この記事は『決めどき』の棚です 棚の記事一覧 →
このシリーズの全体像 営業メールの例文集|場面別に、そのまま使える文面
返事が止まっても、値段のせいとは限らない|クロージングメールは「決めやすくする一通」
クロージングのメールに書くのは、相手が決めるための材料と、決める日です。例文は次の見出しに3つ(打ち合わせ当日・見積を送るとき・返事が止まったとき)あります。先に、なぜこの2つが要るのかを短く説明します。
金額を出したあとに黙られたとき
打ち合わせは手応えがありました。相手も話にうなずいてくれた。後日、見積を送った。ところが、数日たっても返事がありません。
こういうとき、「金額を出したら黙られた。やっぱり高すぎたんだ」と受け取る人が多いようです。そう考えると、見積を見直したり、金額を下げる方向に気持ちが動いたりします。ただ、これは理由の一つの見方にすぎません。相手の頭の中は、メールの向こうからは見えないからです。
この記事で扱うのは、会って話したあとに送る「クロージングのメール」です。クロージングというと、押して決めさせる文を想像しがちです。ここでは、相手が決める手間を減らす文として組み立てます。
相手が止まっている理由はほかにもある
返事が来ないとき、相手の側で起きていそうなことを並べてみます。

- 案がいくつかあって、何と何を比べればいいのか分からない
- いつまでに決めればいいのか、どこにも書かれていない
- 聞きたいことはあるが、こんなことを聞いていいのか迷っている
- 社内の人や家族に見せて相談したいが、そのまま見せられる形のメールになっていない
どれも、金額の高い安いとは別の話です。メールの組み立てを変えれば手当てできます。逆に言うと、金額を下げても、この4つは何も変わりません。
出したあとに手を止めてしまう
見積を送ったら、「あとは相手が決めること」と考えて待つ。催促すると急かしているようで気が引ける。そのうち数日が過ぎて、日が空くほど連絡しづらくなる。こうして、出したところで動きが止まります。
この記事では、この状態を「相手の番で止まる」と呼びます。見積を出したあとに何をすればいいかを習っていないので、「あとは相手の番」と考えて動けなくなる状態です。腕が足りないからでも、値段が悪いからとも限りません。出したあとの動き方を、誰からも教わっていないだけだと私は見ています。
動き方は、メールに書くことで渡せます。次の見出しから具体的に見ていきます。
クロージングメールで送るのは、決めるための材料と、決める日
クロージングメールに入れるのは、次の2つです。

- 相手が決めるための材料(何を、どう選べるか)
- 決める日(いつまでに、なぜその日か)
「ご検討のほど、よろしくお願いいたします」だけで終わる一通は、この2つがありません。短く比べます。
直す前の一通
先日はありがとうございました。見積書を添付いたします。ご検討のほど、よろしくお願いいたします。
直した一通
見積書を添付します。内容は2つの案に分けています。A案は〔◯◯〕まで、B案は〔◯◯〕までです。迷われたら、A案から始めて、あとで足す形もできます。
〔◯月◯日〕までにどちらにするか教えていただければ、〔◯月〕のはじめから作業に入れます。
直した一通は、読んだ相手が「A案かB案か、〔◯月◯日〕までに返事をすればいい」と分かります。決めることが一つに絞られているので、返事を出す手間が小さくなります。
そのまま使えるクロージングメールの例文3つ(打ち合わせ当日/見積を送るとき/返事が止まったとき)
〔 〕の部分を差し替えれば使える形にしてあります。メール全般の書き方は営業メールの例文まとめでも整理しています。
例文1:打ち合わせの当日に送る一通
流れは、お礼を1行、話した内容の確認、次に決めてほしいこと、決める日の提案です。話した内容を相手が覚えているうちに送ります。
件名:本日のお打ち合わせのお礼と、次に決めたいこと
〔相手のお名前〕様
本日はお時間をいただき、ありがとうございました。
お話を伺って、〔相手の言葉で書いた困りごと。例:問い合わせは来るが、その先の返事が続かない〕という点が、いちばんの課題だと受け取りました。違っていたら教えてください。
次に決めたいことは、〔まず◯◯だけ始めるか、全体をまとめて進めるか〕の1点です。
〔◯月◯日〕に、見積と進め方の案をお送りします。そのうえで、〔◯月◯日〕までにお返事をいただければ、〔◯月〕のはじめから動けます。
このメールは、社内の方にそのまま転送していただいても読める形にしています。
〔自分の名前〕
困りごとは、自分の言葉に直さず、相手が口にした言葉をなるべくそのまま使います。相手が「そう、それ」と思えるかどうかが、この一通の中心です。
例文2:見積を送るときに添える一通
総額だけを送ると、相手は値段しか見るところがなくなります。中身の分け方と、選び方を添えます。値引きの言葉は入れません。
件名:〔案件名〕のお見積りと、選び方のご案内
〔相手のお名前〕様
お見積書を添付します。内容は2つに分けています。
A案(〔金額〕):〔◯◯〕まで。〔◯◯〕に絞って始める形です。 B案(〔金額〕):〔◯◯〕から〔◯◯〕まで。全体をまとめて進める形です。
迷われたら、A案から始めて、あとで足す形もできます。
〔◯月◯日〕までにお返事をいただければ、〔◯月〕からの作業に間に合います。
内容について聞きたい点があれば、このメールへの返信で一言いただければ大丈夫です。
〔自分の名前〕
案は2つまでにします。3つ以上並べると、比べる手間が増えて、また止まってしまいます。金額はA案とB案の中身とセットで書きます。値段を条件として見せて、仕事の範囲と一緒に読んでもらう形です。
例文3:返事が止まったときの一通
「ご検討いかがでしょうか」は、相手が何を返せばいいか分からない問いです。迷っていそうな点を一つ挙げて、聞きます。
件名:〔案件名〕の件、迷われている点はありますか
〔相手のお名前〕様
お見積りをお送りしてから少し時間がたちました。〔A案とB案のどちらにするか〕で迷われていないかと思い、ご連絡しました。
どちらを選ぶか、一言だけ教えていただけますか。迷っている点があれば、それだけでも構いません。
今回は見送り、というお返事でも助かります。その場合は、一行で結構です。
〔自分の名前〕
「見送りでも助かります」と書いておくと、相手は返事を出しやすくなります。断る道がないメールに返事をするのは、断る側にとっても気が重いものだからです。これは受け手の側から見た説明で、数字の裏づけがあるわけではありません。
3通に共通すること
3通とも、ほかの人に転送してもそのまま読める書き方にしています。決めるのが相手一人とは限りません。社内の上司や家族に見せる場面で、前の経緯が分からないメールだと、相手が説明し直す手間が生まれます。
決めてもらえる一通に入れる5つの部品(送る前のチェックリスト)
5つの部品の表
| 部品 | 書くこと | 例 |
|---|---|---|
| ①話した内容の確認 | 打ち合わせで話した要点を一行で | 「〔◯◯〕についてお話を伺いました」 |
| ②相手の言葉で書いた困りごと | 相手が口にした言い方をそのまま | 「〔問い合わせの返事が続かない〕というお話でした」 |
| ③選べる形 | 案は2つまで。道を一つ示す | 「迷われたらA案から始められます」 |
| ④決める日と、その日である理由 | 日付と、相手の段取りに関わる理由 | 「〔◯月◯日〕までなら〔◯月〕の作業に間に合います」 |
| ⑤断る道・相談の窓口 | 見送りでも構わないこと、聞きたい点があれば返信でよいこと | 「見送りのお返事でも助かります」 |
書く順番
順番は次のとおりです。

- 話した内容の確認
- 相手の困りごと
- 案(2つまで)
- 決める日
- 断る道
- 結びの一文
先に自分の説明や実績を書き始めると、メールが長くなります。相手は、自分のことが書かれているかどうかを冒頭で探す人が多いと私は見ています。次の書き出しは、読み進めてもらえにくい例です。
私どもは〔◯◯年〕から〔◯◯〕の分野で活動しており、これまで〔◯◯〕や〔◯◯〕などを手がけてまいりました。今回のご提案にあたっては、……
相手の話が出てくる前に、自分の紹介が続いています。実績を入れるなら、相手の困りごとに関わる1点だけにします。
送る前のチェックリスト
送信ボタンを押す前に、はい/いいえで答えてください。「いいえ」が付いたところを直します。
- 相手が今日このメールだけを読んで、返事を出せますか
- 決める日が、日付で書いてありますか
- 決める日に、相手の段取りに関わる理由を添えましたか
- 値段の話の前に、中身を分けて書いていますか
- 断る道が書いてありますか
- 3行目までに、用件が出てきますか
- ほかの人に転送しても、経緯が分かりますか
7つのうち、迷ったときの判断基準は一つです。「相手が返事を書くのに、何分かかりそうか」。一言で返せるなら、そのメールは決めやすい一通です。
期日を書くのが気が引けるときの言い方
期日は相手の段取りのためにある
期日を書くと急かしているように見えるのでは、と不安になる人は多いと思います。期日そのものが急かしになるかどうかは、理由が付いているかで変わります。理由が付けば、相手の都合を守る話になります。
- 「〔◯月◯日〕までにお返事をいただければ、〔◯月〕からの作業に間に合います」
- 「この日程を仮で押さえておきます。〔◯日〕を過ぎたら、いったん外させてください」
自分の都合だけで日付を書くより、「この日までなら、この予定で動ける」と伝えるほうが、相手には受け取りやすい書き方です。
期日が消えてしまう言い方(NG例)
気づかいのつもりで書いた一言が、決める日をなくしてしまうことがあります。

| NG | 相手から見ると | 直し |
|---|---|---|
| 「お急ぎではありませんので」 | いつ返事をしてもいい。後回しにできる | 「〔◯月◯日〕までにお返事をいただければ、〔◯月〕からの作業に間に合います」 |
| 「お手すきの際にご確認ください」 | 手がすいたとき。つまりいつか | 「〔◯日〕の午前中にご確認いただけると助かります」 |
| 「いつでも大丈夫です」 | 決める日がない | 「〔◯日〕以降は日程が埋まるため、それまでにお知らせください」 |
期日を過ぎたらどうするかも、先に書いておく
期日だけでなく、過ぎたあとのことも書いておきます。
〔◯日〕を過ぎた場合は、こちらから一度だけご連絡します。
こう書いておくと、相手は「連絡が来るのだな」と分かります。自分にとっても、次の連絡を出す理由ができます。期日を過ぎてから、何も言わずに待ち続けるより、出しやすくなります。
やってしまいがちなNGメール4つと直し方
NG1:「ご検討よろしくお願いします」で終わる
何を、いつまでに決めればいいかが書かれていません。直しは、決めてほしいことを一文で書き、決める日を添えることです。
- NG:「ご検討のほど、よろしくお願いいたします。」
- 直し:「A案とB案のどちらにするかを、〔◯月◯日〕までにお知らせください。」
NG2:聞かれる前に値引きを書いてしまう
「ご予算が厳しければ調整します」と先に書くと、相手は値段の話から入るしかなくなります。まだ何も言われていないのに、下げる前提で話が始まります。
直しは、値段を下げることではなく、中身を減らした案を出すことです。「A案は〔◯◯〕までに絞った形です」と、範囲を変えます。値段は、仕事の条件として書きます。
NG3:説明や実績を足し続けて長くなる
不安になるほど、情報を足したくなります。ところが、足すほど相手が読む量は増えて、決めにくくなります。直しは、相手の困りごとに関わる1点だけを残し、あとは削ることです。詳しい資料は「ご希望があればお送りします」と一言にとどめます。
NG4:返事を急ぐ一言を何度も重ねる
「お返事お待ちしております」を何通も重ねても、相手が返しやすくなるわけではありません。直しは、期日を1回だけ、理由つきで書くことです。
4つのNGのまとめ
| NG | なぜ止まるか | 直し |
|---|---|---|
| 「ご検討よろしくお願いします」で終わる | 何を・いつまでに決めるかが分からない | 決めてほしいことを一文で書き、決める日を添える |
| 聞かれる前に値引きを書く | 値段の話から入るしかなくなる | 中身を減らした案を出す。値段は条件として書く |
| 説明や実績を足し続ける | 読む量が増えて、決める手間が増える | 困りごとに関わる1点だけ残す |
| 急ぐ一言を何度も重ねる | 毎回、返す中身がない | 期日を1回だけ、理由つきで書く |
返事が来ないときの2通目と、断られたときの返し方
2通目は「決まりましたか」ではなく、迷っている点を聞く
2通目に「決まりましたか」と書くと、相手にとっては催促の確認だけです。例文3のように、迷っていそうな点を一つ挙げて聞きます。
〔相手のお名前〕様
先日お送りしたお見積りについて、〔A案とB案のどちらにするか〕で迷われていないかと思い、ご連絡しました。
どちらかの一言だけでも、お返事をいただけると助かります。
迷いが大きいようでしたら、15分ほど、お電話かオンラインでお話しする時間をいただけますか。〔◯日〕と〔◯日〕でしたら調整できます。
〔自分の名前〕
迷いが大きそうなときは、メールを重ねるより、短く話す場を作るほうが早く進むと私は見ています。会って話せば、迷いをその場でほどける場合があるからです。
区切りの一通の出し方
何度も追いかけず、区切りの一通を送ります。
〔相手のお名前〕様
何度もご連絡して失礼しました。いったん、こちらの件は閉じておきます。
状況が変わったときは、いつでもご連絡ください。〔◯◯〕の件は、そのとき改めてご相談します。
〔自分の名前〕
区切っても、関係が終わるわけではありません。「閉じる」と書くことで、相手も返事のプレッシャーから離れられます。
断られたときの返し方
断られたときは、次の順で返します。お礼、理由を一つだけ聞く(答えなくていいと添える)、次に役立てると伝えて終わる、です。
〔相手のお名前〕様
お返事をありがとうございます。今回は見送りとのこと、承知しました。
差し支えなければ、決め手になった点を一つだけ教えていただけますか。お答えいただけなくても大丈夫です。今後の参考にさせてください。
またお役に立てる機会があれば、声をかけてください。
〔自分の名前〕
断られたことは、この提案が今回の条件に合わなかったという事実です。自分の値打ちが下がったわけではないと、私は考えています。理由を聞くのは、次の提案を良くするためです。
今日やれること
直近で、見積を出したまま止まっている相手を一人選んでください。例文1か例文3をもとに、「決める日」と「断る道」を入れた一通を下書きします。送るかどうかは、下書きを読み返してから決めてください。
よくある質問
クロージングのメールはいつ送るのがいいですか?
話した内容を相手が覚えているうちに送ります。打ち合わせの当日か翌日に、内容の確認と決める日の提案をセットで送ると、見積の話につなげやすくなります。
メールに返事の期日を書くのは失礼になりませんか?
理由を添えれば失礼にはなりにくいです。「この日までにお返事があれば、◯月の作業に間に合います」のように、相手の段取りを守るための期日として書きます。
返事が来ないとき、催促のメールは何回まで送っていいですか?
回数で決めるより、毎回相手が一言で返せる中身があるかで考えます。2通目は迷っていそうな点を聞き、それでも返事がなければ、区切りの一通で「いったん閉じます」と伝えます。
メールで値引きを頼まれたらどう返せばいいですか?
すぐに下げず、中身を減らした案を出します。値段は仕事の条件として、何を含むかとセットで書き直します。迷ったら、一度話す場を提案します。
クロージングはメールだけで済ませてもいいですか?
会って話したあとの確認や、決めるための材料を渡す役目には向いています。相手の迷いが大きいときは、メールで押し続けるより、短く話す場を作るほうが話が進みやすくなります。
本記事は、当編集部の制作基準——出典との照合・表現・重複の多段検証——を通過したものだけを公開しています(下書きにはAIを活用)。 仕組みの詳細は編集プロセスの開示をご覧ください。