3行の確認メモ」で返すと、食い違いが減る
打ち合わせで聞けても、それが相手の意図と合っているかは、その場では分かりません。そこで、聞いた内容を短いメモにして返します。

そのまま使える確認メモの文面
打ち合わせのあと、その日のうちに送る文面です。
本日はありがとうございました。確認です。 ①〜のために使う ②〜は避ける ③◯日に途中のものをお見せします 違うところがあれば教えてください。
①は目的、②は避けたいこと、③は次に見せる日です。3行にするのは、相手が読んで返せる長さにするためです。長いと、相手は読まずに「大丈夫です」と返してしまいがちです。
相手も、文字で見て初めて自分の要望に気づくことがある
メモを送る意味は、こちらの記録のためだけではありません。相手も、自分の要望を文字で初めて見ます。そこで「あ、そうじゃなくて」が出れば、作る前に直せます。
私は、人は口で話したことより、文字で見たもののほうが違いに気づきやすいと見ています。理由は、頭の中のぼんやりしたイメージと、文字にされた言葉を見比べられるからです。
完成前に一度、たたき台を見せる
完成してから見せない。途中で一度見せます。全体の早い段階で、たたき台を見せて、方向が合っているかだけ確かめます。細かい仕上げはまだ要りません。
避けたいのは、完成品を一発で出すことです。違ったときに全部やり直しになり、こちらも相手も疲れます。たたき台なら「この方向でいい」「ここだけ違う」で済みます。③の「◯日に途中のものをお見せします」は、そのための一文です。
「なんか違う」と言われたときの立て直し方
それでも「なんか違う」と言われることはあります。そのときの動き方を決めておくと、慌てません。
謝りすぎず、「どこが違うか」を一緒に確かめる
最初に謝りすぎないことです。謝りが続くと、相手は「悪いことを言った」と感じて、本音を言いにくくなります。違いを一緒に確かめる場にします。
ありがとうございます。違うと感じたのは、どのあたりですか。
「このままでいいところ」と「変えたいところ」を分ける
「違う」が全部なのか、一部なのかを分けます。
このままでいいところと、変えたいところを分けさせてください。
一部だけの違いなら、直す範囲が小さく済みます。全部違うなら、前の節の順番に戻り、目的から聞き直します。
答えが出ないときは、また見本を出します。
この部分をこう変えたら、近づきますか。
選んでもらう形にすると、言葉にならなかった違いが出てきます。
やり直しの範囲は、最初のメモで決めておく
やり直しの範囲と回数は、最初の確認メモで決めておくと揉めにくくなります。たとえば「途中の確認で方向を決め、その後の直しは◯回まで」のように、メモに一行足します。
契約や料金の扱いは、ここでは一般的な考え方の説明に留めます。個別の判断は専門家に相談してください。
次の打ち合わせ前に用意する3つ(チェックリスト)
見本・聞く順番・確認メモの3つをそろえる
持ち帰り用のチェックリストです。
- □ 見本を2〜3個用意した
- □ 聞く順番(目的→使う場面→避けたいこと→好み→決める人と期限)をメモした
- □ 打ち合わせ後に送る確認メモのひな形を作った
3つともやる時間がなければ、1つ目だけで構いません。
次の「おまかせで」には、見本を見せて選んでもらう
今日やれる最小の一歩を1つだけ挙げます。次に「おまかせで」と言われたら、こう言って見本を見せます。
いちばん近いのはどれですか。
それだけで十分です。順番も確認メモも、その次に足していけば間に合います。
言われたとおり作れるなら、足りないのは腕ではなく聞く順番かもしれない
言われたとおりに作れているなら、「なんか違う」と言われた原因は、腕にあるとは限りません。私は、聞く順番のほうを疑います。順番は、型として手元に置けば、次の案件から使えます。
よくある質問
「おまかせで」と言われたら、本当におまかせで進めていいですか?
そのまま引き取ると、あとで「思っていたのと違う」になりやすいです。まず受け取り、「2つだけ確認させてください」と目的と避けたいことを聞きます。見本を2〜3個見せて近いものを選んでもらうと、要望が言葉になります。
お客様が要望をうまく言えないときは、どう聞けばいいですか?
「どんな感じがいいですか」のような広い質問をやめて、選べる質問にします。「この2つならどちらが近いですか」「これだけは避けたいものはありますか」と聞きます。好みは最後に回し、目的と使う場面から聞きます。
要望を聞いたのに、納品後に「違う」と言われるのはなぜですか?
相手の言葉(「明るく」「かっこよく」)を、中身を確かめないまま作業に移していることが多いです。打ち合わせ後に3行の確認メモを送り、完成前に一度たたき台を見せると、作る前にずれを直せます。
細かく質問すると、しつこいと思われませんか?
確かめる数を先に言い(「2つだけ」)、選択肢を見せて選んでもらう形にすれば、相手の負担は小さくなります。中身の確認は、相手の時間とお金を無駄にしないためのものだと私は考えています。
要望を聞き出す順番に決まりはありますか?
決まった正解はありませんが、答えやすい順に並べるのがよいです。目的→使う場面と見る人→避けたいこと→好み(見本で選ぶ)→決める人と期限、の順だと、相手が言葉にしやすくなります。
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