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このシリーズの全体像 営業メールの例文集|場面別に、そのまま使える文面
休眠顧客へのメールは「前の仕事を覚えている一文」と近況だけで足りる(基本の例文)
前の仕事から半年以上たち、ふとカレンダーを見て「そういえば、あの会社から最近頼まれていない」と気づく。そこで「前の仕事が気に入らなかったのかもしれない」と、自分の腕に原因を探してしまう人が多いです。さらに「いまさら連絡したら、仕事がなくて困っていると思われそう」と考えて、メールの下書きを開いたまま閉じてしまう。

別の見方もあります。頼まれなくなった理由は、相手の側にこちらを思い出す場面がなくなっただけ、という場合が少なくありません。相手にも日々の仕事があります。頼みたいことが出てきたときに、名前が浮かぶかどうか。そこで決まる部分が大きいと私は見ています。腕への評価が下がったとは限りません。
そうだとすると、休眠顧客へのメールの役目は「掘り起こし」ではなく、「思い出す場面を一つ作ること」です。長い文面も、強い提案もいりません。前の仕事を覚えている一文と、近況。それだけで足ります。
基本の例文(4つの部品で組む)
まず全文を載せます。○や△は自分の言葉に置き換えてください。
件名:○○の件でお世話になった△△です
○○株式会社 □□様
昨年3月に会社案内の写真を撮らせていただいた、△△です。
あのとき□□様が話していた新店舗、その後いかがでしょうか。撮影の合間に、内装の話をうれしそうにされていたのを覚えています。
私は最近、撮影に加えて写真の選定もお受けするようになりました。
お忙しいと思いますので、返信は不要です。また何かの折に思い出していただければうれしいです。
△△(連絡先)
部品は4つです。
| 部品 | 役目 | 書き方のコツ |
|---|---|---|
| ①名乗りと前回の仕事名 | 誰からのメールかを一文で思い出してもらう | 仕事名と時期を入れる。屋号だけで終わらせない |
| ②その仕事で覚えていること一文 | 一斉送信ではないと伝える | 相手が話したことを一つだけ。褒め言葉は重ねない |
| ③自分の近況一文 | 売り込みではなく、報告の形にする | 一文に収める。実績の列挙にしない |
| ④返事を求めない締め | 久しぶりの相手に負担をかけない | 「返信は不要です」と書く |
全部で5〜6文です。短いと不安になりますが、久しぶりの一通目は短いほうが読まれやすいと私は考えています。
この一通に入れないもの3つ
1. 値引き・キャンペーンの案内。 値段の話から関係が再開すると、相手は「安いから頼む」「高いから頼まない」の判断になりやすいです。最初の一通は、仕事の話ではなく、人の話にとどめます。
2. 「何かあればお気軽に」だけで終わる文。 悪い文ではありませんが、前の仕事への言及がないと、誰にでも送れる文面になります。受け手には自分宛てだと伝わりにくくなります。
3. 実績の長い列挙。 「最近こんな仕事をしました」を並べるほど、読む側は自分を重ねる場面を失います。近況は一文で足ります。
メール例文全体の考え方は、営業メールの例文と考え方にまとめています。
誰に送るか:休眠かどうかは「いつもの依頼の間隔」で決める
「何か月で休眠」という決まった定義は確認できていません

休眠顧客という言葉はよく見ますが、「何か月頼まれていなければ休眠」という共通の定義は、確認できていません。そのため、この記事では期間を決め打ちしません。
見るのは、その相手からのいつもの依頼の間隔を過ぎたかどうかです。たとえば、毎年春に頼まれていた相手が、夏になっても連絡がない。これは間隔を過ぎています。逆に、2年に一度しか頼まれない相手なら、1年半連絡がなくても休眠とは言えません。同じ「半年」でも、相手によって意味が違います。
過去のお客様を書き出す表
頭の中で考えず、紙か表計算に書き出します。列は4つです。
| 相手の名前 | 最後の仕事と時期 | そのとき相手が話していたこと | いま送れる話題 |
|---|---|---|---|
| ○○社 □□様 | 会社案内の撮影(昨年3月) | 新店舗を出したいと言っていた | 新店舗のその後を聞く |
| △△社 ◇◇様 | パンフレットの制作(一昨年秋) | 来年は動画もやりたいと話していた | 動画の話は進んだかを聞く |
| ××社 ☆☆様 | (時期を書く) | 覚えていない | (書けない) |
3列目が埋まる相手ほど、一通目が書きやすいです。3行目のように3列目が空く相手は、無理に送らず後回しで構いません。書けないまま送ると、一斉送信らしい文面になりやすいです。
送る順番の判断基準
- 最後に話が弾んだ相手から送る
- 相手の事業の話を覚えている相手から送る
- 一度に全員へ送らず、自分が続けられる数にする。たとえば1日1人。この数は例であって、効果の根拠ではありません
全員に送り終えることが目的ではありません。1通ずつ、その人宛てに書けた状態で出すことが目的です。
場面別の例文3通:お礼で止まった相手/新しくできることを伝える/相手の近況を見て
①お礼で止まっていた相手
納品のあと、「ありがとうございました」「こちらこそ」でやりとりが終わり、それきり半年たった。次のひと言を出すきっかけがなくなっている。こういう場面は、よくあります。
私はこれを「お礼だけ型」と呼んでいます。お礼のやりとりで区切りがつき、そこから自分で次のひと言を切り出せない状態です。腕の問題ではなく、ひと言目の出し方を習っていないだけ、と見ると動きやすくなります。
件名:店内の撮影でお世話になった△△です
□□様
昨年秋に店内の撮影をさせていただいた、△△です。
納品のあと、お礼だけで止まってしまっていたので、ひと言だけ近況をお送りします。
あのとき「次は外観も撮りたい」と話されていたのを覚えています。その後、いかがでしょうか。
私は最近、撮影のあとに写真の選定まで一緒にお手伝いするようになりました。
返信は不要です。
自分の言葉に置き換えるところ: 仕事名と時期、「相手が話していたこと」、近況の一文。書き出し「お礼だけで止まってしまっていたので」は、そのまま使えます。
②新しくできるようになったことを伝える
近況の中身が「できることが増えた」場合の例です。ポイントは、「ご検討ください」で終わらず、相手の前回の仕事に結びつけることです。
件名:パンフレットの制作でお世話になった△△です
◇◇様
一昨年にパンフレットの写真を担当した、△△です。
最近、撮影に加えて、写真の選定と簡単な紙面の配置まで請けるようになりました。前回のパンフレットのような場面で、まとめてお任せいただけます。
あのとき◇◇様が話していた動画の件は、その後いかがでしょうか。
返信は不要です。何かの折に思い出していただければうれしいです。
自分の言葉に置き換えるところ: 新しくできること(一つだけ)と、それが活きる「前回の仕事の場面」。できることを三つも四つも書くと、実績の列挙と同じになります。
③相手の近況を見て送る
相手のお知らせ、SNS、新店舗などを見て送る場合です。見たものを一つだけ具体的に書きます。
件名:先日拝見した新サービスの件で(△△)
☆☆様
以前、チラシの制作でお世話になった△△です。
新しいサービスの開始を拝見しました。前回お手伝いした○○の続きにあたる話だと思い、ご連絡しました。
お忙しい時期かと思いますので、返信は不要です。
自分の言葉に置き換えるところ: 「拝見したもの」を一つ、具体的に。「素晴らしいですね」などの褒め言葉は重ねません。褒めるほど、営業の前置きに見えやすくなります。
件名と書き出しで売り込みに見えるかが決まる:NGとOKの対比
①件名

件名は、誰から、何の話かが、件名だけで分かる形にします。
| NG | OK | 理由 |
|---|---|---|
| ご無沙汰しております | ○○の撮影でお世話になった△△です | NGは誰かも、何の話かも分からない |
| お得なご案内 | 先日拝見した新店舗の件で | NGは見た瞬間に広告として処理されやすい |
| 【重要】サービスのお知らせ | ○○の件でお世話になった△△です | 「重要」と付けると一斉送信に見えやすい |
②書き出しで謝りすぎない
NGは、次のように2文続けて謝る形です。
突然のご連絡失礼いたします。長らくご無沙汰してしまい大変申し訳ございません。
謝ると、「連絡しなかったことは悪いこと」という空気を自分で作ってしまいます。謝るのは一言で足ります。たとえば「ご無沙汰しています」の一言のあと、すぐ前回の仕事の話に入ります。
ご無沙汰しています。昨年3月に会社案内の写真を撮らせていただいた、△△です。
③締めは返事を求めない形にする
| NG | OK |
|---|---|
| ご都合のよい日時を3つお知らせください | また何かの折に思い出していただければうれしいです。返信は不要です |
久しぶりの一通目で日程を求めると、相手には「返す用事」が一つ増えます。返事の負担が重いメールは、読んでも後まわしにされやすいです。
受け取る側から見た「久しぶりのメール」:身構えるところと、うれしいところ
自分が発注する側だったときを思い出してください。取引先からの一斉の案内、昔の担当者からの近況メール。そのとき、どう読んでいたでしょうか。
①受け手が身構えやすい3つ
- 宛名がない、会社名だけで、一斉送信らしく見える
- 値引きや期限つきの案内が入っている
- こちらの事情に触れず、相手の自分の話だけで終わっている
3つに共通するのは、「自分宛てではない」と感じさせる点です。これは調査の数字ではなく、受け取る側に立ったときの私の見方です。
②受け手が手を止めて読むのは、自分との仕事を覚えている一文
たとえば次のような一文です。
あのとき□□様が「来年は動画もやりたい」と話していたのを覚えていて、ご連絡しました。
これは、前の仕事で相手の話をきちんと聞いていた人だから書ける一文だと私は考えています。打ち合わせで相手の話を聞いていた。作業の合間の雑談まで覚えている。その積み重ねが、一文に出ます。メールの書き方がうまいかどうかより、前の仕事をどう進めたかが効きます。腕に自信がなくなっているときほど、ここは見落としやすいところです。
③返事が来ないのは「断られた」ではない
受け手は読んだうえで、返す用事がないので返していないだけ、ということも多いです。返信不要と書いてあれば、なおさらです。返事がないことと、評価が低いことは別の話です。
仕事が減ったのではなく、思い出してもらえなくなっただけ。そういう人が多い、と私は見ています。これは読者本人の言葉から確かめたものではなく、仮説です。ただ、思い出してもらう一通を送れば、その状況は変わりえます。
送ったあとの次の一手:返事が来たとき・来ないとき
①返事が来たときは、会う・話す口実を一つだけ出す

返事が来たら、いきなり見積や提案を送りません。会う、または話す口実を一つだけ出します。
ご返信ありがとうございます。近くに伺う用事がありますので、15分だけご挨拶に寄ってもいいですか。
対面で会う一歩につなげることが目的です。メールは、会うきっかけを作るために使います。
②返事が来ないときは、次の時期を送った日に決める
同じ内容の催促はしません。代わりに、次に送る時期と話題を、送った日にカレンダーへ書いておきます。たとえば、年末の挨拶、相手の繁忙期が明けたころ。話題は別のものにします。
書かずに「また連絡しよう」と思ったままだと、目の前の仕事に押されて日が空きます。日が空くほど出しづらくなり、半年が一年になる。この流れは、送った日に次の予定を一行書くだけで止められます。
③NG例:1週間後に「ご覧いただけましたか」と送る
先日お送りしたメールはご覧いただけましたでしょうか。
受け手の目線で読むと、これは催促に見えます。返信不要と書いたメールに、返信を求める一通を足すことになります。最初の一通の「返さなくていい」という約束も、自分で破ることになります。この場面では、待つほうがよいと私は考えています。
送る前のチェックリストと、今日やること
①送信前チェックリスト(7項目)
- 相手の名前を書いたか
- 前回の仕事名と時期を書いたか
- 前回の相手の話を一つ入れたか
- 自分の近況は一文に収めたか
- 値引き・期限つきの案内を入れていないか
- 返事を求めない締めにしたか
- 送った日に、次の連絡時期をメモしたか
②今日やれること
- 過去のお客様を3人だけ書き出し、前の章の表の「そのとき相手が話していたこと」を埋める
- 埋まった1人に、基本の例文で一通送る
- 送った日付と、次に連絡する時期をメモする
全員分そろえてから送ろうとしないでください。1人に送れば、次の1人も書けます。まず1通です。
個別の事情(契約上の連絡制限や、個人情報の扱いなど)がある場合は、専門家に相談してください。
よくある質問
休眠顧客とは何か月連絡がないお客様のことですか?
決まった定義は確認できていません。期間を決め打ちせず、その相手のいつもの依頼の間隔を過ぎたかどうかで判断します。毎年春に頼まれていた相手が、夏になっても連絡がない、といった見方です。
休眠顧客へのメールは一斉送信でもいいですか?
相手の名前と前回の仕事に触れた一文が入れられないなら、受け手には自分宛てではない案内に見えやすいです。少人数でも、1人ずつ書くほうがよいと考えています。
久しぶりの連絡で値引きやキャンペーンを案内してもいいですか?
最初の一通では避けます。売り込みに見えやすく、値段の話から関係が再開してしまいやすいからです。まずは近況と、前回の仕事の話だけにします。
休眠顧客にメールを送って返信がない場合、再送してもいいですか?
同じ内容での催促はしません。次の節目(年末の挨拶、相手の繁忙期明けなど)に、別の話題で送ります。送った日に、次の時期を決めておきます。
前の担当者が異動・退職していたらどう書けばいいですか?
会社の窓口あてに、前回の仕事名と時期を書いて名乗り、いまの担当の方を尋ねる一文を入れます。前任者の話を長く書かないのがコツです。
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