この記事は『決めどき』の棚です 棚の記事一覧 →
このシリーズの全体像 対面営業のコツ完全ガイド — 会って、信頼で売る技術の全体像
まず押さえたい2か所(提案の前と、金額の前)
テストクロージングは、商談中に顧客の購入意思を見極めるための質問です。商談の中で得られた相手のニーズや要望をもとに、契約の意思を探る手法とも説明されます。最後に1回だけ決断を迫るクロージング——営業の最終段階で、顧客に契約を締結してもらうステップ——とは違い、決めてもらうための質問ではありません。

S1が挙げる代表的な入れどころは2か所。これに加えて、相手の条件が出そろったときも入れどきです。
①提案を始める前
説明を始めていいかを、先に確かめます。
「これから〇〇について説明させていただきますが、ご興味はございますか?」
ここで「まだ状況を整理したい」と返ってきたら、説明をやめて聞く側に戻ります。この一言を飛ばして説明から入ってしまうと、気づけば15分しゃべっていることになります。相手が興味を持てる状態かどうかを確かめないまま話し始めると、相手は「聞かされている」感覚のまま最後まで座ることになります。
たとえば「これから料金プランについて説明させていただきますが、ご興味はございますか」と聞いて、「実はまだ他社とも比較している段階で」と返ってきたら、そこで説明を止めて「どこと比べていらっしゃいますか」に切り替えます。説明を始める前に1回止まるだけで、残り15分の使い方が変わります。
②金額を提示する前
金額を出す直前が、2か所目です。
「条件が整えば、購入を前向きにお考えいただけますか?」
ここを飛ばして金額だけ出すと、相手は金額の話しかできなくなります。良い悪いを言う前に、比べる材料も決める順番もないまま数字だけが目の前に置かれるからです。先にこの一言を入れておくと、金額を見たあとの反応が「高いか安いか」ではなく「条件に対して妥当か」に変わります。
「はい」と返ってくれば、そのまま金額を出して条件の説明に進めます。「その前に1つ確認したいのですが」と返ってきたら、金額を出す前に懸念を1つ拾えたということです。金額を出したあとに同じ懸念を持ち帰られるより、出す前に拾うほうが扱いやすくなります。
条件が出そろったタイミングを逃さない
相手の条件が出そろったとき、話が具体化したタイミングでも入れます。「納期は来月頭で」「予算はこのくらいで」と相手が条件を言い始めたら、それが合図です。条件が出た瞬間に一度立ち止まって確かめると、あとから「聞いていた話と違う」が起きにくくなります。
NG例
挨拶の直後に「ご契約いただけますか」と聞く。まだ何も分かっていない段階での意思確認は、確かめる質問ではなく詰める質問になります。入れる場所を間違えると、同じ言葉でも売り込みに変わります。
商談全体の中でこの2か所がどこに当たるかは、対面営業のコツで流れごと整理しています。
相手の温度が最後まで分からないのは、察する力がないからではない
見積を送った直後、既読のまま3日が過ぎる。商談中は「いいですね」「前向きに検討します」と言っていたのに、金額を出した瞬間から連絡が途切れる。手応えがあった商談ほど、黙られたときの落ち込みは大きくなります。

これは相手の番型かもしれません。出したあとに何をすればいいか習っていないので、「あとは相手の番」で止まる型です。相手の温度が最後まで読めないのは、自分に人の気持ちを察する力がないからではありません。
商談の最初から最後まで一度も温度を確かめずに進み、最後にまとめて答え合わせをしているからです。途中で一度も聞いていなければ、答え合わせは1回きりになり、外れたときにまとめて外れます。だから、外れたときの傷が深くなります。
商談中はうなずいていた相手が、見積を受け取った瞬間に静かになる。この落差自体は珍しいことではありません。珍しいのは、その落差の理由を確かめる機会を、商談の途中に一度も作っていないことのほうです。
テストクロージングは、その「まとめて答え合わせ」をやめるための質問です。決めてもらう質問ではなく、いまどこにいるかを確かめる質問です。確かめる中身は主に3つです。合意確認・懸念確認・次アクション確認。
相手が前向きかどうか、引っかかっている点はどこか、次に何をすればいいか。まずはこの3つを優先して確かめれば十分です。説明から入って一気に話してしまうときに足りていないのは話術ではなく、この3つを確かめる質問を挟む「回数」です。
1時間の商談なら、最低でも2回——提案の前と金額の前——は確かめる場面を作れます。その2回を挟んでおくと、最後にまとめて外れる度合いを小さくできます。
そのまま使える一言(場面別テンプレ表)
| 場面 | 一言 |
|---|---|
| 説明を始める前 | これから〇〇について説明させていただきますが、ご興味はございますか? |
| 条件が出そろったあと | ご興味を持っていただけましたか? |
| 見積を出した直後 | 見積書にはご納得いただけましたか? |
| 終盤 | ご契約いただけるとしたら、いつごろになりそうでしょうか? |
| 情報を出し切ったあと | ここまでの内容で、気になっている点はどこですか |
| 読み取りの確認 | 関心を持っていただけているように見えるのですが、合っていますか |
| 次の一歩 | ここから先、どう進めるのがよさそうでしょうか |
※表の「場面」は本記事による整理です。出典タグ()は質問文そのものの出所を示すもので、場面への割り当てを保証するものではありません。
「はい・いいえ」で終わる聞き方を避ける
相手が答えを開いて話せる形で聞きます。「いかがですか?」だけで止めると、気を遣った「いいですね」しか返ってきません。「どこが一番気になりますか」に変えるだけで、返事の中身が変わります。「はい」で終わる質問は、相手にとっても「はい」と答えるほうが楽なので、本音を聞く機会をこちらから潰しているのと同じです。
言い回しは自分の口に合う形に直す
テンプレをそのまま読むと不自然になります。敬語の硬さより、普段その相手に話しかけている口調に寄せるほうが通ります。変えていいのは語尾、変えてはいけないのは「開いて聞く」形です。「ご興味はございますか」を「この話、気になりますか」に崩しても、開いて聞く形が保たれていれば機能は変わりません。
上の表は、全部を1回の商談で使うものではありません。商談の場面ごとに1つずつ当てはめて、その場面で1回だけ聞きます。同じ商談で何度も聞くと、相手には確認ではなく催促に聞こえます。
「いいですね」を鵜呑みにしない — 返事を温度に翻訳する
| 返ってきた言葉 | 温度 | 次の一手 |
|---|---|---|
| 「いいですね」だけ | 不明。社交辞令の可能性 | 「どのあたりが良さそうでしたか」と具体を聞く |
| 「持ち帰って検討します」 | 誰と何を検討するかが空白 | 決裁と論点を確かめる |
| 「予算が…」 | 懸念が出た=前向きな材料 | 費用の論点を一緒に整理する |
| 「いつから始められますか」 | 高い | 日程を置く |

断られたのではなく、まだ決められないだけのことがある
金額を見て黙られると「高いと思われた」と受け取りやすくなります。実際には、比べる材料がない、決める順番が分からないだけの場合もあります。テストクロージングは、その差をその場で分けるための質問です。金額を出した瞬間の沈黙を、自分の値打ちの判定だと受け取ってしまいがちですが、沈黙の中身は測ってみないと分かりません。
沈黙を「高いと思われた」とこちらが勝手に確定させてしまうと、次にできることは値引きしかなくなります。先に温度を測っていれば、値引き以外の選択肢——分割にする、範囲を絞る、判断材料を渡す——が見えてきます。
懸念が出るのは失敗ではない
確かめる目的の2つ目が、懸念の確認です。何も出ないまま終わった商談のほうが、実は扱いにくいと言えます。その場で出た不安は扱えますが、持ち帰られた不安は扱えません。懸念を聞いた瞬間は気まずく感じても、それは商談が前に進んでいる証拠です。
温度が低かったときに引き返す(押し込まないための質問)
押し込むと逆効果になる

大型の商談では、強引なクロージングは失敗するだけでなく逆効果になるという調査結果があります。35,000件を超える商談の分析から出た結論で、買い手の進み方に合わせて少しずつ合意を積むことが前提になります。テストクロージングで温度が低いと分かったのに無視して押すと、この逆効果を自分で起こしにいくことになります。低い温度を確かめる意味は、そこで止まる材料を手に入れることです。
商談の結果は受注・前進・継続・不成立の4つに整理でき、前進とは買い手が約束する行動で購入に一歩近づくものを指します。今日決まらなくても、前進が1つ取れれば商談としては成立しています。
温度が低いときの引き返し方
- 押さない
- 「今日はここまでで大丈夫です」と一度止める
- 代わりに次の行動を1つだけ約束にする(日付を入れる)
- その場で日程か締切を口に出す
断られた形で終わらせず、前進の形で終わらせます。今日決まらなかった商談を「失敗」として持ち帰ると、次の連絡が出しにくくなります。前進を1つ約束にして終えた商談は、次に連絡する理由がすでに決まっているので、先延ばしにされにくくなります。
たとえば「今日はここまでで大丈夫です。来週の水曜までに、資料をご覧いただいてご返答をいただけますか」と伝えて終える。この1行があるだけで、次の連絡は催促ではなく約束の履行になります。
NG例
温度が低いのに「今日決めていただければ」と条件を足す。値引きで押し返すと、次の商談でも値引き前提になります。
一人で仕事をしている人が引っかかるところ
目の前の相手が決裁者本人のとき
本記事が参照したS1・S2・S5は、決裁者・稟議・部門調整がある法人営業を想定した例が中心です。一人で仕事をしている場合、目の前の相手がそのまま決裁者であることも少なくないと考えられます。稟議も社内説明もない相手には、「決裁者はどなたですか」という聞き方がそのまま失礼になることがあります。
持ち帰る先は家族や資金繰り、来期の見通しであることも考えられます。「これを決めるとき、他に相談される方はいらっしゃいますか」に置き換えます。
費用の論点を先に一緒に並べる
価格の懸念が見えたときの質問は、「社内で費用を説明するときに、どの点が一番論点になりそうですか」。相手が社長一人なら、「この費用を出すとしたら、一番引っかかるのはどこですか」に言い換えます。値段そのものではなく、判断の材料の話に移せます。
共有する相手がいる場合は先に整理する
「決裁される方に共有する際、先に整理しておくべき論点はありますか」。相手が社内で説明する場面を想像して、そこで詰まる材料をこちらが先に作っておきます。
気が引けて聞けないときの言い換え
意思を確かめる質問は、詰める質問ではなく、相手の手間を減らす質問だと考えます。「進める前提で話していいか」を確かめておくと、要らない資料を作らずに済みます、という形で自分に許可を出しておくと聞きやすくなります。
意思を確かめることを「頼み事」のように感じてしまうと、切り出すこと自体が難しくなります。実際には逆で、確かめずに資料だけ作り込んで持っていくほうが、あとで「その資料は要らなかった」と相手の時間を使わせることになります。
次の商談で1回だけやること
入れる場所は1か所に絞る
全部やろうとすると、質問が多い商談になります。まずは金額を出す直前の一言だけ。「条件が整えば、前向きにお考えいただけますか」を1回入れます。
商談後に3行だけ残す
- どの一言を入れたか
- 返ってきた言葉をそのまま
- 次の行動と日付
この3行が溜まると、自分の商材で効く聞き方が分かってきます。
チェックリスト
- 説明を始める前に興味を確かめたか
- 金額の前に一言入れたか
- 返事を「はい/いいえ」で終わらせなかったか
- 出てきた懸念をその場で1つ扱ったか
- 帰る前に次の行動と日付を口に出したか
このチェックリストは、次の商談の前にもう一度見返す前提で作っています。1回で全部できなくても構いません。金額の前の一言だけを3回続けて入れられたら、次は説明の前の一言を足す。1つずつ増やすほうが、結局は早く身につきます。
よくある質問
テストクロージングとクロージングは何が違いますか?
クロージングは最終段階で契約を締結してもらうステップ。テストクロージングは商談の途中で購入意思を見極める質問。決めてもらうためではなく、いまどこにいるかを確かめるために、途中で何度も入れます。
テストクロージングはいつ入れるのがいいですか?
基本は2か所。提案を始める前と、金額を提示する前です。加えて、相手の条件が出そろって話が具体化したときも入れどころです。挨拶直後の意思確認は早すぎて売り込みになります。
テストクロージングの質問例をそのまま教えてください。
「これから〇〇について説明させていただきますが、ご興味はございますか?」「条件が整えば、購入を前向きにお考えいただけますか?」、「見積書にはご納得いただけましたか?」「ご契約いただけるとしたら、いつごろになりそうでしょうか?」、「ここまでの内容で、気になっている点はどこですか」。
しつこいと思われませんか?
押し込むクロージングは、大型の商談では失敗するだけでなく逆効果になるという指摘があります。テストクロージングは押す質問ではなく確かめる質問で、温度が低いと分かったら止めるために使います。買い手の進み方に合わせて合意を積むのが前提です。
「持ち帰って検討します」と言われたら、何を聞けばいいですか?
検討する中身を先に整理します。「共有される際、先に整理しておくべき論点はありますか」、費用が論点なら「一番引っかかるのはどこですか」の形で聞きます。そのうえで、次の行動と日付を1つだけ約束にして終えます。
参照した情報源
- 【例文付き】テストクロージングとは?やり方と最適なタイミングを分かりやすく紹介(Sansan株式会社(営業DX Handbook))・確認日 2026-09-05
- クロージングとは?営業の流れからコツ・テクニックまで例文付きで解説(Salesforce Japan)・確認日 2026-09-05
- Trial Closes: What They Are, Benefits and How To Use Them(Indeed)・確認日 2026-09-05
- The SPIN selling method — I took a deep dive so you don't have to(HubSpot)・確認日 2026-09-05
- 営業のテストクロージングとは?質問例と使うタイミング(FAZOM(営業改善プログラム))・確認日 2026-09-05
本記事は、当編集部の制作基準——出典との照合・表現・重複の多段検証——を通過したものだけを公開しています(下書きにはAIを活用)。 仕組みの詳細は編集プロセスの開示をご覧ください。